カテゴリー「(041)小説No.1001~1025」の18件の記事

[No.1009-2]突き抜ける空

No.1009-2

「今日、あの空の辺りに行ってみない?」
「いいね、それ!」

遠いと言っても、自転車なら行ける距離だ。
それに、ふたりの帰り道の方向にも近い。

「何か出来るのかなぁ~?」
「ビルが建ったりして!それも超高層の!」

そうなるとまた殺風景な景色に逆戻りだ。

「まぁ、その可能性は大いにあるわね」
「それも含めて確認しに行きましょ!」

個人的には公園でも出来ていれば最高だ。
ここからは到底見えないけれど。

「なんだか、ワクワクしてきたね!」
「ほんと、授業を受けている場合じゃないかも」

特に今は退屈な科目だ。
先生の声なんて、全然耳に入ってこない。

「けど、なんで最近まで気付かなかったんだろう?」

確かにそう言われてみるとそうだ。
取り壊したのなら、工事の途中も見えたはずだ。

「なんでだろうね」

もちろん、建物があったことが前提だ。

「多分、授業をまじめに聞いていたからじゃない?」
「今とは違って、よそ見をせずに」
S1009
(No.1009完)
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[No.1009-1]突き抜ける空

No.1009-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なんか違う・・・」
「ん?何か言った?」

友達が窓の外を指差した。

「ほら、私の席からは空は見えないんだよね」
「そうだっけ?」

でも、今は遠くに空が見えている。
丁度、建物に挟まれるような感じで。

「そう言えば、そこに何か建ってたよね?」
「・・・確かに」

それが何だったか覚えてはいない。
でも、その空間に建物があった。

「取り壊したのかな?」
「多分、そうなんだろうね」

無機質だった風景に潤いが生まれた。
大袈裟だけど、そんな感じだ。

「それにしても気持ちがいいね!」
「たったこれだけのことなのに」

秋晴れも手伝って、抜けるような青空だ。
空を抜けて、更に向こうの景色まで見えそうな勢いだ。

「あれは・・・富士山かな?」
「山が見えたら、すぐそれを言うんだから!」

もちろん富士山ではない。
でも、つい言ってみたくなるのが日本人だ。

(No.1009-2へ続く)

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[No.1008-2]想い出のグラス

No.1008-2

「なんでそれだったのかな?」
「実は・・・ね」

当時は特に何も考えていなかった。
店の余り物をくれた程度にしか・・・。

「でも、よくよく考えたら」

その日は成人式だった。

「お祝いに?」
「そう!・・・だけどな」

確かにお祝いだと思う。
けど、僕は成人式には行っていない。

「・・・そうなの?」
「うん、配属先がさぁ・・・」

実家とは遠く離れた場所だった。
その場所にはもちろん知り合いなどいない。

「だから行かなかったんだ?」
「それに仕事もあったし」

そのは日曜日だった。
でも、僕は仕事をしていた。

「そんな日に、コンビニに行く?」
「・・・だね」

年齢は知っていたと思う。
何日か後の成人式の話をしたことがあったからだ。

「オーナーなりのやさしさだったと思う」
「・・・向こうに着いたら、これで一杯やろうか?」

そのコンビニはもう違う店に変わっているけれど。
S1008
(No.1008完)
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[No.1008-1]想い出のグラス

No.1008-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あっ!懐かしいな・・・」
「どうしたの?」

引っ越しあるあるかもしれない。
荷造りの最中に色々な物を見つけては手が止まる。

「えっ!ウィスキー?」
「じゃなくて、こっちの方だよ」

確かに箱にはウィスキーの写真が載っている。
けど、中身はその隣のグラスだ。

「グラス?」
「そう!非売品のな!」

もう、20年以上前の出来事だ。
若き日頃、とあるコンビニオーナーと親しくなった。

「コンビニ?」
「うん、独身だったからさ・・・」

夕食は近くのコンビニでお弁当を買って帰る毎日だった。
そのせいでオーナーのおじさんと親しくなった。

「今思えば、親心だったのかな?」

帰りは、かろうじて“当日”だったことも珍しくなかった。
そんな僕を不憫に思っていたのかもしれない。

「もし、息子がいたら」
「あなたくらいの年齢?」

そう考えるのが自然だ。
いくら常連客とは言え、飲み屋さんではあるまいし・・・。

「で、ある日・・・」

非売品のグラスセットをもらった。

(No.1008-2へ続く)

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[No.1007-2]揺れた心

No.1007-2

あれ以来、彼女との距離がグッと縮まったような気がする。
まぁ、僕の勘違いかもしれないが・・・。

「おはようございますぅ!」
「おはよう・・・」

挨拶も少し変わった気がする。
これも僕の勘違いかもしれないが。

「・・・なに?」
「ん?い、いや、おはよう!」

意味もなくもう一度、あいさつをしてしまった。

「じゃあ、また後で!」
「・・・と、いうほどの距離じゃないけどね」

あの日、二人だけが微かな揺れを感じた。
何らかの秘密を共有した・・・そんな気分になった。

「ほら、こっち見てないで仕事、仕事!」
「あぁ・・・だな」

つい彼女のことを考えてしまう。
まるで学生時代に戻った感じだ。

「・・・あれ?メールが届いてる」

送り主は彼女だ。
ついさっき送ったようだ。

「なぁ・・・」

そう言い掛けて、話しかけるのを止めた。
彼女の横顔が妙に照れているように見えたからだ。
S1007
(No.1007完)
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[No.1007-1]揺れた心

