[No.075-2]追いつけない自転車
No.075-2
遠ざかる山下君の背中を見つめる。
(見つめる・・・見つめる?)
ハッと我に返る。
「ちょっと、なにするのよ!」
声はもう届かない。
(まったく、もう!)
“憎めない奴”友達には、こんな言い回しをする。
そう、遠回しに・・・。
「気を取り直そっと」
大きく深呼吸してから、もう一度ペダルに力を込める。
(さぁ、追いつくわよ!)
随分と離れてしまった彼を追いかける。
(見えた!)
彼の背中が近づく。
けど、追いつけそうで追いつけない。
そして、背中を見つめながら、分かり始めてきた。
あの感覚・・・。
「わたし、山田君が好きなんだ」
絶対、追い越して見せる。
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