2024年12月
[No.1302-1]いちぐんのいち
No.1302-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「やっぱ・・・」
「いちぐんのいちじゃないとね!」
前から気になっていた。
この“いちぐんのいち”という言葉が。
「それってさぁ、昨日の話?」
「そうだよ」
昨日、何かのスイーツを買いに行ったと聞いた。
かなり人気で売り切れ必至とも聞いていた。
「買えたの?」
「もちろん!」
どうやら無事に買えたらしい。
「相当並んだんじゃない?」
「そうだよ」
聞けば100人以上が並んでいたらしい。
開店2時間前にもかかわらず。
「恐るべし・・・だな」
「ところで何番目だったの?」
その途端、表情が曇った。
気に障ることを言ってしまったようだ
ホタル通信 No.591
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
特別編
No.541ぶりの特別編です。さて、何が特別かと言うと小説のナンバーが1300を超えたことです。
1000話を一区切りだとすれば、2周目に向かって約3分の1経過したことになります。最初は100話すら危ぶまれた船出でしたが気付けば1000話を超えて、次なる目標に向かおうとしています。ただ、2週目に・・・とは書きましたが、2000話にはほど遠いタイミングで一旦区切りを付けるつもりです。話数で言えば、No.1500~1600くらいで着地するのではないかと考えています。
振り返ると、よくもまぁここまで続けたな・・・と我ながら感心しています。例えは微妙ですが、漫画家の絵が連載初期と後期では違うのと同じで、私の作風も昔と今では変わってきました。テーマ自体は大きく変わってはいませんが、扱うネタと言いますか、話の主軸となるものの幅が広がったような気がします。
特に母親が他界してからは、その傾向が強まりました。ただ最近は、ネタに苦労しているのも事実で、何度か書いている通り、感性が鈍っています。それでも、何とかやり繰りしてようやく続けられているのが現状です。
次の特別編は小説がNo.1400を超えた時に書きたいと思いますが、果たしてそこまでたどり着くことができるのか・・・どうぞ、温かく見守っていただければ幸いです。
[No.1301-2]遊びの天才
No.1301-2
「すごいと思わない?」
「自然とゲーム性を作り出してる」
確かにそうだ。
特に意識してやっているわけではないだろう。
「子供ってさぁ」
「そんなとこあるよね?」
思い返せば私たちもそうだったかもしれない。
そもそも遊びは子供たちが発明したはずだ。
「ボールを投げてもなかなか入らない」
「そこに面白味を見出している」
ある意味、子供は遊びの天才かもしれない。
それもひとりやふたりではなく、みんなが。
「・・・その後が気になる」
「私もw」
あの調子ではしばらく掛かるだろう。
でも、それが遊びの裏の目的でもあるだろう。
「裏の目的か・・・」
「上手いこと言うわねw」
そうそう入らないから面白い。
また、過ごす時間も楽しい。
「でも、子供だけじゃないわよ」
「遊びの天才は」
・・・そういうことか。
今、私たちも一種の遊びの最中だ。
(No.1301完)
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[No.1301-1]遊びの天才
No.1301-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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「今の見た?」
友人が何気なく声を掛けてきた。
状況からすると、どうやらアレのことみたいだ。
「ボール遊びしてた子供?」
「そうそう!」
でも、とくに変わったところはなかった。
男の子が二人で遊んでいた。
「ほら、二階のベランダに向けて」
「大きなボールを投げてたよね?」
確かに投げていた。
わいわいがやがやと。
「あれってさぁ」
「ベランダに入れようとしてたんだよ」
それは私にも分かる。
下からボールを投げていたからだ。
「でもさぁ、変だと思わない?」
「入れるなら、もっと良い方法があるのに」
そう言えば少し不自然だった。
入れるつもりなら、もう少し遠くから狙えばいい。
「そうなんだよね」
「真下から投げたら入らないよ」
それに投げると言っても野球のようではない。
ボールを押し上げるように投げていた。
[No.1300-2]怖いものなし!
