カテゴリー「(004)小説No.050~100」の60件の記事

[No.080-2]暗闇からの目覚め

No.080-2

『そうかな?』

これを“変”と感じてないらしい。
感性の違いか・・・。
菜緒にとっては、ベストショットなのかもしれない。

「・・・そう見えなくもないか・・・?」

その気で見れば、芸術作品にも見える。
タイトル“暗闇からの目覚め”と言ったところだろうか。

暗闇に生まれた、わずかな光。

場所が場所だけに、少し考えさせられる。
それを表現しようとして、シャッターを切ったのかもしれない。

『ごめん・・・素敵な写真だよ』
『そやろ!直接写メしてるから中身は見てへんけど』
メール作成から直接撮影し、添付しているらしい。
「アバウトというか・・・らしいな」

『ちょっと写メ見てみたら』
返事を送った。
『わぁ、めっちゃへんやん!』
(え!やっぱり・・・だから言ったのに・・・)
『指でレンズを塞いだ・・・とか?』
『ちゃうねん・・・ストラップやわ』
(ストラップ・・・まさか・・・)
『これだよ、せいじゅうろうやねん』

No802_2

なるほど・・・こいつの背中だったんだ。

(No.080完)
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[No.080-1]暗闇からの目覚め

No.080-1 [No.007-1]せいじゅうろう

『いま、長崎におるねん』

今度はしっかり写真が添付されている。
“写メ”のはずが“メ”になっていることが、よくあったからだ。
(成長したな、菜緒)
写真が数枚、添付されているようだ。
「どれどれ」
早速開いて見る。

「えーっと・・・どこだ、ここ?」
と、その前に言うべきことがある。
「なんだ、これ?」

No801

メールの内容からすると、観光地としても有名な建物だ。
テレビや雑誌で何度か見たことがある。
でも、それらしい建物は何も写っていない。
わずかな青空と何やらピンボケのもの・・・。
暗くてその正体は不明だ。
(まてよ・・・もしかして)
写真の雰囲気では、レンズに指が写りこんだようにも見える。

「でもなぁ・・・撮影した時に気付くはずだよな」

『なぁ、写真変じゃない?』

一応、メールで確認した。
菜緒のことだ・・・何かハプニングの予感がする。

(No.080-2へ続く)

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[No.079-2]心のスケッチ

No.079-2

「ねぇ・・・今日、誘った理由は?」

彩香に誘われた時は、理由を聞かなかった。
ただ、今は聞くしかない。

「女同士で来る時は・・・ね」
「・・・泣きたい時よ。まぁ、ナンパされたい時もかな?」

彩香がクスっと笑った。
後半は彩香の照れ隠しだろう。

理由は検討が付く。
いつも、誰かと来てたんだから。

『・・・寂しく感じるよ・・・』

彩香の言葉を思い返す。
(ちょっと、間違っていたのかな・・・私・・・)
海は空じゃなくて、見る人の心を映す鏡だ。
彩香には、キラキラ輝く海は見えてないんだ。

「どうする・・・泣く?それとも、歌う?食べる?」
「全部ぅぅ!」
彩香から元気な声が返ってきた。

「また、来るね!」
彩香が海に向かって叫んだ。

波の音が一瞬だけ、大きくなった気がした。

(No.079完)
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[No.079-1]心のスケッチ

No.079-1

「海って、不思議ね」

彩香が沈黙を破るかのように、ポツリとつぶやいた。
女ふたりで海を見に来た。
女同士に加え“見に来る”自体が負け組だ。

「いつも来るたびに、感じ方が違うんだもん」
(いつも誰と?・・・まぁ、いいか)
「そりゃね、海だって表情を変えるわよ」
これと言った答えがないまま、口にした。

けど、間違ってはいないはずだ。

海は空を映す鏡のような存在だ。
空が泣けば、海は曇る。
空が笑えば、海は光る。
それに、波を使い、私たちにご機嫌を知らせてくれる。

「今日はどんな感じ?」
彩香に問い掛けた。
「なんだろう・・・寂しく感じるよ」
彩香の表情が冴えない。

「良い天気じゃない!海もキラキラ光ってるよ」

確かに、人影はまばらだ。
そう感じなくもない。
でも、昼間だし、静寂に包まれているわけでもない。

(No.079-2へ続く)

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[No.078-2]上を向いて

No.078-2

「ひまわりが凄いね!」

京香の強引さに気を取られ、周りを良く見ていなかった。
確かに、ひまわりが咲き誇っている。

「見て見て!私と同じ背の高さよ!」

京香が一本のひまわりの前で、はしゃぐ。
それは一際、黄色が濃いひまわりだった。

手で触れてみようとした瞬間だった。

急に風がざわめいた。

ひまわりは、僕から目をそらし、そっぽを向いた。
そして、風が止むと、僕と目が合った。

(何だろう?似たようなことが有ったような・・・)

