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[No.1100-2]せっかちな桜
No.1100-2
「ふふふ・・・」
友人が急に笑い出した。
笑いと言うより、不敵な笑みに近い。
「なになに!?」
「だってぇ~」
桜を見ているだけで笑いの要素は見当たらない。
一体、何が笑いを誘っているのだろうか。
「この桜・・・」
「あなたみたいなんだもん!」
考える間もなくその言葉を理解した。
もちろん、“桜のように美しい”なんてことはない。
「・・・と言うことは」
「そう言うこと!」
確かにわざわざ答えを聞くまでもない。
答えはさっき自分で言った。
「まぁ・・・そうだよね」
「否定はしない」
逆に友人の発想を褒めてあげたい気分だ。
「潔くてよろしい!」
「はいはい・・・」
せっかちな桜に例えられるとは思っていなかった。
でも、そう悪くはないから不思議だ。
[No.1100-1]せっかちな桜
No.1100-1
登場人物女性=牽引役
女性=相手
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「ほら!あれ見てよ!」
その言葉だけで何を言いたいのか分かる。
今の季節ならではの出来事だからだ。
「早くない?」
「他のは全然咲いていないのに」
花どころかつぼみも見当たらない。
せっかちにもほどがある。
「だよね」
「この木だけ満開」
いや・・・満開どころか、散り始めている。
今も花びらが宙を舞っている。
「春を先取りね!」
「逆に、終わり感が半端ないけど」
春を感じるどころか、気分はもう初夏だ。
「それにしても・・・」
「このギャップがすごいね」
枯れ野原に咲く、一輪の花・・・って感じだ。
明暗のコントラストが際立っている。
「ここは春なのに」
「他はまだ冬だよね」
気温のせいもあるだろう。
この木の周りだけ、不思議と暖かく感じる。
[No.1099-2]久しぶりな言葉
No.1099-2
「それにしても・・・」
「なになに!?」
急に神妙な顔になった。
まさか・・・良からぬ線が見つかったのだろうか。
「生命線・・・短いね!」
「おいっ!」
見事な時間差攻撃だ。
完全に不意を突かれた。
「ちょっと勘弁してよ・・・」
「あはは!ごめんごめん」
まぁ、笑いのセンスは認める。
「で、どうなんだよ?俺の手相は」
「あっ!そうだったわね」
今まで何を?と思うのは俺だけじゃないだろう。
「手相より、アレが気になって」
「・・・アレ?」
ここにきて、振り出しに戻った気分だ。
何だ・・・アレって・・・。
「俺の手、何か変わってるの?」
「ううん」
じゃあ、何が・・・と思う。
「それなら何だよ、アレって?」
「これよ、これ!」
そう言うと俺の中指をつかんだ。
「お兄さん指、短っ!」
[No.1099-1]久しぶりな言葉
No.1099-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「手相見せてくれない?」
女性雑誌にでも載っていたのかもしれない。
嫌な予感しかしないけど・・・。
「いいよ」
「でも、生命線は短いぞ」
自虐ネタではない。
本当に・・・短い。
「まぁ、それはそれとして」
「えっ!?スルーなの・・・」
仕方ない、彼女の求めているものに付き合おう。
でも、何を求めているのだろうか。
「じゃあ、見てよ・・・」
「サンキュー!」
俺の手を取り、まじまじと手相を見始めた。
レアな線は無いと思うが。
「何か特別な線、あった?」
「そうね・・・」
手相は年齢と共に変わると聞いたことがある。
人生経験などがそれに影響するとかしないとか・・・。
「・・・ないね!」
「何だよ!その嬉しそうな顔は・・・」
生命線の短さを補う線が欲しかったところだ。
例えば、富とか名声の線だ。
「お金持ちになりたいの?」
「例えば、の話だよ」
ただ、願望が全くないわけではない。
[No.1098-2]最高の場所
No.1098-2
でも、ここに一人で来ることはほとんどなかった。
理由は簡単だ。
(お金、持ってなかったもんな)
だから、母親の買い物に付いて行く。
手伝いついでに、たこ焼きにありつく。
(実際、ちゃんと手伝ってたよな?)
