カテゴリー「(052)小説No.1301~1325」の25件の記事

[No.1312-2]認識

No.1312-2

「何となくわかってきた」
「それなら私も中一だと思う」

中学生になると大きく環境が変わった。
クラスのメンバーも変わり、思春期を迎えた。

「ただ記憶に残ってるだけじゃなく」
「これが歌なんだと、ハッキリ認識したの」

でも、それは当時思っていたわけではない。
振り返ると、そう思うのだ。

「なんか複雑w」
「だから分かってもらえない感覚なのw」

その歌を聞くと思い出が蘇ってくるのではない。
説明し難いその“感覚”が蘇ってくる。

「歌そのものが思い出」
「それ以外、何もない」

夜中にこっそり、音楽に耳を傾ける。
染み入るように心に響く。

「繰り返しになるけど」
「これが歌なんだと明確に認識した」

でも、この感覚はどうにも伝えにくい。
置き換える言葉もないし、完全に自己中心だからだ。

「私は少しは理解したわよ」
「ほんと?」

何だか嬉しい。

「じゃ、行かない?その認識した歌を歌いにね!」
J1312
(No.1312完)
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[No.1312-1]認識

No.1312-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
他人には分ってもらえない感覚だ。
でも、それを友人に話してみた。

「覚えている歌謡曲で」
「一番、古い歌は?」

ここまでは割と普通の質問だ。
問題はここからだ。

「そうね・・・」
「・・・かしら?」

聞けば小一の時に聞いた歌らしい。

「じゃあ、明確に認識した時はいつ?」
「えっ?質問の意味が分からない」

私も小一に聞いた歌の記憶が一番古い。
でも、それはあくまでも聞いた記憶だ。

「聞いた記憶?」
「ただ覚えているだけってこと」

歌詞の意味は解っていない。
だから感情移入もできない。

「でも中学生になった時」
「初めてラジオを買ってもらって」

そこである歌謡曲を聞いた。

「耳を傾け・・・」
「感情移入もできたわ」

初めて歌として認識した瞬間だった。

(No.1312-2へ続く)

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[No.1311-2]授業参観

No.1311-2

「心配してるのよ」
「陰口を叩かれてないかってw」

心配していると言う割には笑っている。
一体、本心はどっち何だろうか・・・。

「良い人だけが上司じゃないさ」
「名言っぽく言うわねw」

正直に言えば・・・。
好かれることに越したことはない。

「そりゃそうよ!」
「今からでも遅くないわよ?」

それにしてもやけに心配してくれる。
僕のことを。

「そんなに変かな?」
「僕の仕事ぶり?」

もしかして世間からズレているのかもしれない。
あえて比べたことがないからだ。

「それなら・・・」
「提案があるわよ」

ここに来て提案をしてきた。
どんな提案があるというのだろうか・・・。

「見に行っていい?」
「仕事をか?!」

小さく頷く彼女が居る。
授業参加じゃあるまいしw
J1311
(No.1311完)
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[No.1311-1]授業参観

No.1311-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「会社でもそうなの?」
「まぁ、そんなに変わらないな」

立場上、部下に厳しく対応することがある。
もちろん、パワハラではない。

「少し細かくない?」
「そういう仕事なんだよ」

全国を仕切らなければならない。
それだけに曖昧な指示は混乱を招く。

「だから細かくなるんだよ」
「ちょっとしたミスでも迷惑を掛けるからね」

実際、何度もそんなことがあった。
今のスタイルはその反省でもある。

「ふ~ん・・・」
「何だよ、それ?」

好きでやっているわけではない。
結果的にそれが部下を守ることになる。

「それ、部下じゃなくて」
「“自分”じゃないの?」

痛い所を突いてきた。
半分間違いで半分正解だ。

「結果的にはそうなるよな」
「別に恥じることじゃないけどね」

だったらあえて言わなくていいのに。

(No.1311-2へ続く)

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[No.1310-2]きゃっきゃきゃっきゃ

No.1310-2

「ったく!」
「わ、分かったから・・・」

本当はもっと続けてもらっても構わない。
でも、そろそろ答えを言った方がいいだろう。

「で、その考え事って?」
「僕たちの関係だよ」

彼女が何とも言えない表情を返してきた。
警戒しているようにも見える。

「なにそれw」
「まぁ、聞けよ」

友達や恋人とか、そんな関係を言ってるのではない。
ただ、説明するのが難しい。

「こうやってふざけ合ったり」
「じゃれあったり・・・」

擬音で表すとこうだ。
“きゃっきゃきゃっきゃ”だ。

「・・・」
「何か言えよ?」

呆れたような顔をしている。
でも、すぐに笑顔に変わった。

「そんなにそれが良いなら」
「生涯、そうしない?」
J1310
(No.1310完)
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[No.1310-1]きゃっきゃきゃっきゃ

