カテゴリー「(048)小説No.1176~1200」の50件の記事

[No.1200-2]道なき道を行く

No.1200-2

「そう言えば、実家の近所にもあったな」

あぜ道のようなものがあった。
正確には、そこまで立派なものではなかったが。

「それこそ、踏み固められた道って感じ」
「人の足で何度も」

もちろん、そこに道が出来たのは理由がある。

「理由?」
「それがないと・・・」

向うに行くのに相当な時間が掛かる。
早い話、ショートカットの道だ。

「回り道をしたら、10分くらいかかるだろうね」
「それは相当な差があるわね」

畑の作物を避けるように上手くそれは出来ていた。
だから直接的な迷惑は掛かっていない・・・とは思う。。

「そのうち、暗黙の了解ってやつで」

あたかも最初からそれが存在していたようになった。
もはやあぜ道の域を超えて、普通に道になった。

「それが今でもあるんだよね」
「もう・・・年も経ってるのに」

その道も、今通っている道と同じだ。
先人を切った人がいて、その後に続いた人も。

「道なきを道を行く・・・」
「そこに道は開かれん・・・ってやつだね」

いつか、私も。
1200
(No.1200完)
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[No.1200-1]道なき道を行く

No.1200-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ここ、通れるみたいね」
「ほんとだ」

一刻でも早く照りつける日差しを避けたい。
そのために、ショートカットできる道を見つけた。

「ここから公園内に入れそうよ」

大袈裟に言えばけもの道だ。
何人も人が通ったことで道が出来たようだ。

「足元、気を付けてね」
「木の根が張ってるようだから」

時々、このような道を見つける。
まぁ、ずるいと言えばずるい道なんだが・・・。

「やっぱり、木陰は涼しいね」
「この道、開拓した人、神!

木々を縫うように道が続いている。
今の私達の状況を知っているかのように。

「そうだよね」
「誰かが最初の一歩を踏み出さないと・・・」

道は生まれなかっただろう。

「それに、これに続いた人も」

確かに一人では道は作れない。
何か月も何年も掛けて、この道は生まれたのだろう。

「何だか壮大な話をしてる?私たち?」
「かもしれないw」

日差しを避けたつもりが話は何だか熱くなってきた。

(No.1200-2へ続く)

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[No.1199-2]お弁当の絵文字

No.1199-2

「さて・・・と」

名古屋コーチンをベースにした炊き込みご飯だ。

(うまい!)

さすがに声には出せないので心の中で大きく叫んだ。

「この煮玉子もうまいんだよな」

おかずに煮玉子やおひたしが付く。
これが炊き込みご飯とマッチする。

「美味しいのはさておき・・・」
「忘れないようにしないと」

食後は満足感が優先され、忘れることが多い。
一種の儀式のようなことを。

「さてと・・・食べ終わったことだし」
「忘れないうちに送るとするか!」

その時、僕に電話が掛かってきた。

「なんだよ、昼飯どきに・・・」

とは言え、出ないわけにはいかない。
幸い、短時間で電話は済んだ。

「・・・何か、することあったような」

それが何だか思い出せない。
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(No.1199完)
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[No.1199-1]お弁当の絵文字

No.1199-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------

「ん?しまったぁ!」

LINEに弁当の絵文字がひとつだけ送られてきた。

「今日は炊き込みご飯にしてるからね」
「サンキュー!」

基本、毎日お弁当を持たせてくれる。
かれこれ・・・年間も。

「はい、お弁当」
「ありがとう!」

普通は二段式のお弁当箱だ。
この歳にもなっても、とあるキャラクターの弁当箱だ。

「もう、お腹がすいてきたよ」
「朝食をさっき食べたばかりでしょw」

でも、少し手の込んだ弁当の時は違う。
一段だけだが、やや大きめの弁当箱になる。

「じゃ、いってくる!」
「いってらっしゃい!」

誤解のないように言えばいつも手は込んでいる。
けど、時々、いつも以上に気合が入っている時がある。

「・・・忘れないようにしなきゃ」

実は、こんな時は要注意だ。
あることを忘れると、あるものが飛んでくる。

(No.1199-2へ続く)

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[No.1198-2]マーマレード

No.1198-2

「まぁ、ジャムよりは少しクセはあるよね」
「うん・・・私もそんな気がしている」

食べたことがないかもしれないが。

「多分、匂いで食べずに敬遠したと思う」
「そうね、確かに独特の・・・」

子供にはハードルが高そうな匂いがした。
何となく薬草ぽいと言うか・・・。

「でもさぁ・・・今、食べてるパン・・・」
「そうなのよね、似たようなものが入ってるの」

食感こそ違うが、匂いはマーマレードそのものだ。

「食べられるようになった・・・って話?」
「うん・・・いつの間にか」

食の好みが変わることは色々と経験してきた。
苦手だった食べ物が、今では好物に変わったりしている。

「私もそうよ」
「子供の頃と随分変わったな」

私の場合もそうだ。
マーマレードに似た食べ物が逆に好きになった。

「このパンだって・・・フルーティでさぁ」
「逆にオレンジが入っていないとダメなくらい」

それくらい好みが変わった。

「じゃぁ、肝心のマーマレードは?」
「食べてみたんだよね」

もちろん食べてみた。
今なら食べれそうだからだ。

「で、結果は?」
「・・・やっぱり、ダメみたい」
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(No.1198完)
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[No.1198-1]マーマレード

