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2024年9月

[No.1283-1]ボス猫の心変わり

No.1283-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ん?」

今日はやけに距離が近い。
それにいつもより逃げるスピードも遅く感じた。

「ボス猫?」
「私がそう呼んでるだけ」

住んでる集合住宅に一匹の野良猫が棲みついている。
野良猫と言えども我々が思うそれとは違う。

「いわゆる日本猫じゃなくて」
「なんて言えばいいのかな」

飼っていたとすればまさしく血統書付きの猫だ。
毛並みも優雅で、お嬢様の気品がある。

「オスかもしれないけどw」
「あははw」

なのにボス猫と呼んでいる。
そんな風格を持ち合わせているからだ。

「それが今日・・・」

駐輪場でバッタリと出会った。
でも・・・。

「逃げないんだよね」
「距離にして2メートルくらいだったのに」

警戒心が強く、近付くことさえ許してくれなかった
それなのにいきなり距離が縮まった。

(No.1283-2へ続く)

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[No.1282-2]空が地で地が空で

No.1282-2

「幻想的と言うより・・・」
「厳かな雰囲気を感じる」

まるで天と地が入れ替わったようだ。
それこそ神の力で。

「まぁ、そんな気にもなるわね」
「でしょ?」

神の怒りに触れ右往左往する人間たち。
私達は今、その中に居る。

「・・・詩人を超えた?」
「もちろんw」

不思議と夕日はそんなことを思わせてくれる。
見慣れているはずなのに。

「ずっと見てられるわね」
「うん、でも・・・」

もう少しすれば夕日は水平線に隠れてしまう。
だからこうしていられる時間は限られる。

「ねぇ、こうしない?」
「なに?」

友人が見慣れない格好をしている。

「こうしたら本当に天地が逆になるよ!」
「それって・・・」

天橋立の股覗きのごとく。
J1282
(No.1282完)
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[No.1282-1]空が地で地が空で

No.1282-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
陽が落ちるのが早くなってきた。
その関係で空は様々な表情を見せる。

「何なのその詩人風のセリフはw」
「詩人風とは失礼ね」

自分では詩人だと思っている。
もちろん、自称だが。

「まぁ、それはそれで」
「表情がどうしたって?」

少し前まではこの時間でも明るかった。
でも今は、家に着くころには陽が落ちている。

「ちょうど夕日が見えるよね」
「・・・なんだそれだけ?」

友人と言え、時々殴りたくなる。
本気半分、冗談半分だが。

「こわっw」
「怖くもなるでしょ!?」

ただ、そんなことも吹き飛ぶ光景が広がっている。
今、目の前に。

「すごくない?」
「確かにあまり見かけない空ね」

凸凹した薄めの雲が夕日に照らされている。
まるでそこに地面があるようだ。

(No.1282-2へ続く)

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ホタル通信 No.581

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No543 彼の家
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

この小説は事実と創作が入り乱れた形式になっており、事実に基づいて話が進みつつ、創作が随所に散りばめられています。

それともうひとつ、小説では彼女が彼の家を・・・となっていますが、これが事実か創作か考えながら読んでみるのも面白いですよ。つまり、小説上の私(女性)は作者なのか、あるいは彼が作者なのか・・・。
さて、最寄駅から見える彼の家は事実であり、電車に乗っている時に「あれが僕の家だよ」と教えてもらいました。その時は「そうなんだ~」程度しか考えていませんでしたが、それが後々尾を引いて知りたくなる衝動に駆られるとは思いませんでした。もちろん、そこに未練があるとかないとか、そんなことではありません。単なる好奇心に過ぎません。

今でもたまにその最寄駅を通ることがあり、その都度、遠くを見ているのですが、当時とは見える景色が少し違っているように感じます。
尚、彼が独身だという情報が出てきますが、これについては創作で、何の情報も持ち合わせていません。

青春時代と言いますか、それこそ遠い昔の思い出です。ただ、そんな思いにふけてみたい、そんな夜もあるでしょう、大人になればなるほど。
Jt581
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[No.1281-2]未来か過去か

No.1281-2

「まさか」
「私たちの未来・・・ってベタな展開?」

それについては否定しない。
そうなれたら・・・という願望はある。

「まぁ・・・な」
「あら、そうなんだw」

さっきから少しからかい気味の彼女がいる。
それこそ、何を考えているのだろうか。

「悪くはないね」

意外な言葉が返ってきた。

「意外とはなによ?」
「ダメなわけ?」

そうではない。
彼女も遠い未来を見ていたことに驚いただけだ。

「その時はあの老夫婦のように支えるさ」
「そう・・・ならお願いしようかな」

その時、偶然にも老夫婦が振り向いた。

「えっ!?」
「聞こえたの!?」

そんなことはないだろう。
距離もあるし、失礼ながら聴覚も衰えているはずだ。

「でも・・・」
「自分たちの過去を見たのかもね」
J1281
(No.1281完)
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[No.1281-1]未来か過去か

