[No.1293-2]嗚咽
No.1293-2
「それでも達筆は」
「変わらずだったけど」
多少の文字の乱れがあった。
でも、力強く書けていた。
「母は強し?」
「あぁ、本当にそう思った」
自分のことより子供のこと。
本当は自分が一番不安なはずなのに。
「それが母親ってものよ」
「説得力がありすぎるw」
その手紙は傍らに置いてある。
形見の帽子と共に。
「いつか・・・また開いてみるつもり」
「・・・そうだね」
勇気がないのではない。
大事にしたい・・・上手く言えないけど。
「うんうん、分かる」
大事にしたいけど箪笥の奥に眠らせておく気はない。
「そうだね」
「その方がいいと思う、私も」
彼女の母親はすでに他界している。
母親だけでなく父親も。
「次に開ける時、教えて」
「どうして?」
| 固定リンク | 0
「(051)小説No.1276~1300」カテゴリの記事
- [No.1298-2]すばらしい世界旅行(2024.12.05)
- [No.1298-1]すばらしい世界旅行(2024.12.04)
- ホタル通信 No.589(2024.12.03)
- [No.1297-2]違う景色(2024.12.01)
- [No.1297-1]違う景色(2024.11.30)
コメント