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[No.1280-2]あの日の私

No.1280-2

「父は町内会の男性陣と共に・・・」

決壊寸前の土手を補強しに出掛けて行った。
これも後で知った。

「いまじゃあり得ないな」
「ほんと」

今の時代は全くの逆だ。
近づくのではなく、遠ざかるのが基本だ。

「私なんか避難してるはずなのに」
「キャンプ気分だったよ」

そんな頃、父たちは台風と戦っていた。
思い出すと胸が痛む。

「子供だから仕方ないだろ?」
「そうなんだけど」

幸いなことに台風はそれ以上大きくならずに済んだ。
そして土手も決壊を免れた。

「翌日の午後には家に帰れたんだよね」
「私の中では残念だったけど」

今思うと不謹慎極まりない。
いくら子供だとは言え。

「それもひとつの経験だよ」

無事に台風が通り過ぎるのを祈るだけだ。
J1280
(No.1280完)
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