カテゴリー「(049)小説No.1226~1250」の50件の記事

[No.1250-2]あの時の空

No.1250-2

「よほど特徴的な空だったのね」
「いいや、普通の空だったと思う」

むしろ特徴は何もない。
けど、わずかな違いを見分けたんだと思う。

「何十回、何百回と空を見てるけど」
「昨日は本当にあの時と同じ空だった」

自分でもよく分からない話をしていると思う。
上手く伝えることができない。

「確かによく分からない話だけど」
「もどかしい気持ちは理解できるよ」

体験した本人しか分からない感覚だ。
蓋を開ければ全然大したことがない話だとは思うが。

「で、当時の心境を思い出した?」
「まぁな」

今はどうだろうか・・・。
色々な感情や想いを捨ててきたように思える。

「大袈裟ねw」
「笑うなよw」

良くも悪くも、成長した証だ。
捨てた分、何かを拾ったのも事実だ。

「拾ったものに」
「私も含まれてる?」

彼女から予想外のセリフが飛び出してきた。

「その表現、何だよw」
「へへぇ~w」

今日の夕焼けも新たな思い出になりそうだ。
T1250
(No.1250完)
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[No.1250-1]あの時の空

No.1250-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「昨日、あの時の空を見たんだ」
「あの時?」

会社帰りに、桃色に近い夕焼け空を見た。
雲はまばらで、どことなく寂しげな空だった。

「俺ってさぁ」
「10年前にここに転勤してきただろ?」

初めての転勤だった。
しかも、かなり遠い場所へ。

「知ってる」
「その時に見た空と?」

会社の寮に向かう途中にその空を見た。
昨日と同じように何とも寂しげな空だった。

「それって・・・」
「心境がそう見せてるんじゃないの?」

確かにそれは否定できない。
初めての転勤で不安しかなかったからだ。

「でも、昨日は」
「そんな心境ではなかったんだよな」

だからこそ、似ている空が思い出させてくれた。
そう思っている。

「不安と期待が」
「そのまま空の色に表れたのかな、当時は」

寮に向かう足取りは重い。
まぁ、新生活は誰もがこんな感じだとは思うが。

「そんな時もあったんだなって」

妙な懐かしさを覚えた。

(No.1250-2へ続く)

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[No.1249-2]心強く

No.1249-2

「それって・・・」
「そうだよ」

もちろん、持ち直す場合もあるだろう。
ただ、母の場合は違った。

「静寂は」
「そのまま死を意味してる」

病室は静寂以上に静寂だった。
時間さえも止まっていた。

「でもさ」
「色々な感情が交差して」

不適切かもしれないが肩の荷が降りた気がした。
でも、それは自分のことではない。

「お母さんだよね?」
「そうだよ」

もう苦しまずに済む。
限界まで頑張ったからだ。

「反面、まだ生きてて欲しいという感情も」
「分かるよ」

一体何が正しいのだろうか?
そもそも正解なんてあるのだろうか?

「今でもそう考えることがあるよ」
J1249
(No.1249完)
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[No.1249-1]心強く

No.1249-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
以前なら何も感じなかった。
それが作り話だと分かっているからだ。

「でも」
「現実に経験しちゃうとな・・・」

それの名前は知らない。
病院で使う心拍数とかを表示する機械だ。

「危篤になるとさ」
「けたたましい音で鳴るんだよな」

ドラマでは良く見掛けるシーンだ。
僕はそれを病室で聞いた。

「経験すると」
「ドラマをまともに見れないよ」

あの瞬間がよみがえってくるからだ。
何度も何度も。

「辛いね」
「ドラマだと分かっていてもな」

でも、辛いのはけたたましく音が鳴っている時じゃない。
その後なんだ。

「その後?」
「そう・・・」

対照的な静寂が訪れた時だ。

(No.1249-2へ続く)

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[No.1248-2]なぞ解明

No.1248-2

「そう言われたらバカにできない」

もし、その女性のエサやりが止まれば死活問題だ。
彼らがやわじゃないとしても。

「だから毎日、そこに座ってる」
「彼女を待つために・・・か」

何も考えずそこに居たわけじゃない。
それを知ってから彼らの見方も変わった。

「ずっと続くといいね」
「そうだね」

地域猫と言っても完全にはそうなり切れていない。
世話好きな人が何人か関わっている感じがする。

「あなたもそのひとり?」
「私は・・・何もできないわ」

見守るしかない。
卑怯だけど。

「何もしないのも勇気よ」
「そうなのかな・・・」

いずれにしても、今日も居るだろう。
もしかしたら、唯一の食事を求めて。

「なんか、なぞが解けたら」
「ちょっと話が重くなっちゃった」

今日の帰り道は心して帰るとしよう。
大袈裟だけど。

「私もつき合うわよ」
「意味はないけど二人の方が心強いでしょ?」
J1248
(No.1248完)
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[No.1248-1]なぞ解明