No.1281-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------

「なに見つめてるのよ?」
「あ、いや・・・」

少し離れた先に老夫婦の背中が見える。

「老夫婦?」
「夫婦とは限らないでしょ?」

彼女の疑問はもっともだ。
でも、僕にはそう見える。

「随分、自信があるわね」
「根拠はあるの?」

正直、根拠はない。
女性の背中に手を回す男性の姿がそう言わせる。

「あの雰囲気は」
「兄弟では出せないよ」

思いやりにあふれた手だ。
女性を支え、行く道に灯りを灯す。

「へぇ~」
「すごい観察力ね!」

雰囲気的にはちょっとした散歩なんだと思う。
陽が大きく傾く前に・・・と言ったところだろうか。

「で、何を考えてるの?」
「いや・・・それは・・・」

答えに困る。
考えてないからではなく、考えているからだ。

(No.1281-2へ続く)

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[No.1280-2]あの日の私

No.1280-2

「父は町内会の男性陣と共に・・・」

決壊寸前の土手を補強しに出掛けて行った。
これも後で知った。

「いまじゃあり得ないな」
「ほんと」

今の時代は全くの逆だ。
近づくのではなく、遠ざかるのが基本だ。

「私なんか避難してるはずなのに」
「キャンプ気分だったよ」

そんな頃、父たちは台風と戦っていた。
思い出すと胸が痛む。

「子供だから仕方ないだろ?」
「そうなんだけど」

幸いなことに台風はそれ以上大きくならずに済んだ。
そして土手も決壊を免れた。

「翌日の午後には家に帰れたんだよね」
「私の中では残念だったけど」

今思うと不謹慎極まりない。
いくら子供だとは言え。

「それもひとつの経験だよ」

無事に台風が通り過ぎるのを祈るだけだ。
J1280
(No.1280完)
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[No.1280-1]あの日の私

No.1280-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
台風の季節になると思い出すことがある。

「想い出?」
「微妙な想い出だけどねw」

小学生の時、大きな台風がやってきた。
今まで経験したことがないレベルの。

「そんなに人生生きてないけどね」
「当時、小学生だもんな」

実家のすぐそばに大きな川が流れていた。
それも2本もの川が。

「たしか、川に挟まれたよな?」
「そうだよ」

その川の土手が決壊寸前になったらしい。
それを後から聞いた。

「そんな状態だったから」
「避難することになったんだよね」

通っていた小学校に避難した。
家族と共に。

「とは言っても父は避難しなかったんだけど」
「えっ?なんで?」

それについては時代が時代だったと思う。
そんな言葉で片づけたくはないけど。

(No.1280-2へ続く)

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ホタル通信 No.580

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.692 息苦しい
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

話の主軸である猫の話は本当です。ただ、経験上、そうだったということであり、実際にこのような会話が交わされたわけではありません。

さて、この小説、一言で表せば神秘的な話で進んでいるかと思わせながらラストでいきなりコメディで終わります。こんなパターンは何度か作ってはいますが、ラスト1行だけ・・・というのは初めてかもしれません。
ネコって、私が寝ている時に胸の上に乗ってきたり、脚と脚の間のくぼみにスッポリと収まっている時もあります。なんでわざわざ・・・と言いたくなることもありますが、そこがまた可愛いくて、そのまま朝を迎えてしまいます。

ところで神秘的な部分ですが、これについては創作なので、実際に起こったり、夢を見たり・・・ということはありません。ただ、別の夢なら見たことがあります。まぁ、夢ですから、そんなこともあるでしょうね。
前述したように、神秘的でちょっと胸が熱くなりそうな話と見せかけて、その正体は彼の足だったというオチで結構お気に入りの小説のひとつです。

随分昔に旅立ってしまったネコですが、今でも思い出すことがあります。だって、夢の中に ・・・w
Jt580
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[No.1279-2]愛車

No.1279-2

「次の車は・・・」

まだ決まっていない。
最大の理由は気に入った車がないからだ。

「最近のはなんか、さぁ」
「あなた好みじゃないわねw」

彼女も僕の好みをよく分かっている。
だからこその発言だ。

「焦らなくても」
「そのうち現れるわよ、素敵な車が」

確かに焦る必要はない。
高い買い物でもあるし。

「しばらくは歩きだなw」
「だねw」

それはそれで楽しい。
そもそも、車があっても歩いていたからだ。

「だから、別に何も変わらないよ」

その言葉で救われる気がした。
大袈裟だけど。

「そうと決まったら歩くわよ!」
「おう!」

威勢よく歩き出す、二人の未来に向かって。
J1279
(No.1279完)
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[No.1279-1]愛車

