カテゴリー「(040)小説No.976~1000」の46件の記事

[No.998-2]続く命

No.998-2

「それはそれで残念ね」

毎年、夏になるとセミとの出会いがある。
出会いと言っても、ちょっと物悲しい出会いにはなるが・・・。

「そうね」
「あんなうるさい奴らだけど」

うるさい分、消え行く命が対照的だ。
毎年、そんな命と出会う。

「朝まで玄関先に居たかもね」
「・・・その可能性はあるわね」

私との出会いを果たす前に・・・というパターンだろう。

「けど、よく気付いたわね?」
「透明でしょ、羽って?」

そう・・・確かに注意しなければ分からないレベルだ。

「そうね、でもあの質感と形ですぐ分かったよ」
「さすが!」

もしかしたら、今年の出会いはこれだけかもしれない。

「セミがあなたに会いに来てたのかな?」
「なんで?」
「だって、玄関先までなんて、よっぽど・・・」

まぁ、その可能性も否定できない。
セミの世界では私は有名人なのかもしれない。

「有名人?」
「バカみたい!って言えないのが、あなたのすごい所よ」

とにかく、夏と共に何かと話題を運んでくれる奴らだ。

「それで、その羽は?」

プランターで育てているゴーヤの肥やしにした。
命が続いていくように願いながら。
S998
(No.998完)
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[No.998-1]続く命

No.998-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今来も来たわよ」

どうでもいいことを報告する自分が居る。
でも、嫌な気分じゃない。

「待ってました!」

そのどうでもいいことを心待ちにしている人も居る。

「で、今年はどこに?」
「今年はね・・・」

一風変わった出会いとなった。
いや・・・正確には出会ってはいない。

「玄関の・・・」
「玄関!?随分と親しくなったのね!」

話はまだ終わっていない。

「玄関は玄関なんだけど」
「羽だけが落ちてたんだ」

それも一枚というか片方の羽だけ。

「セミそのものは?」
「それが居なかったんだよね」

昨日、出かけようと玄関の扉を開けた。
すると、玄関前にセミの羽だけが落ちていた。

「いつもなら、壁にくっ付いてたり」
「床でひっくり返ってたりしてるんだけど」

今年はその姿はなかった。

「食べられちゃったとか?」
「・・・かもしれない」

マンションの7階だけに、アリは寄ってこない。
恐らく、鳥に食べられたんだろう。

(No.998-2へ続く)

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[No.997-2]兄弟ってそんなもの

No.997-2

「こんな絵を描いて大丈夫だったの?」
「多分、知らないと思う」

怒られたり、ケンカした記憶はない。
もし、見られていたとしたら、容赦なかったはずだ。

「そりゃそうでしょ!」
「私だって怒るわよ」

確かに縁起でもないだろう。
そもそも、なぜお墓・・・墓場を描く必要があったのだろうか?

「そうよね」
「心に闇でも抱えていたの?」

それに関しては否定も肯定もしない。
一風、変わった子供であったのは間違いないからだ。

「さぁ、どうだろうね」
「ただ、その絵が・・・」

のちに才能を開花させるきっかけになった。
自分でも言うのもおこがましいが。

「それと同じ感じで描いた絵が」
「結構、いい感じの賞をとったことがあって」

美術館で飾られたことがあった。

「うそでしょ!?」
「ほんとだよ」

もちろん、墓石でも墓場の絵でもなかったのは確かだ。

「どんな絵か覚えてる?」
「残念ながら・・・」

雰囲気は覚えているが、説明ができない。
あまりにも独創的だったからだ。

「でもさぁ、姉が喜んでいたのは覚えてる」
S997
(No.997完)
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[No.997-1]兄弟ってそんなもの

