カテゴリー「(050)小説No.1251~1275」の50件の記事

[No.1275-2]レンズ越しの青空

No.1275-2

「今年も来たわよ!」
「それ、さっきも言ったw」

彼女も「それ2回目」と笑ってるだろう。
そんな雰囲気の風が通り過ぎた。

「私達、今年でとうとう大台に乗ったわよ」
「あなたはいつまでも・・・歳のままね」

あれからもう・・・年が過ぎようとしている。
良くも悪くも彼女の時間だけが止まったままだ。

「まずは掃除ね!」
「そうだね!」

雑草を抜き、抜いた跡の土をならす。
砂利も見た目よく整える。

「次はお花と・・・」
「お供え物はここでいい?」

ビールを開ける。
“ブシュ!”という音が快く響いた。

「じゃぁ、恒例の記念撮影と行きましょうか!」
「了解!」

まず、友人が墓石の横に立つ。

「これでどう?」
「ん?・・・どうしたの」

墓石の後ろに雲一つない青空がレンズ越しに見える。

「あっ・・・何でもないよ、ほら笑って!」
J1275
(No.1275完)
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[No.1275-1]レンズ越しの青空

No.1275-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
毎年恒例の行事がいくつかある。
そのひとつが今日のこれだ。

「今年も来たわよ!」
「それ誰に言ってるのw」

その答えを知ってるけど一応聞いてみる。
このやり取りも毎度のことだ。

「今年は晴れで良かったね」

去年は薄曇りで快晴とまではいかなかった。
けど、今年は抜けるような青空だ。

「でも、この暑さは勘弁して欲しいわねw」
「確かにw」

山を切り開いた霊園でも今年は暑さが厳しい。
ただ、時より吹く風が救いだ。

「えっ・・・と・・・ひとつ、ふたつ・・・」

友人が墓石の間を縫う小道を数え始めた。

「毎年、同じことしてるね、私達」
「覚えられない私達ってw」

同じ墓石が並んでいる。
だから、覚えられない。

「彼女、怒ってるかもよ?」
「だねw」

いい加減、私のお墓の場所を覚えろよ、と。
ただ、このグダグタ感が墓参りを続けられる秘訣だ。

(No.1275-2へ続く)

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[No.1274-2]学生の集団

No.1274-2

「・・・」
「・・・」

古い言い方だがキャピキャピ感が半端ない。
まさしく若さが真横を通り過ぎて行く。

「圧倒されるね」
「・・・それと意外だったわね」

大人数の割にはキチンと整列して渡っている。
周りに迷惑を掛けないように。

「私たちの時とは違うじゃんw」
「そうみたいだねw」

マナーがどうこう言った自分が恥ずかしい。

「それにしても大人数だね」
「全員いるんじゃない!?」

先頭は3年生だろうか・・・。
何の根拠もないが。

「それはあり得るわよ」
「体育系なら先輩よりも前は行かないでしょw」

これに関しては今も昔も同じかもしれない。

「信号が変わりそうよ」
「まだ、人が残ってるよ!?」

そうなると残りは1年生ということになる。

「でも、楽しそうじゃん!それはそれで」
J1274
(No.1274完)
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[No.1274-1]学生の集団

No.1274-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「懐かしいね!」
「そうだね!」

横断歩道の向う側に学生の集団がいる。
多分、部活の何かだろう。

「お揃いのジャージだね」
「今も変わらないね」

テニス部かバトミトン部だろう。
それらしきカバーが掛かった道具を背負っている。

「楽しそうだね!」
「そうなるでしょ!」

雑踏を上回る声が聞こえる。
女子ならではかもしれない。

「私たちもそうだったじゃん」
「多分、周りは迷惑してたんだろうな・・・」

彼女たちにマナーを求めるのは酷だ。
誤解を恐れずに言えば。

「私もそう思うよ」
「そうやって大人になると思う」

青春とはそういうものだ。

「信号が変わったわよ」
「ほんとだ」

その瞬間、彼女たちが一斉に横断歩道を渡ってきた

(No.1274-2へ続く)

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[No.1273-2]ニセモノが好き

No.1273-2

「ニセモノ?」
「そう!簡単に言えばね」

表現は良くないとは思う。
100円でもバニラはバニラだ。

「私、本格的なものが苦手なの」
「だから、バニラ感が濃いいと・・・」

食べられなくなる。
それは他の食べ物でも同じだ。

「・・・普通、逆じゃない?」
「かもしれないw」

とにかく、本物が苦手だ。
本格中華より町中華が好きだ。

「怒られるわよ」
「町中華も本格的よ」

それは分かっている。
早い話、庶民の味が好きなんだ。

「ふ~ん・・・面倒ねw」
「自覚してるw」

ニセモノには知恵と努力が詰まっている。

「そこまで言えれば本物よ」
J1273
(No.1273完)
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[No.1273-1]ニセモノが好き

