カテゴリー「(044)小説No.1076~1100」の52件の記事

[No.1107-2]私もよ

No.1107-2

「上手く行きそう?」

上手く行かせるつもりだ。
去年はその予行演習でもあった。

「コツは掴んだからね!」
「期待していいのね?」

その言葉の意味は重々承知している。
友人は私以上にトマトが好きだ。

「はいはい」
「ところで、ミニ、大玉?」

そこそこ詳しいところが憎らしい。
でも、それがやる気にも繋がる。

「残念~!」
「中玉」

去年はミニトマトがそれなりに収穫できた。
味も初めてにしては悪くはなかった。

「収穫したら持っていくよ」
「サンキュー!」

毎年のことながらベランダに出るのが楽しみだ。

「私もよ!」

(No.1107完)
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[No.1100-2]せっかちな桜

No.1100-2

「ふふふ・・・」

友人が急に笑い出した。
笑いと言うより、不敵な笑みに近い。

「なになに!?」
「だってぇ~」

桜を見ているだけで笑いの要素は見当たらない。
一体、何が笑いを誘っているのだろうか。

「この桜・・・」
「あなたみたいなんだもん!」

考える間もなくその言葉を理解した。
もちろん、“桜のように美しい”なんてことはない。

「・・・と言うことは」
「そう言うこと!」

確かにわざわざ答えを聞くまでもない。
答えはさっき自分で言った。

「まぁ・・・そうだよね」
「否定はしない」

逆に友人の発想を褒めてあげたい気分だ。

「潔くてよろしい!」
「はいはい・・・」

せっかちな桜に例えられるとは思っていなかった。
でも、そう悪くはないから不思議だ。

(No.1100完)
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[No.1100-1]せっかちな桜

No.1100-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ほら!あれ見てよ!」

その言葉だけで何を言いたいのか分かる。
今の季節ならではの出来事だからだ。

「早くない?」
「他のは全然咲いていないのに」

花どころかつぼみも見当たらない。
せっかちにもほどがある。

「だよね」
「この木だけ満開」

いや・・・満開どころか、散り始めている。
今も花びらが宙を舞っている。

「春を先取りね!」
「逆に、終わり感が半端ないけど」

春を感じるどころか、気分はもう初夏だ。

「それにしても・・・」
「このギャップがすごいね」

枯れ野原に咲く、一輪の花・・・って感じだ。
明暗のコントラストが際立っている。

「ここは春なのに」
「他はまだ冬だよね」

気温のせいもあるだろう。
この木の周りだけ、不思議と暖かく感じる。

(No.1100-2へ続く)

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[No.1099-2]久しぶりな言葉

No.1099-2

「それにしても・・・」
「なになに!?」

急に神妙な顔になった。
まさか・・・良からぬ線が見つかったのだろうか。

「生命線・・・短いね!」
「おいっ!」

見事な時間差攻撃だ。
完全に不意を突かれた。

「ちょっと勘弁してよ・・・」
「あはは!ごめんごめん」

まぁ、笑いのセンスは認める。

「で、どうなんだよ?俺の手相は」
「あっ!そうだったわね」

今まで何を?と思うのは俺だけじゃないだろう。

「手相より、アレが気になって」
「・・・アレ?」

ここにきて、振り出しに戻った気分だ。
何だ・・・アレって・・・。

「俺の手、何か変わってるの?」
「ううん」

じゃあ、何が・・・と思う。

「それなら何だよ、アレって?」
「これよ、これ!」

そう言うと俺の中指をつかんだ。

「お兄さん指、短っ!」

(No.1099完)
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[No.1099-1]久しぶりな言葉

No.1099-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「手相見せてくれない?」

女性雑誌にでも載っていたのかもしれない。
嫌な予感しかしないけど・・・。

「いいよ」
「でも、生命線は短いぞ」

自虐ネタではない。
本当に・・・短い。

「まぁ、それはそれとして」
「えっ!?スルーなの・・・」

仕方ない、彼女の求めているものに付き合おう。
でも、何を求めているのだろうか。

「じゃあ、見てよ・・・」
「サンキュー!」

俺の手を取り、まじまじと手相を見始めた。
レアな線は無いと思うが。

「何か特別な線、あった?」
「そうね・・・」

手相は年齢と共に変わると聞いたことがある。
人生経験などがそれに影響するとかしないとか・・・。

「・・・ないね!」
「何だよ!その嬉しそうな顔は・・・」

生命線の短さを補う線が欲しかったところだ。
例えば、富とか名声の線だ。

「お金持ちになりたいの?」
「例えば、の話だよ」

ただ、願望が全くないわけではない。

(No.1099-2へ続く)

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[No.1098-2]最高の場所

No.1098-2

でも、ここに一人で来ることはほとんどなかった。
理由は簡単だ。

(お金、持ってなかったもんな)

だから、母親の買い物に付いて行く。
手伝いついでに、たこ焼きにありつく。

(実際、ちゃんと手伝ってたよな?)