No.997-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なにこれ?」
「見ての通り、お墓だよ」

彼女が小さい頃に書いた絵を見ている。
絵と言っても、画用紙に殴り書きしている程度の絵だ。

「・・・これガイコツだよね?」
「そうみたいだな」

多分、幼稚園の時に書いたものだろう。

「墓場にガイコツ・・・か」
「子供にとっては鉄板ネタだろ?」

ある意味、そこが墓場だということが分かる。

「でもさぁ、子供って残酷よね」
「これ、お姉ちゃんの名前でしょ?」

絵に描かれた墓石らしきものを指差す。
そこに書かれている名前は、紛れもなく姉の名前だった。

「そうだよ」
「兄弟って、そんなもんだよ」

特別、姉が嫌いだったわけじゃない。
単なる悪ふざけのひとつに過ぎない。

「まぁ、当時は」
「悪ふざけとも思ってなかっただろうけど」

口悪く言れば、それが日常だった。
繰り返しになるが、兄弟ってそんなものだ。

「ふ~ん・・・そんなもんなんだ」

ひとりっ子の彼女には理解し難いのかもしれない。
兄弟の関係は。

(No.997-2へ続く)

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[No.996-2]コーヒーカップ

No.996-2

「うん、飲めないと言うか、飲まない」
「やっぱりトラウマだから?」

飲めるかどうかは別にして、確かにトラウマはある。
コーヒーカップ自体に。

「そうだね」
「何があったの?落として割って怒鳴られたとか?」

なかなか良い展開だ。
勝手に話が進んで行く。

「まぁ・・・そんなところかな?」
「うそばっかり」

(ん?・・・気付かれている?)

「う、うそじゃないぞ!」
「コーヒーカップにトラウマがあるのは確かだよ!」

トラウマになるくらいだ・・・かなり強烈に覚えている。
あの出来事を・・・。

「泣いたでしょ?」
「えっ!?なんで知ってんだよ!?」

あの日の事実を知っているのはごく身近な人だけだ。
僕の家族と当事者である、いとこの女の子だけだ。

「ビックリした?」
「そりゃ、するでしょ!?」

自分自身でもう一度確認する。
誰にも話したことは・・・絶対にない。

「これよ」
「それ・・・僕のアルバム・・・」

もしかして・・・。

「ほら、この写真」
「あっ・・・」

写真の傍らに、ご丁寧に書いてある。
トラウマの原因となるものが。

「読んでみたら?」
「・・・コーヒーカップで急回転されて号泣・・・」
S996
(No.996完)
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[No.996-1]コーヒーカップ

No.996-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、トラウマになってることある?」
「なんだよ、唐突に・・・」

まぁ・・・無いと言えば嘘になる。
と言うか、ひとつある。

「私はね!」

聞いてないのに自ら話始めた。
やんわりと僕を追い詰めているのだろうか?

「・・・で、あなたは?」
「君の話で十分だろ?」

でも、これでプールや海に行きたがらない理由が分かった。
それなら、トラウマにもなるだろう。

「なに言ってんのよ」
「私の話は前座なの!」

いつの間にかハードルが上がっている。
そもそも、そんな感じでスタートしていないはずなのに。

「まぁ、その・・・」
「早く言っちゃいなさいよ!楽になるわよ」

まるでカウンセラー気取りだ。

「・・・コーヒーカップ」
「コーヒーカップ?」

そう・・・僕のトラウマはそれだ。
ただ、悔しいからちょっとからかってやろう。

「そう言えば、コーヒー飲めなかったよね?」
「あぁ」

飲めない理由は他にある。
だけど、だますなら今はこの方が都合がよい。

(No.996-2へ続く)

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[No.995-2]バナナの先っぽ

No.995-2

「飲食店でバイトとかしてたの?」
「いいや」

それなのにこの出来栄えだ・・・。
よほどセンスの持ち主とみていいだろう。

「言っとくけど」
「他の料理は作れないからな」

もちろん、私へのけん制じゃないのは分かってる。
でも、どうしても言ってみたい言葉がある。

「やれば出来るんじゃない?」
「そう来ると思ったよ!」

本気で彼の手料理を食べてみたい気になった。
いや、いっそのこと料理人になってもらったほうが・・・。

「料理人?冗談だろ?」
「・・・でも、悪い気もしないな」
「でしょ!」

そうしたら、いつでもご馳走にありつける。

「こら!調子に乗るんじゃないぞ」
「ばれた?」

ただ、その素質は十分あると思う。
それに味だけじゃなく、彼のやさしさがうれしい。

「いつものバナナも置いとくぞ」
「ありがとう!」

あらためて、バナナを確認する。
いつもの通り、剥きやすいように先端に切れ目が入っている。

「なんだよ?ニヤニヤして」
「ううん、何でもないよ!」

バナナの先っぽをつかむ瞬間が好きだ。
S995
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[No.995-1]バナナの先っぽ

