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[No.1329-2]行ってきます

No.1329-2

「瞬間?」
「何にもなさそうだけど・・・」

そう・・・僕も全く予期していなかった。
それだけに驚いたし、嬉しくもあった。

「言われたんだよ」
「そのおばさんに」

ゴミ捨て場を去ろうとした時だ。
僕を見つけてこう言った。

「“行ってらっしゃい”と」
「・・・」

ごく普通の挨拶だ。
でも、僕にとっては嬉しかった。

「・・・なるほどね」
「意味が分かったわよ」

もちろん、言葉は嬉しかった。
でも、それ以上に声を掛けてもらえて嬉しかった。

「お母さんを思い出した?」
「・・・まぁな」

母に言われたような気がした。
その瞬間。

「それで、あなたは?」
「もちろん!言ったよ」

“行ってきます”と。
何の迷いもなく。
J1329
(No.1329完)
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