持ち帰り自由なダンボール箱に商品を詰め込む。
そしてそれを自転車の荷台に積む。

(それをゴムバンドでグルグルにして)

荷台から落ちないようにする。
これが僕の主な手伝いだった。

(・・・ほんと、懐かしいな)

昔の映像が鮮明に蘇ってくる。
無邪気にはしゃぐ僕の姿も。

(さてと・・・)

ここに来たのは思い出に浸るためではない。
急いで、花の束を2つ買って実家に向かった。

「帰ったよ!」

出迎えてくれる人はいない。
でも、待っててくれる人は居る。

「ごめん、しばらく来れなくて」
「久しぶりに・・・で買い物したよ」

買った花の束をそっと仏壇にそなえた。

(No.1098完)
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[No.1098-1]最高の場所

No.1098-1

登場人物
男性=牽引役
-----------------------------
見た目は違えども今でもそれが残っている。
かれこれ・・・年の時が流れているが。

(昔は2階建ての建物だったのにな)

今風に言えばショッピングモールのようだった。
かなり誇張した表現だけど。

(今じゃ普通のスーパーか・・・)

でも、いわゆる系列は昔から変わっていない。
昔も今も有名な店だ。

(確か・・・)

色々、思い出してみる。
1階にはそれほど大きくはない、おもちゃ屋があった。

(アレが欲しくてよく通ったっけな!)

当時、超人気のプラモデルを手にするために。

(で、近くにはたこ焼き屋があって)

そこでたこ焼きとソフトクリームをよく食べた。
ここに来る楽しみのひとつでもあった。

(100円とか200円の時代だったよな)

それだけで十分満足できた。
それだけで十分幸せだった。

(2階には本屋もあったし)

その隣にはレコード店もあった。
今でも鮮明に店の位置関係を覚えている。

(No.1098-2へ続く)

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[No.1097-2]最初の彼女

No.1097-2

「もしかして・・・」

ここで女の勘が働いた。
いや、女でなくても想像は付くかもしれない。

「元カノに似てるとか?」
「よく分かったな・・・」

むしろ、外す方が難しいのかもしれない。

「それもさぁ、最初に付き合った人に似てて」
「えっ!あの人?!」

その存在については、随分前に聞かされていた。
でも、どんな顔をしていたまでは知らなかった。

「へぇ~こんな感じの人だったんだぁ」
「そっくり過ぎてビックリしてる」

その割には、顔が冴えない。
少なくても懐かしんでいるようには見えない。

「色々・・・あったんだ?」
「そう言い当てるなよ」

どうやら色々あったらしい。

「あ~思い出しちゃうよ!あの時はごめん!」

よほど何かあったらしい。

“許してあげない”

「えっ・・・」
「今のはテレビよ」

(No.1097完)
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[No.1097-1]最初の彼女

No.1097-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「・・・この女優さんタイプなの?」
「えっ!どうして?」

さっきからドラマを食い入るように見ているからだ。

「いや、ストーリーが」
「恋愛ドラマって好きだっけ?」

恋愛ドラマは全く見ないと聞いていた。
実際、話題が合わなくて苦労している。

「これは特別で・・・」
「そう?私の目には普通のドラマに見えるけどね」

特徴がない、ありきたりなストーリーだ。

「この女優さん目当て?」
「まぁ・・・そうだな」

こんな人がタイプなんだとあらためて思う。
私とはまるで違うからだ。

「でも、好きとかじゃないぞ!」
「別に好きでも、いいよ」

誰だって好きな芸能人の一人や二人は居る。
それに、好きなところで付き合えるわけでもない。

「夢がないな~」
「現実的なだけよ」

それにしても彼女の何が気になるのだろう。
特に好きでもないとしたら。

(No.1097-2へ続く)

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[No.1096-2]それを二本

No.1096-2

「大人になってフッと思い出して」
「調べてみたら」

販売が終了していることがわかった。

「そうなると余計、飲みたくなるだろ?」
「わかる、わかる!」

似た物を飲んだこともあった。
でも、やはり覚えている味とは違った。

「まさか復活するとは・・・」
「それに進化してるし」

昔に飲んだものは炭酸は入っていなかった。
でも、これは炭酸入りのようだった。

「何だか美味しそうね!」
「買ってみない?」

懐かしさが先行して、肝心なことを忘れていた。

「もちろんだよ!」
「じゃ、今夜は唐揚げでも作ろうか?」

その言葉に大きくうなづく僕がいた。

「それにしても本当に懐かしいな」
「母親が好きでさぁ・・・」

普段、母はアルコールを口にしなかった。
でも、これだけは飲んでいた記憶がある。

「一度くらいは一緒に飲みたかったかな・・・」
「代わりに私が付き合ってあげるからさ!」

そっとそれを二本、手に取った。
S1096
(No.1096完)
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