No.1198-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
それを食べた記憶はない。
だから、多分、食わず嫌いだったと思う。

「マーマレードって知ってる?」
「もちろん知ってるわよ」

オレンジの果肉が練り込まれたパンを食べている。
その関係で思い出した。

「それがどうしたの?」

学校給食で時々、それが出てきた。
ジャムと同じ大きさの小袋で。

「私のところもそうだったよ」
「パンがパンだけに嬉しかったでしょ?」

確かに嬉しかっただろう、私以外は。
いわゆるコッペパンだけでは味気ないからだ。

「私、それが食べれなくて」
「嫌いだったの?」

それがよく分からない。
食べたから嫌いになったのか、単に食わず嫌いなのか。

「記憶が定かではなくて」
「でも、それからと言うものずっと口にしてないの」

だから、何が原因で食べなくなったのか分からない。
自分でも。

「おかしな話ね」
「この流れからすると、ジャムはいけるの?」

いちごのジャムは好きだった。
そう考えると、オレンジが苦手ということになる。

「でも、オレンジ自体は好きなのよね」

オレンジだけではなく、総じて柑橘類は好きだった。

(No.1198-2へ続く)

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[No.1197-2]持たせてくれた人

No.1197-2

「でも、今さらなんでこんな話を?」
「先週、実家に寄ったんだけど」

なにげなく食器棚を整理していた時にそれを見つけた。
それこそ、なにげなく置かれていた。

「さすがに使ってはなさそうだったけど」
「雑に置かれてたわけでもなかったな」

もう、弁当を持つ人はいない。
そもそも、持たせてくれる人も居ないが。

「捨てられなかったんじゃない?」
「別に思い出の品ってわけでもないんだぞ?」

3年間使った・・・ただ、それだけだ。
それ以上でも以下でもない。

「これだから男性は・・・」
「何だよ?」

彼女が何か言いたげな顔をしている。

「“あなた”はそうかもしれないけど」
「“持たせてくれた人”は違うのよ」

そう言うものだろうか?
僕にはよくわからない。

「お弁当は物言わぬ、愛情そのものなのよ」
「気付かなかったの?」

そう言われても・・・。

「だから、捨てられなかったのよ」
「お母さんは」

(No.1197完)
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[No.1197-1]持たせてくれた人

No.1197-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「まだ捨ててなかったんだ」

思い出の品ではない。
でも、愛着はある・・・別の意味で。

「お弁当箱?」
「あぁ、・・・年前のな」

高校生の時に使っていたものだ。
3年間、これだった。

「ザ・弁当箱!って感じのやつでさ」
「平べったくて、これくらいの大きさで・・・」

今ではあまり見かけない。
金属製で色気も何もない。

「この平べったいのが問題と言うか・・・」
「問題?」

当時の学生カバンには横向きでは入らなかった。
だから、教科書と同じように縦に入れていた。

「こうなるとご飯がどちらかに寄るだろ?」
「だろうねw」

学校に着くと、ご飯が7割まで圧縮されている。

「それは分かるけどおかずは?」
「おかずはさぁ・・・」

おかずはおかず入れに入っていた。
説明が難しいがそれは封が可能で密閉度が高い。

「早い話、ずれないってこと」
「なるほど」

(No.1197-2へ続く)

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[No.1196-2]何で磨くの?

No.1196-2

「で、とにかく、磨きたくなるんだよ」
「そうかな・・・」

もともと、表面がややくすんでいることもある。
磨いてくれと言わんばかりに。

「磨くとさ・・・色鮮やかになって」
「めちゃくちゃ、美味そうに見えるんだよ!」

例えるなら、大きなビー玉のようだった。
豊潤で高貴な色に変化する。

「大袈裟ね」
「大袈裟じゃないぞ!」

驚くほど、つやつやになる。
食べるのがもったいないくらいに。

「じゃ、見てろよ」

論より証拠だ。
もう、さっきから磨いているが。

「・・・何だか輝きを増してない?」
「だから言ったろ?」

特にこのすももは色が濃い。
味も期待させる。

「・・・これどう?」
「なにこのつやつや感!」

ある意味、食べる前の儀式のようなものだった。
あの頃の僕たちにとっては。

「今もでしょ?」
「だなw」

そう言い終わる前に彼女もひとつ磨き始めた。

(No.1196完)
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[No.1196-1]何で磨くの?

No.1196-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「何してるの?」
「ん?ご覧のとおりだよ」

見ての通り、すももを磨いている。

「そうなんだけど、なんで?」
「なんでと言われても・・・」

指摘されてあらためて思った。
なんで僕はすももを磨いているのかと。

「無意識?」
「いや、そこまでじゃないけど」

自然とそうしてしまう。
きっかけは多分、アレだろう。

「きっかけがあるの?」
「あぁ、小学生の時・・・」

給食にまれにすももが出てきた。
その時、誰からともなく、すももを磨き始めた。

「なんでぇ~?!」
「こっちが聞きたいくらいだよw」

僕の記憶ではこうだ。
すももの色は基本、ワインレッドだけど差がある。

「まぁ・・・そうよね」
「ほら、これなんか」

かなり色が薄い。

「味に差があるかは別にして」
「とにかく色が濃いのが人気だった」

ただ、選ぶことは出来なかった。
あくまでも給食係が配ってくれるのを待つだけだった。

(No.1196-2へ続く)

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