No.1300-2
「てんとう虫?」
「どうだろう?」
確かにそれっぽい大きさで丸っこい。
ただ、知っているあの模様が見えない。
「まっ黒だよね?」
「うん・・・」
正体不明の虫をつまんだりしている。
片手に中華まんじゅうを持ちながら。
「食欲より興味が優先だねw」
「あははwそうみたい」
それにしても子供は無敵だ。
何だか分からない虫でも平気で触れる。
「だよね」
「私は絶対無理!」
それは私も同意見だ。
「それに触った手で・・・」
まんじゅうを頬張る。
「あはは・・・」
「さすが・・・子供!」
少々汚れた手でもお構いなしだ。
ほんと、たくましい。
「でも私たちもそうだったよね」
[No.1300-1]怖いものなし!
No.1300-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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「うまっ!」
「でしょ!」
古くからの友人が遊びに来た。
遠路はるばる。
「ここ有名な店なのよ?」
「この行列を見たら言われなくても分かるw」
確かに購入するまで少なくとも30分は掛かる。
今日はまだ行列が少ない方だ。
「ここの中華街は初めてだよね?」
「うん、横浜は行ったことあるけど」
規模こそ全然負けている。
でも、少しの時間で全てを見て回れる手ごろ感がある。
「ほんと美味しいね」
「この中華まんじゅう」
中華街の一番人気がこれだ。
私も来るたびに口にしている。
「ん?」
「どうしたの?」
それを頬張りながら友人が口を突き出す。
どうやらすぐそばの子供のことみたいだ。
「見てよw」
「何してるの・・・虫?」
座り込んで地面を凝視している。
その目線の先に一匹の小さな虫がうごめいていた。
ホタル通信 No.590
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.654 おばあちゃんの記憶
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性
ほぼ事実な小説です。小学生の時、母が入院し、その代わりに祖母が家に来てくれました。
来てくれました・・・とあっさり書きましたが、当時、祖母は長崎、我が家は兵庫・・・なかなかの距離です。入院は数日だったので来る必要もなかったように思えますが、私を含めて3人の子供が居たことを考えるとそうなるのかもしれません。さすがに父親だけでは何とも出来なかったのでしょうね。
そんなとっても有難い状況でありながら、駄々をこねたりしたことを今でも覚えています。小説に書いてある通り、寂しさを紛らわせたかったのか、単に甘えたかったのか・・・そこに関しては記憶が残っていません。結局、感謝の気持ちを伝えることなく、母が戻り、学校に行っている間に祖母は長崎に帰って行きました。子供ってある意味、残酷ですよね、守られて当たり前・・・ありがとうの一言も言えないなんて。子供の頃の記憶がだんだんと薄れていく中でいまだに覚えています、この経験を。
[No.1299-2]失われた言葉
No.1299-2
「えっ!?」
「ここまで盛り上げておいて違うわけ?」
確かにダイヤルする・・・も失われた言葉だ。
でも、それ以上の言葉がある。
「そりゃ、時代が変われば」
「いくつもあるんじゃない?」
そうだとしてもこれが一番だと思う。
スマホの登場でそうなったと言っても良い。
「やっぱり、なぞなぞじゃんw」
「かもしれないw」
スマホの登場で時間と距離の概念が変わった。
時間と距離はもう恋の障壁とは言えない。
「なになに!?」
「何だか壮大な展開じゃん!」
その昔は、せいぜい声が聞ける程度だ。
寂しさを紛らわすために。
「で、その言葉って?」
「教えないw」
でも、本当は失われた言葉ではない。
言いたくない・・・その言葉を。
「・・・何となく分かった」
[No.1299-1]失われた言葉
No.1299-1
登場人物
女性=牽引役 女性=相手
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大袈裟だけどあえて言う。
それは失われた言葉だと・・・。
「何それ」
「なぞなぞ?」
ひと昔前の歌詞によく出てくる言葉。
ダイヤルする、ダイヤルする手を止める。
「昔は黒電話だったからよね?」
「そうだね」
もちろん、スマホでもおかしな表現ではない。
数字をタップすることもダイヤルだ。