持ち帰り自由なダンボール箱に商品を詰め込む。
そしてそれを自転車の荷台に積む。
(それをゴムバンドでグルグルにして)
荷台から落ちないようにする。
これが僕の主な手伝いだった。
(・・・ほんと、懐かしいな)
昔の映像が鮮明に蘇ってくる。
無邪気にはしゃぐ僕の姿も。
(さてと・・・)
ここに来たのは思い出に浸るためではない。
急いで、花の束を2つ買って実家に向かった。
「帰ったよ!」
出迎えてくれる人はいない。
でも、待っててくれる人は居る。
「ごめん、しばらく来れなくて」
「久しぶりに・・・で買い物したよ」
買った花の束をそっと仏壇にそなえた。
[No.1098-1]最高の場所
No.1098-1
登場人物男性=牽引役
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見た目は違えども今でもそれが残っている。
かれこれ・・・年の時が流れているが。
(昔は2階建ての建物だったのにな)
今風に言えばショッピングモールのようだった。
かなり誇張した表現だけど。
(今じゃ普通のスーパーか・・・)
でも、いわゆる系列は昔から変わっていない。
昔も今も有名な店だ。
(確か・・・)
色々、思い出してみる。
1階にはそれほど大きくはない、おもちゃ屋があった。
(アレが欲しくてよく通ったっけな!)
当時、超人気のプラモデルを手にするために。
(で、近くにはたこ焼き屋があって)
そこでたこ焼きとソフトクリームをよく食べた。
ここに来る楽しみのひとつでもあった。
(100円とか200円の時代だったよな)
それだけで十分満足できた。
それだけで十分幸せだった。
(2階には本屋もあったし)
その隣にはレコード店もあった。
今でも鮮明に店の位置関係を覚えている。
[No.1097-2]最初の彼女
No.1097-2
「もしかして・・・」
ここで女の勘が働いた。
いや、女でなくても想像は付くかもしれない。
「元カノに似てるとか?」
「よく分かったな・・・」
むしろ、外す方が難しいのかもしれない。
「それもさぁ、最初に付き合った人に似てて」
「えっ!あの人?!」
その存在については、随分前に聞かされていた。
でも、どんな顔をしていたまでは知らなかった。
「へぇ~こんな感じの人だったんだぁ」
「そっくり過ぎてビックリしてる」
その割には、顔が冴えない。
少なくても懐かしんでいるようには見えない。
「色々・・・あったんだ?」
「そう言い当てるなよ」
どうやら色々あったらしい。
「あ~思い出しちゃうよ!あの時はごめん!」
よほど何かあったらしい。
“許してあげない”
「えっ・・・」
「今のはテレビよ」
[No.1097-1]最初の彼女
No.1097-1
登場人物女性=牽引役
男性=相手
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「・・・この女優さんタイプなの?」
「えっ!どうして?」
さっきからドラマを食い入るように見ているからだ。
「いや、ストーリーが」
「恋愛ドラマって好きだっけ?」
恋愛ドラマは全く見ないと聞いていた。
実際、話題が合わなくて苦労している。
「これは特別で・・・」
「そう?私の目には普通のドラマに見えるけどね」
特徴がない、ありきたりなストーリーだ。
「この女優さん目当て?」
「まぁ・・・そうだな」
こんな人がタイプなんだとあらためて思う。
私とはまるで違うからだ。
「でも、好きとかじゃないぞ!」
「別に好きでも、いいよ」
誰だって好きな芸能人の一人や二人は居る。
それに、好きなところで付き合えるわけでもない。
「夢がないな~」
「現実的なだけよ」
それにしても彼女の何が気になるのだろう。
特に好きでもないとしたら。
[No.1096-2]それを二本
No.1096-2
「大人になってフッと思い出して」
「調べてみたら」
販売が終了していることがわかった。
「そうなると余計、飲みたくなるだろ?」
「わかる、わかる!」
似た物を飲んだこともあった。
でも、やはり覚えている味とは違った。
「まさか復活するとは・・・」
「それに進化してるし」
昔に飲んだものは炭酸は入っていなかった。
でも、これは炭酸入りのようだった。
「何だか美味しそうね!」
「買ってみない?」
懐かしさが先行して、肝心なことを忘れていた。
「もちろんだよ!」
「じゃ、今夜は唐揚げでも作ろうか?」
その言葉に大きくうなづく僕がいた。
「それにしても本当に懐かしいな」
「母親が好きでさぁ・・・」
普段、母はアルコールを口にしなかった。
でも、これだけは飲んでいた記憶がある。
「一度くらいは一緒に飲みたかったかな・・・」
「代わりに私が付き合ってあげるからさ!」
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- [No.1096-1]それを二本 2022.03.05
- [No.1095-2]上か下か 2022.03.03
- [No.1095-1]上か下か 2022.03.02
- [No.1094-2]レトロ好き 2022.02.27
- [No.1094-1]レトロ好き 2022.02.26
- [No.1093-2]高貴な名前 2022.02.24
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- [No.1088-1]ひとり○○ 2022.01.16
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- [No.1087-1]木の匂い 2022.01.12
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- [No.1085-2]怪獣じゃない! 2021.12.28
- [No.1085-1]怪獣じゃない! 2021.12.26
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- [No.1081-1]超・生活感がある話 2021.12.12
- [No.1080-2]おまじない 2021.12.09
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