カテゴリー「(S01)せいじゅうろう」の117件の記事

[No.959-2]奇妙な踊り

No.959-2

「何だよ、笑ってるじゃん!」
「せやかて~」

正月らしい、何とも平和な時間が流れる。
それもこれも、こいつの存在が大きい。

「これ、どこに置いとく?」
「そうだな・・・」

せっかくなので、目につく所に置いておきたい。
縁起を担ぐ意味でも。

「車の中なんてどう?」
「“先住民”もいることだし・・・」

先住民は、ドアポケットにちょこんと居座っている。

「せやな・・・交通安全もあるしな」

関係ないけど、そういうことにしておこう。
雰囲気はそう遠くもない。

「行き先が決まって・・・めでたい!」

さっきよりも上機嫌だ。
それをつかむと、それが泳いでいるフリをし始めた。

「めでたい!めでたい!」

そう言いながら、体をユラユラと揺らして踊り始めた。

「・・・なに冷めてるねん!一緒に踊るで!」
「えぇー!そうなの!?」

奇妙な踊りから1年がスタートした。
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(No.959完)
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[No.959-1]奇妙な踊り

No.959-1    [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」
「・・・」

無言で見つめ合う。
とは言え、“ラブラブ”だからではない。

「いやぁ~めでたい!」
「ほんとだね」

何がめでたいのか、細かいことは気にしない。
菜緒(なお)と居るとこれが日常だ。

「あの時、何考えてたん?」
「それは菜緒と一緒だよ」

さっき、リラックマの店に寄った。
その時、あるぬいぐるみを見つけた。

「“これ欲しい!”ってこと?」
「そうだよ、だから買った」

彼女に無言でねだられたわけではない。
もちろん、見つめられたからでもない。

「俺も“欲しかった”からね」
「だって・・・プッ!」

かわいいのもあるが、どちらかと言えば笑える。
それに正月らしい“ネタ”だ。

「笑ろうたら失礼やん!」
「・・・プッ!」

彼女も堪えきれずに笑った。

(No.959-2へ続く)

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[No.952-2]光になりたい

No.952-2

「・・・足りない?」
「そや、足りない」

何が足りないと言うのだろうか?
もしかして・・・。

「中身ってこと?」
「ん!?そやなぁ・・・!」

自分自身でも気付いていなかったみたいだ。
その足りない何かを。

「まぁ、確かに・・・」
「何かを入れることはできるけどな」

ランタンとは言え、小物入れとしても使える。
光に照らされて幻想的な雰囲気も作り出せそうだ。

「何かないかな?」
「あるやろ、ピッタリなやつが!」

さっきとは打って変わって積極的になっている。
・・・ということはアレ、いや・・・あいつしかいない。

「せいじゅうろう?」
「決まってるやろ!」

そう言うと、ガサゴトと引き出しを物色し始めた。

「・・・ほら!ちょうどええやつがおったやん!」
「なるほど!」

ビンの中で、せいじゅうろうが光る。
今、ようやく長年の夢が叶った気分だった。
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(No.952完)
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[No.952-1]光になりたい

No.952-1     [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
知り合いから、ちょっと変わった品をいただいた。

「へぇ~なるほど!」

簡単に言えば、光エネルギーを利用したエコなランタンだ。

「これ、どう?」

翌日、さっそく、菜緒(なお)に見せた。
どんな反応をするか楽しみだった。
人一倍、この手の物に反応を示すからだ。

「・・・」
「えっ・・・何もなしかよ?」

想定外の反応だった。
全くと言っていいほどの無反応ぶりだ。

「・・・何か足りないね」
「標準語ぉ!?」

神妙な表情よりも言葉遣いが気になった。
もしかして、初めて聞く標準語かもしれない。

「なに驚いてんねん!」
「そりゃ、驚くよ・・・」

ただ、少し話が逸れてきた。
早めに本題に戻さないと・・・。

「だから、どう、これ?」
「だ・か・ら、何か足りないねん・・・」

ある意味、よくやく落ち着いて話せそうだ。

(No.952-2へ続く)

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[No.926-2]黄色のラケット

No.926-2

「でも、急にどうした?」
「・・・卓球、始めるの?」

昔と違って、雰囲気も変わった。
俺たちの時代は、少なからず卓球に偏見があった。
やや根暗なスポーツだと・・・。

「まさか!」
「うち、スポーツはまるでアカン」

ある意味、意外だった。
見た目は少なくとも文学少女ではないからだ。

「そうは見えないけどな・・・」
「それならどうして?」

今日、急に呼び出された。
それなりの理由がなにかあるはずだ。

(・・・まてよ)

こんな時は、かならず“あいつ”が出てくる。

「実はなぁ・・・」
「せいじゅうろうが・・・」

そう言うと、あいつを目の前に出してきた。

「随分と汚れたな~!」

そこそこ痛みも進んでいる。

「卓球、始めるんやて」
「せいじゅうろうが?」

もはや、“誰が”と本気でボケたりはしない。

「はぁ・・・いつものせいじゅうろうだよね?」

目の前にはいつものあいつか居る。

「よう見てん!黄色いラケット持ってるやん!」
「どこにだよ!?それは、まくら・・・」

片方がほつれて、ラケットを持っているようだった。
S926
(No.926完)
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[No.926-1]黄色のラケット

No.926-1      [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「俺か?まぁ・・・短かったけど」