No.1310-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
僕たち二人の関係にはあの言葉が似合う。
いや・・・その言葉しか見当たらない。

「・・・何よ、神妙な顔をして?」
「な、何でもないよ」

少しの変化も見逃さない。
だから、女性は怖い。

「うそ!考え事してたでしょ?」
「まぁ、そうかもな」

ここは本当のことを言っておこう。
隠すことでもないので。

「え~気になるぅ!」
「何だっていいだろ!?」

思いかけず食いつかれてしまった。
でも、これ自体、考えていたことかもしれない。

「言いなさいよ~!」
「ほらほら!」

そう言いながら僕の体をつついてくる。

「やめろよ~」
「ほらほら白状しなさい!」

今度は頬に手を当ててゴリゴリしてきた。
僕の顔はひょっとこのようになった。

(No.1310-2へ続く)

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[No.1309-2]見えない幸せ

No.1309-2

「で、何が触れたの?」
「生き物が居たわけじゃないでしょw」

生き物が居たら大変だ。
お風呂どころではないだろう。

「髪の毛だよ」
「もしかして私の?」

髪の長さからすれば彼女のものだ。
でも、そんな単純な答えではない。

「まぁ、抜けちゃうよね」
「ごめん、不潔だった?」

不潔なはずがない。
だったら僕のにやけ顔の説明が付かない。

「違うよ」
「むしろ、幸せを感じたよ」

その髪の毛は黒髪ではなかった。
だからと言って、染めた色でもなかった。

「悪口じゃないからな」
「最初に言っとくけど」

それは白髪だった。

「だから、手にまとわりついても見えなかったんだよ」
J1309
(No.1309完)
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[No.1309-1]見えない幸せ

No.1309-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なにニヤニヤしてるのよ?」
「そ、そうか?」

自分としては喜びの表情のつもりだった。
でも、そうとは映っていなかったらしい。

「いいお湯だったからさ」
「いつもと同じお風呂じゃない?」

そう言われると身もふたもない。
間違ってはいないからだ。

「そうだけど・・・ほら・・・」
「“ほら”なによ?」

妙に絡んでくる。
機嫌を損ねたわけではないだろうに。

「湯船に浸かってたら・・・」
「手に何かが触れたんだよ」

でも、それが何だか分からなかった。
最初は。

「最初は?」
「で、分かったわけ?」

そう、分かった。
分かった瞬間、幸せを感じた。

(No.1309-2へ続く)

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[No.1308-2]当り前じゃない

No.1308-2

「何もせずって?」
「会釈とかよ」

繰り返しになるけど当たり前の行為をしている。
その車は。

「だから素通りしてもいいよね」
「もちろん!」

だからと言って素通りしてもいいのだろうか。
ある日、そう思えた。

「素通りした時・・・」
「なんかすごく後悔した」

大袈裟だけど。
だから、次からは会釈をしようと決めた。

「ただ、止まってくれるのは稀だから」
「そんな機会は少ないけどねw」

でも、会釈程度だけど気持ちがいい。
自己満足だと分かっているけど。

「絶対そんなことないよ」
「それなら、嬉しいな!」

それにしても随分と自信ありげだ。
同僚にしては。

「その自信はどこから来るのよw」
「経験者だからね」
J1308
(No.1308完)
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[No.1308-1]当り前じゃない

No.1308-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それは当り前の行為だ。
だからと言ってスルーするのは違うと思う。

「何の話?」
「交通ルールの話w」

信号機がない横断歩道の話だ。
横断しようとする人が居れば車は・・・。

「・・・手前で一時停止だっけ?」
「正解!」

とは言え、止まってくれる車はほとんどいない。
本当に“稀に”止まってくれる。

「数か月に1ヶ月くらいかな」
「止まってくれるの」

通勤経路にそんな横断歩道がある。
平日、毎日そこを通っているからこその話だ。

「ところで、当り前って?」
「そうだったわね」

止まってくれる車はルールを守っている。
ごく当たり前の行為だ。

「別に偉くはないよね?」
「・・・でもね」

何もせず、その場を通り過ぎる気にならない。

(No.1308-2へ続く)

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