No.1007-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・ん?」

微かだが今、揺れた気がする。
そんな時、決まってキョロキョロするのが人間だ。

「あっ!」
「・・・えっ!」

少し離れた席に座っている女子社員と目が合った。

「だよね?」
「うん、多分」

彼女の方から声を掛けてきた。
もちろん、何を言いたいのかは分かっている。

「みんな気付いてない?」
「そうみたい」

彼女は単なる同僚だ。
比較的近くに席があってもさほど親しいわけでもない。

「ちょっと調べてみるね」

彼女がネットで地震速報を確認し始めた。

「・・・あったみたいね!」
「やっぱり!」

不思議とホッとする自分が居る。
勘違いの可能性もあったからだ。

「勘違いじゃなくて良かったぁ~!」

どうやら彼女も同じ心境だった。

(No.1007-2へ続く)

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[No.1006-2]読めないメモ

No.1006-2

「それなら、何か覚えてるでしょ?」
「それが・・・」

忘れないためにメモをとる。
でも、現実は忘れてもいいようにメモをとっている。

「一緒じゃないの?」
「いいや、後者は・・・」

メモに頼りすぎている面がある。
つまり、頭の中・・・記憶としては覚えていない。

「書いておけば安心!が裏目にでたのね」
「まぁ・・・そんな感じ」

気を取り直し、アレコレ考えてみる。
持って帰るもの・・・持って帰るもの・・・。

「・・・だめだ、思い出せないよ」

そもそも本当にそうなんだろうか?
メモと言うより、独り言を書いたとか・・・。

「そうね、何かのアイデアを書いたのかも?」
「無いとは言えないな」

そうなるともはや思い出すのは無理だろう。

「まぁ、生活に支障がないなら、それでもOKでしょ?」
「・・・そうだよな!」

後で響いてくる危険性はなくもない。
でも、どうせたいしたことないだろう・・・今はそう思うようにする。

「秋だから・・・」
「置き忘れた想い出を・・・なんて言わないでよね」

ロマンチストではないがそれも悪くない。

「とにかく、もう諦めるよ」
「そうね、ひょんなことから思い出すかもしれないし」

持って帰るもの・・・。
10年後、それが何か分かることになった。
S1006
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[No.1006-1]読めないメモ

No.1006-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ?何だっけな・・・」

あえて大袈裟に言ってみたい。
意味不明なメモほど役に立たないものはない。

「どうしたの?」
「いやぁ、手帳にメモしてあるんだけど」

それが何を意味しているか分からない。
分からないというより、思い出せないのが正解だろう。

「どこ?」
「ほら、ここに」

殴り書きで読めないわけではない。
文字としては余裕で判別できる。

「“持って帰る”って書いてあるね」
「何を?」

それが分からないから困っている。

「さすがに範囲が広すぎて」

せめて場所が書いてあれば大いにヒントになるのだが。

「おもしろくなって来たわね!」
「おいおい・・・」

明らかに目が輝いている。
いらぬ、スイッチを入れてしまったようだ。

「いつごろのメモなの?」
「そうか!確か・・・」

メモに日付は書いていない。
けど、何となく分かる。

「手帳は毎日開いてるから」
「2、3日前にはなかったはず」

そう考えると、ごく最近のメモということになる。

(No.1006-2へ続く)

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[No.1005-2]小さな世界

No.1005-2

「うぇ・・・」
「ただ、言うほどグロテクスじゃないよ」

その時、思った。
小さくても大きな世界がここにあると。

「神様ぽい発言ね?」
「なるほど!」

確かに、その世界を創造したのは私だ。
植物を植えたことで生き物が集まり、生態系が作られた。

「大げさだけど、その通りだね!」
「今じゃ、ベランダに出るのが日課」

植物を差し置いて、生き物たちに目が行ってしまう。
何か新しい“住人”はいないかと・・・。

「なんだか楽しそうね」
「そりゃ、もちろん!」

近くて遠かったベランダが、一気に近づいた。

「今度、お邪魔していい?」
「もちろん!生き物が平気ならね!」

聞くまでもなく、平気なのが友人だ。
むしろ、“好き”と顔に書いてある。

「女子では珍しい方かな?私たち?」
「だろうね、きっと!」

「おはよう!」

今日も小さな世界の住人たちに声を掛けてみる。
ザワザワ・・・と、アチコチから音がした。
S1005
(No.1005完)
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[No.1005-1]小さな世界

No.1005-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ベランダで植物を育て始めた。
特に大きな理由はない。

「強いて言うなら、殺風景だったからかな?」

洗濯物を干す以外、用がない場所だ。
近くて遠い、それがベランダだ。

「名言ぽく言わないでよね」
「あはは!かもね」

今では、ベランダが植物で彩られている。
その変わりようは自分でも驚くほどだ。

「それで、色々と気付くことがあって」

もちろん、植物に詳しくなった。
そして、もうひとつ・・・。

「もうひとつ?」
「そう!ある時ね・・・」

ミツバチがせっせと花粉を集めている場面に遭遇した。

「まぁ・・・珍しくはないよね?」

気付けば、もっと小さい何かもゴソゴソしていた。

「えっ!?なにそれ?」
「何だろう、アリのような小バエのような・・・」

この際、種類は気にしない。
小バエは遠慮したいところだが・・・。

「で、もっと隅々に目を向けたらね」

プランターの陰で、一匹のクモが網を張っていた。
そこには餌食となったであろう虫の死骸もあった。

(No.1005-2へ続く)

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