菜緒(なお)から、質問を受けた。

「よく覚えてたな?俺が卓球部だった話」

かなり前に、ほんの少しだけ触れたことがあった。
短期間だけ、卓球部に所属していた話を。

「二週間やった?」
「ほんと、よく覚えてるな・・・」

これだけ覚えられていると、恥ずかしさも増してくる。
長続きしない奴とか根性無しな奴と思われるからだ。

「別にええやん」
「せやかて、なんで辞めたん?」

“ええやん”と言いながらも、しっかりと理由を聞いてくる。
正直、あまり答えたくはないが・・・。

「よくある、練習がキツイというパターンだよ」

それに、一度も玉を打たせてもらえなかった。
初心者は体力作りから・・・という理由で。

「そりゃ、そうなんだろうけど」
「・・・納得がいかなくて」

そうそうに退部というか・・・練習に行くのをやめた。

(No.926-2へ続く)

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[No.668-2]・・・発明記念館

No.668-2

「なに描こうか?」
「せいじゅうろうに決まってるやん!」

あえて聞く必要もなかったみたいだ。

「・・・ほいっ!」
「なんだよ?“ほいっ!”て・・・」

菜緒(なお)が、容器を俺に差し出した。

「もしかして、“描いて”ってこと!?」
「うちな、ヘタクソなんやもん・・・」

ここに入る前とは別人のような、おしとやかさだ。
ただ、絵心がないとは意外な事実を知った。

「へぇ~知らなかった」

普段、描く機会がないこともその理由のひとつだろう。

「まぁ、いいけど・・・」

嫌々な雰囲気を出しながらも、内心は違う。
そこそこ自信があるからだ。

「・・・これでどうかな?」
「めっちゃうまいやん!」

一般的な基準ではなく、あくまでも菜緒の評価ではあるが。

「曲面だし、下書きなしだから難しいよな」
「せやかて、ええ記念になったやん!」

そう・・・確かに記念になった。
ある間違いがあったことも含めて。
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(No.668完)
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[No.668-1]・・・発明記念館

No.668-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
念願・・・ではないおにせよ、ようやく実現した。

「こっちやで!」

それもあってか、いつも以上に菜緒(なお)が元気だ。

(・・・こっちじゃないのかな?)

女性にしては珍しく、初めての場所でも臆することがない。
それに引き換え、俺は・・・。

「ちょっと待って!今、電波が悪いみたい」

スマホを片手にしても四苦八苦している。

「ほら、あれやん!」
「・・・ほんとだ・・・」

駅からさほど離れていないこともあり、あっさり見つけられた。
見つけたのは彼女だが・・・。

「もう人がいっぱいやん!」
「・・・意外にいぃ・・・ちょ、ちょっとぉぉ!」

言い終わる前に、猛烈な勢いで俺の腕を引っ張り始めた。

「わ、わかったから!」

言うなれば、ここではちょっとした工場体験ができる。
オリジナルのカップヌードルを作ることができるからだ。

「二階やて!」

案内板を見るや否や一目散で階段を駆け上がって行った。

(No.668-2へ続く)

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[No.637-2]食欲の秋

No.637-2

結局、あの後、せいじゅうろうは菜緒(なお)の家に置いてきた。

「・・・なにかあるよな」

いつものイタズラめいたことを考えているに違いない。

「それはそれで楽しみだけど」

来週の日曜日に、また菜緒の家に行くことになっている。

(せいじゅうろうはどこだろう・・・)

菜緒の家に着くなり、まずせいじゅうろうを探した。

(・・・見える範囲にはいないようだな)

いつもなら、何も言わなくても自ら登場してくる。
もちろん、そうさせているのは菜緒だが。

「・・・ところで、せいじゅうろうは?」
「あれ?今までそこにいてはったんやけどなぁ~」

言葉とは裏腹に少しニヤケた表情をしている。
恐らく、また何か企んでいるのだろう。

「ちょっと待ってな、探してくる!」

普通に考えれば、そんなことは在り得ない。
でも菜緒とならばそれが成立する。

「なんやぁ!そんなとこにおったんやぁ~」

その言葉と共にせいじゅうろうを連れて来た。

「食べ過ぎて、大きなってしもうてん!」
S637_2
(No.637完)
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[No.637-1]食欲の秋

No.637-1   [No.07-1]せいじゅうろう

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------

日ごとに赤や黄に色づいて行くのが分かる。
季節はもう秋の装いだ。

「・・・よく食べるね?」
「そうなん?」

問い掛けたつもりが、逆に問い掛けられた。

「そうなん?・・・って、ケーキ5個は多くない?」

何個が相場なのかは知らない。
ただ、バイキングで出てくるような小さなものじゃない。
店頭で売られている一般的なサイズだ。

「これでも少ないくらいやで」

さすが女子と言うべきか・・・。
いわゆる“別腹”というものかもしれない。

「そや!せいじゅうろう貸して」
「ん?これか?」

カードケースに付けてあるせいじゅうろうを外して渡した。

「せいじゅうろうと一緒に食べるねん!」

そう言うと、せいじゅうろうをケーキに近付けた。
もちろん“食べるふり”だけだ。

「むしゃむしゃむしゃ・・・」
「・・・美味しい?」
「おいしいよぉ」

あくまでもせいじゅうろうが返事をしている。
俺の問い掛けも含めて、そのあたりは心得ている。

(No.637-2へ続く)

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