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[No.1293-1]嗚咽

No.1293-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
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泣いたことは何度もある。
でも、嗚咽したことは一度しかない。

「いつ?」
「母が亡くなった時」

でも、亡くなった瞬間ではない。
葬儀の前に・・・だ。

「葬儀が始まる前に」
「弟から手紙を渡されて」

それは母からの手紙だった。
そこには僕にあてた思いが綴られていた。

「それを見た瞬間に・・・」

それまで堪えていたものが崩壊した。
それが嗚咽となった。

「それならそうなるよね」
「初めての感覚だったな・・・」

泣くのとは違う。
それこそ、腹の底から何かを吐き出すようだった。

「だからその手紙は」
「もう一度、開けられないw」

考えるだけで涙が溢れる。
そこに色々な想いが巡るからだ。

「自分の死期は知ってたみたい」
「僕たちは隠していたつもりだったけどね」

手紙にもそう書いてあった。
熱があり、上手く書けない状態でありながら。

(No.1293-2へ続く)

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