今度は風がそよぐ。

ひまわりが小さく揺れる。
それでも太陽をしっかり見上げている。

「あら?仲がいいのね」

ふたりと一本で、空を見上げた。

(No.078完)
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[No.078-1]上を向いて

No.078-1

「ごめん!」
「もー!許してあげないから!」

京香が、そっぽを向いた。
半分本気、半分冗談の態度だ。

「甘いもの、お・・・」
京香と目が合った。
「パフェでしょ、ケーキでしょ、それから、えっーと・・・」
僕が最後までしゃべり終わる前に、伝わっている。

瞳の奥に、甘いものが映っている・・・ように見える。
早く機嫌が直るのも京香らしい。
いつも、この作戦が成功している。

(待てよ・・・)

作戦が成功しているのは、もしかして京香の方?
いつものことだけど、急に疑問に思う。
まぁ、とにかく仲直りできる作戦には間違いない。

「食べ過ぎたよ~」
結局、全ておごらされた。
「ちょっと休憩、休憩っと!」
無理やり公園のベンチに座らされた。

それでも通り過ぎる風が、案外心地よい。

(No.078-2へ続く)

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[No.077-2]ヒーローの格言

No.077-2

なんとか仕事のミスをフォローできた。

「友子、ありがとう」

積極的に手助けしてくれた同僚に感謝した。
そう言えば、何度もピンチの時に助けてもらっている。

「友子って、正義のヒーローみたいね」
「どうして?」
「だって、“ここぞ”って時に、助けてくれるから」
「そうかしら?」

性格が男性的な友子らしい。
恩に着せる訳でもなく、淡々としている。

「まぁ・・・そう言われると悪い気はしないけどね」
友子としては珍しい返事だ。
「私も友子を助けられるぐらいにならなくちゃ!」
「あんたに?無理よ、無理!」
友子が笑いながら、私をイジる。

「でもね・・・」
友子が急に神妙な表情に変わる。

「ヒーローってね、守る人がいないと力が出ないのよ」

偉人よりも、心に残る友子流の格言だった。

(No.077完)
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[No.077-1]ヒーローの格言

No.077-1

愛用するシステム手帳に、格言が書いてある。
1日分のページに1つ、隅に小さく目立たぬように。

「へぇ・・・いい言葉じゃない」
ちょっとした感動した。
でも、他人が聞けば、
「だから格言なの!」と、間違いなく突っ込まれる。

迷った時、落ち込んだ時、言葉が道を示してくれることもある。
明日はどんな言葉が私を待っているのか・・・。
はやる気持をおさえてページをめくる。

ある日、仕事で大きなミスをした。

「気にしない、気にしない」

同僚が声を掛けてくれた。
とは言え、ヘコみ度はかなりのものだ。

今日の格言は奇しくも“失敗から学べ”的な内容だった。
失敗は確かに教訓になる。
けど、避けて通れるもなら、そうしたい。

(気持を切り替えよう・・・)

特に数日間は慎重に仕事を進めた。
悪いことは続くこともある。
ページをめくる手に、意味の無い緊張感が走る。

(No.077-2へ続く)

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[No.076-2]尚、この件は

No.076-2

解決方法は多分、簡単だ。

学習した内容をリセットすれば済む。
ただ、あえてそうしない。

ケータイは少し事情が違う。

“な”と入力するだけで、予測変換の候補にあがる。
それは間違いない。
でも、候補にあがる名前は、ひとつだけだ。
それは、日を追うごとに優先順位が下がって行った。

それでも、ブログ小説の中で、“なお”は生きている。

話の牽引役として、何度となく登場した。
そして、これからもそうだろう。

(なお・・・)

口には出さずに、画面に語りかけた。

『菜緒、この件に関しては・・・』
画面上には、入力を待つカーソルが点滅している。

文章を書く度に、“なお”に出逢う。
そして、打つ手が止まり、想い出す。

(No.076完)
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[No.076-1]尚、この件は

No.076-1

報告書に追われる。

けど、やらないといけない仕事も山積みだ。
報告書は大事だけど、時と場合による。

『・・・が確実です。奈央、この件は・・・』

「あ、間違えた」

『尚、この件は後日・・・』
慌てて修正する。
いつからだろうか。
(・・・とか言いながら、検討は付いている)
“尚”の変換が少し面倒になった。
奈緒、菜緒、奈央・・・尚・・・。
“なお”と読める文字が複数、候補にあがる。

“木を隠すなら森に隠せ”
この意味と同じだ。

“なお”を隠すなら“なお”に隠せ・・・。
昼休みに、せっせとブログの下書きをしていた。
それが結果的に学習されていった。

別に報告書だけでに限ったことではない。

何か文章を書けば、同じように“なお”に出逢う。

(No.076-2へ続く)

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