No.995-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「いつも悪いわね」
「いいよ、休みの日くらい」

最近、週末は彼と過ごすようになった。

「料理が得意だって知らなかったよ」
「料理?そんな大袈裟なものじゃないよ」

ある時、彼が朝食を作ってくれた。
目玉焼きに、ウィンナー・・・そしてサラダ。

「味よ、味!」
「なんかひと工夫されてるって感じ」

単なる目玉焼きだって何かが違う。
ホテルで出てきそうな見た目と味だ。

「そう?」
「まぁ、ちょっとでも美味しく食べるための知恵さ」

そのひと手間がうれしい。
特に私のような根っからの大雑把な女には。

「あーお腹すいたな!」
「おいおい、寝坊しといてそれかよ?」

彼が笑いながらやさしく応えてくれる。
甘えている自分・・・以前の私ならこうはいかなかった。

「もうすぐ出来るからさ!」
「まてないぃー!」

思う存分、ワガママを言ってみる。
一番、幸せな時間だ。

「お待たせ!」
「わぁ、美味しそう!」

定番だけど、何度食べても飽きがこない。
まぁ、だからこそ定番なんだろうけど・・・。

(No.995-2へ続く)

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[No.994-2]幸せな時間

No.994-2

「じゃぁ、たこ焼きは?」
「覚えてるよ、ソフトクリームも売ってたろ?」

ここに来る楽しみでもあった。
たこ焼きをほおばり、ソフトクリームで締めくくる。

「ほんとそうだよね」
「・・・幸せな時間だったな」

そんな店も今は跡形もなく消え去っている。

「そうそう!俺はいつも箱詰め係りでさぁ」
「私もそう!」

適当なお客用のダンボール箱を見つけてくる。
そこに品物を詰める。

「思い出は尽きないね」

周辺もそれなりに変わった気がする。
でも、特徴的に曲がった道路はいまも健在だ。

「そうだ!この辺りに自販機があったの覚えてる?」
「もちろん!」

今の時代、自販機など珍しくもない。
それは当時だってさほど変わらない。

「最近はあまり見掛けない紙コップ式だったろ?」

実はもうひとつ、重要な事実がある。

「昔の店舗の・・・その前って知ってる?」

記憶に薄っすらと残っている。
失礼な言い方だが、倉庫のような薄暗い建物だった。

「・・・知ってる」
「俺たちそんな歳だったっけ?」

幼なじみが笑っている。
その姿は今も昔も変わらない。
S944_20200718234301
(No.994完)
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[No.994-1]幸せな時間

No.994-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「なんか随分と様変わりしたな」
「そりゃそうよ、もう・・・年も経ってるからね」

ここにはかつて、大型スーパーがあった。
全国的に有名なあのスーパーの前身の店舗だ。

「何か、見通しが良くなったというか・・・」
「そうね、2階がなくなったからね」

1階が主に食料品で、2階が日用品の売り場だった。
2階には本屋やレコード店もあった。

「よく覚えてるね?」
「そりゃそうさ」

特にレコード店なんてそう多くはなかった時代だ。
始めて買ったのもこの店だった。

「まぁ、カセットテープだったけどな」
「確か、階段を上がったところだったよね?」

それは間違いない。
ただ、ちょっと変わった構造だった記憶がある。

「そうなんだけど・・・」
「階段が交差してなかった?」

通常、階段はその場所にひとつしかない。
エスカレーターと違い、上りと下りを分ける必要がないからだ。

「そう言われてみれば・・・」

丁度、階段の真ん中で別の階段に居る人に手が届く。
中には乗り越えようとするやつもいた。

「ほら、俺たちも・・・」
「・・・というより、あなたでしょ!?」

何がどうしたというわけではない。
昔は、こんな程度でも十分、遊べたものだ。

(No.994-2へ続く)

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