「でも、やっぱりダイヤルと言えば」
「回すことだよね?」
数字によって戻ってくる時間が変わる。
その間が色々なドラマを生む。
「随分、ロマンティックな話をするのね」
「それも昔々のw」
戻ってくる間に色々と考える。
だから、ダイヤルする手を止めることもある。
「経験談?」
「かもねw」
でも、これが本命ではない。
失われた言葉は。
[No.1298-2]すばらしい世界旅行
No.1298-2
「好奇心旺盛だろ?」
「子供ってさ」
どんどん引き込まれていったことを覚えている。
それに吸収も早い。
「わかる!」
「まるでスポンジのようだもんね」
上手い例えだ。
覚える気がないのに覚えている。
「内容もさることながら」
「実は・・・」
もちろん、懐かしいのは番組の内容だ。
でも、それ以上に記憶に残っているものがある。
「それ以上?」
「テーマ曲・・・って言えばいいのかな?」
歌ではないので主題歌ではない。
番組の冒頭に流れる音楽だ。
「番組ごとに曲があって」
「どれもこれも名曲なんだよな」
当時は何も思わなかった。
「そんなものじゃない?」
「記憶に残ってこそ名曲よ」
その曲を聞くと当時のことを鮮明に思い出す。
[No.1298-1]すばらしい世界旅行
No.1298-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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「・・・懐かしい」
動画サイトで昔のテレビ番組を特集していた。
どれもこれも懐かしい。
「全然、知らないw」
「だろうなw」
僕が子供の頃のかなり昔の番組だ。
でも、単に昔の番組だから懐かしいわけではない。
「理由があるの?」
「あるよ」
子供向けではない。
でも、子供心をくすぐる番組でもある。
「どっちなのよw」
「どっちも正解!」
いわゆるドキュメンタリー番組だ。
動物あり、世界の不思議あり・・・の番組だ。
「なるほどね」
「それなら納得」
今と違ってテレビが全ての情報源だった。
そこで見るもの語られるもの・・・それが全てだ。
「大袈裟だけどね」
「あははw」
超硬派な番組だ。
動物番組とは言え、今のようなほのぼの系ではない。
ホタル通信 No.589
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.677 今、この経験が・・・
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性
タイトルだけでは思い出せなかったのですが、読み直してみると「あ~これね!」と鮮明に覚えています。
全体的な流れはほぼ実話んですが、前半、話しかけてきた女性は若い人ではなく、実はご高齢の方でした。
ですから、彼と遠距離うんぬんは創作です。実際は何らかの用事で東京に出掛けており、その帰りだったようです。ただ、私としては小説に書いてある通り、大阪までの時間、ゆっくり寝たかったのですがw
色々話している中で、その女性がご主人が好きだと言うと食パンをお土産として買った話になり、その後、小説の後半に書いてある通りの展開になりました。
当ブログの神髄のような小説です。小説のネタとしては申し分ない出会いであり、小説のタイトルの通り、この経験がまさしく小説のネタになりました。こんな出会いが毎日続けばネタには困らないでしょうね。
最後にもうひとつエピソードを。前述した食パンですが、ご主人のために2斤、買ったそうです。ですが、お礼として1斤いただきました、見ず知らずの女性からw
[No.1297-2]違う景色
No.1297-2
「景色を知った?」
「うん」
先週、実家に帰った。
その時、ふとある行動を思い付いた。
「で、その行動って?」
「座る場所を変えたの」
食卓テーブルの座る場所を変えた。
今まで母が座っていた場所に。
「私が南だとしたら母は北」
「お互い対面していたの」
だから、場所を変えると見える景色がまるで違う。
同時に母が見ていた景色を知った。
「それだけなんどけど」
「いつもこんな景色を見てたんだって」
見慣れた部屋なのに初めてような感覚だった。
でも、よく考えればこうして見るのは初めてだ。
「そう言われたらそうよね」
「私も座る場所は決まってた」
家族とはそう言うものだ。
別にルールがあるわけでもないのに。
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