No.1248-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それは猫特有の行動だと思っていた。
お互いの縄張りを尊重しあっているのだと。

「違うの?」
「そうみたい」

通学路にいわゆる地域猫が居る。
たぶん、十匹くらいは棲み付いていると思う。

「じゃあ、なに?」
「どうやら、エサをくれる人を待ってたみたい」

夜、彼らは一定の距離を保ち座っている。
まるで縄張りを主張するかのように。

「だよね」
「私もずっとそう思ってた」

部活で帰りが遅くなってしまった時があった。
その時、ある光景を目にした。

「エサをやってたのね?」
「そう!」

ある女性がエサを与えていた。
次から次へと猫たちに。

「それを見た瞬間」
「これか!と思った」

彼らは意味もなくたたずんでいたわけじゃない。
立派な理由があったのだ。

「立派ねぇw」
「彼らにとってはそうだよ」

ある意味、生きるか死ぬかの瀬戸際でもあった。

(No.1248-2へ続く)

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[No.1247-2]置いてある

No.1247-2

「はっきり言えよ」
「ボトル持ってみてよ?」

その言葉に素直に応じる。
まぁ、ドッキリではないだろうし。

「持ったぞ?」
「これでいいのか?」

繰り返しになるが特に変わったところはない。
ただ、中身が少ないせいか軽い。

「・・・もしかして」
「中身を補充しろってか?」

彼女が大きく頷く。

「何だよ、それ~」
「自分で入れろよ、それくらい」

そう言い終わった時、あることを思い出した。
彼女が補充に失敗して中身をこぼしたことがあった。

「ふふふ、思い出したようね」
「その言い方w」

不本意だけど面倒なので補充することにした。

「さすが上手!」
「これくらい誰でもできるだろ?」

それ以来、洗剤の補充は僕の仕事になった。
J1247
(No.1247完)
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[No.1247-1]置いてある

No.1247-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
洗面台にある物が置いてあった。
当初はそれが何を意味するか分からなかった。

「まだなの?」
「何がだよ」

主語がない話をよくしてくる。
ある意味、それが怖い。

「なにビビッてるのよw」
「勘弁してよ」

別にやましいことは何もない。
これが女性のやり口でもある。

「失礼ねw」
「だったら何だよ?」

洗面台に洗剤のボトルが置いてある。
普段は違う所に置いてあるのに。

「見ての通りよ」
「このボトルのことか?」

普段、洗濯に使っているものだ。
それがどうしたと言うのか・・・。

「そうよ」
「そうよって・・・」

一向に話が進んでいかない。
何かを気付けと言わんばかりの対応だ。

(No.1247-2へ続く)

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[No.1246-2]一期一会じゃないけれど

No.1246-2

「えっ、嬉しいこと?まさか・・・」

友人の言いたいことは分かる。
顔にそう書いてあるからだ。

「違うわよw」
「違うの?」

肝心なことを言ってない。
なのに会話が成立している。

「てっきり、出会いがあったのかと・・・」
「その安堵の表情はなによw」

そんな都合よく出会いがあるわけがない。

「じゃなによ?」
「収穫はほぼゼロだって言ってたじゃん?」

そう、講習会ではゼロだった。
その嬉しいことは、講習会の帰りに起こった。

「帰り?」
「そう!帰りにね!」

1日だけだったので特に誰とも仲良くはなっていない。
それは他の人も同じだった。

「でも、別れ際に・・・誰からでもなく」

“お疲れ様でした”の声が飛び交った。
J1246
(No.1246完)
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[No.1246-1]一期一会じゃないけれど

No.1246-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
そう多くないけど全くないわけでもない。
そんな瞬間が時より訪れる。

「昨日、どうだった?」
「うん、まぁまぁかな」

自分でも微妙な返事だと分かっている。
でも、実際そうだったからだ。

「そんなもんね」
「やっぱり」

資格を取得するために、講習会に参加した。
聞くだけではなく、実技を伴う講習会だ。

「試しに参加してみたけど」
「ちょっと、もの足りなかったかな」

それに想像していたものと違ってもいた。
だから余計にそう感じてしまう。

「収穫ゼロ?」
「ゼロじゃないけど・・・ね」

得られるものは少なかった。
無料ではないだけに、残念ではあった。

「地道に自分で勉強するよ」
「そうだね」

ただ、ちょっと嬉しいことが講習会で起きた。

(No.1246-2へ続く)

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