No.1273-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「私、それ苦手」
「うそ!?前、食べてたじゃん・・・」

確かに食べていた。
ただ、正確に言えば似て非なるものだ。

「似て非なる?」
「いやいや、一緒じゃん!」

これだから素人は困る。
全くの別物だ。

「けんか売ってる?」
「売ってないわよ」

友人がバニラアイスを食べている。
かなり高級なバニラアイスを。

「何が違うのよ?」
「それにこっちの方が美味しいじゃん!」

前、食べたのは安いバニラアイスだ。
100円程度でどこにでも売っている。

「だからなの!」
「・・・だから?」

簡単に言えば答えはこうだ。
私はニセモノが好きだ。

(No.1273-2へ続く)

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[No.1272-2]ビニーパン

No.1272-2

「名前が違うとか?」
「その可能性は否定できない」

でも、記憶の中にはビニーかビニしか存在しない。
ただ、何かと間違っている可能性は大いにある。

「文字じゃなくて」
「言葉を覚えてるんだよな」

記憶は文字というか映像ではない。
あくまでも・・・ビニーあるいはビニと言う音として。

「それならググると出て来そうなものよね?」
「そうなんだよな・・・」

ネットが全てにおいて万能とは思ってはいない。
けど、何かしらの情報は出てくるはずだ、今の時代。

「今は売ってないの?」
「そうみたい、知る限り」

調べても出てこない。
売ってもいない。

「そうなると・・・」
「ますます食べたくなるw」

SNSを駆使して情報を集めると言う手もある。
けど、そこまではしたくない何かがある。

「・・・分からなくもないけどね」
「思い出は美しいままでw」

けど、本心は気になって仕方がない。

「・・・作れるわよ」
「もちろん、正確に再現は出来ないけど」

そう言うと腕まくりを始めた。
J1272
(No.1272完)
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[No.1272-1]ビニーパン

No.1272-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
記憶は定かではない。
でも、その名前の響きは間違っていないと思う。

「菓子パン?」
「うん、小さい頃・・・」

と言うより、高校を卒業するまでと言った方がいい。
要は地元を離れるまでは・・・ということだ。

「うずまき型のパンで」
「小豆が散りばめられてたんだ」

しっかり焼き色も付いていた。
それに照りも良かった。

「何だか美味しそうね」
「だろ?」

別に菓子パンを馬鹿にしているわけじゃない。
けど、菓子パンと呼ぶには失礼な味だった。

「なんて名前?」
「そう!そこが問題なんだよ・・・」

最近、唐突に思い出して記憶を頼りに検索してみた。
“ビニーパン”と。

「ビニーパン?」
「多分・・・」

記憶ではビニーかビニのどちらかだと思う。
ただ、自信はない。

「で、検索結果は?」
「それが・・・」

ググってもそれらしいものがヒットしない。
ビニーもビニも。

(No.1272-2へ続く)

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[No.1271-2]地元の本屋

No.1271-2

「2階建ての建物で」
「1階は店舗、2階は住居みたいだったけど」

窓から見える店内も2階ももぬけの殻だ。
当然、人の気配はない。

「生活感も消えて」
「看板も外され」

地元の人以外、そこに本屋があったとは思わないだろう。
もともと、小さな本屋だったこともあって。

「そっか・・・」
「分かる気がする、その寂しさ」

繰り返しになるが特に思い入れはない。
けど、思い入れがないほど町に溶け込んでいた。

「そのうち、取り壊されるんだろうな・・・」
「そうなるといよいよ寂しくなるわね」

もはやそこに何があったのかさえ気にしなくなる。
時の流れは残酷だ。

「でも新しい店がオープンするかも?」
「・・・ないことはないなw」

決して立地は良くない。
けど、ちょっと立ち寄るには丁度良い。

「出来れば花屋がいいな」
「・・・なるほどね!」
J1271
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[No.1271-1]地元の本屋

No.1271-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
地元の小さな本屋が店を畳んだ。
ほんの数か月前までは営業していたのに。

「思い入れのある本屋だったの?」
「そこまでではなかったけど」

ただ、物心がついた時にはそこにあった。
駅前の交差点の角に。

「ある意味、そこにあって当然だったからさ」
「寂しいと言うか、違和感と言うか」

何とも言えない気持ちになった。
本来あるべきものがそこにない。

「お世辞にも儲かってはなかったと思うけどw」
「失礼よ」

でも、事実だ。
正確には商売っ気がないと言った方がいいだろう。

「多分、商売をやめたと言うより・・・」

店主が亡くなったんだと思う。
年齢的に考えても。

「そうなんだね」
「だから・・・」

何とも言えない寂しさがある。
小さくても町の灯りが消えた気分だ。

(No.1271-2へ続く)

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