No.1279-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
長年、乗っていた愛車を手放した。
思いのほか、修理代が掛かったからだ。

「デザインが好きだったんだよな」
「私も好きだったよ」

角ばっているとか丸みがあるとかではない。
一言で表すと無骨なんだ。

「面構えが良いよね!」
「そうそう!」

彼女もそこがお気に入りだった。

「でもさぁ・・・」
「手放すの・・・寂しな」

まるで人との別れのようだった。
たかが、車を手放すだけなのに。

「それだけ愛してたってことでしょ?」
「・・・まぁな」

彼女と付き合い始めた時にこの車を買った。
車の歴史は彼女との歴史でもある。

「まぁ、お疲れ様ってことで」
「そうだな」

廃車になるわけじゃない。
だから、次の持ち主の手にわたることになる。

(No.1279-2へ続く)

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[No.1278-2]石をめくる

No.1278-2

「本当は見つけた時より」
「見つけるまでが楽しいんだよな!」

なにが居るのか、なにが出てくるのか・・・。
お金を掛けずにできる最高の遊びだった。

「ワイルドだねw」
「それで、何かを見つけたら?」

それを捕ったりすることはない。
ただ、眺めているだけだ。

「それなら探す意味ないじゃんw」
「それがいいんだよ」

繰り返しになるが見つけるまでの時間が楽しい。
捕ってどうこうしようとは思っていない。

「それに・・・」
「・・・それに?」

石をめくって出てくる生き物はそれなりだ。
カブトムシが出てくるわけじゃない。

「ダンゴムシに失礼よw」
「かもなw」

大した生き物は期待できない。
けど、それも含めて石をめくる。

「宝探しの要素もあるんだろうね」

あの子供も自分だけの宝物を見つけたかもしれない。
J1278
(No.1278完)
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[No.1278-1]石をめくる

No.1278-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ん?落とし物したのかな?」

彼女が前方を指さして言った。
そこには小学生らしい男子が居た。

「・・・違うよ」
「なんで分かるのよ!?」

その小学生は原っぱの石をめくっている。
次から次へと。

「どう見ても探し物でしょ?」
「まぁ、探してるのは間違いないけどね」

落とし物をしたから探しているわけじゃない。
それは自信をもって言える。

「それじゃ・・・なにを探してるの?」
「生き物だよ」

虫か爬虫類のたぐいだろう。
そう言えばダンゴムシもよくそこに居た。

「・・・生き物探してるんだ」
「小学生あるあるだよ」

僕もああやって石をめくった。
やや湿った土の匂いを今でも覚えている。

「あっ!動きが止まった」

なにか生き物を見つけたらしい。

(No.1278-2へ続く)

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ホタル通信 No.579

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.685 同じ匂い
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

もはや定番中の定番である恋愛を絡めた小説ですね。さらに匂いをテーマにしており、これもかなり定番と言えます。

なぜ、匂いがテーマになりやすいのか・・・自分自身で分析するとこうだと考えています。匂いは記憶と結びつきやすと。現実的には視覚や聴覚情報の方が記憶には残りやすいとは思っています。ですが、匂いと言うかなり不確かな情報であっても、ちゃんと脳は覚えており、不確かゆえ、思い出した時のインパクトは大きなものがあります。

この小説はそこまでは行きませんが、匂いを軸にちょっとだけ、色気がある話に仕上げています。ただ、舞台は学校ですから、まぁ、青春の1ページのようなさわやか系です。小説では、同じクラスになって1年も経つのに、彼とまともに話したことがない・・・でも、不思議と彼と話したくなった。実はこれ、適当に作っているわけではなく、実はある意味を持たせています。なぜ、急に彼に惹かれたか、その答えも匂いにあります。

今朝、香った匂いが教室の中でも微かにする・・・その香りをたどると・・・みたいな感じですね。同じ感覚を持った同士がくっつかないわけはないでしょうw
Jt579
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[No.1277-2]夏休みの終わり

No.1277-2

「私、飽き性なんだよね」

正確には言えば熱しやすく冷めやすい。
いや・・・熱する前に冷めているかもしれない。

「構想だけは立派なんだけど」
「形にはならない」

思えばここからもう始まっていたのだ。
今の私を形作るものが。

「・・・分かるw」
「納得しないでよw」

やりたいこと、したいことは山ほどある。
でも、なかなか実行に移せないでいる。

「アイデアはいいんだけどね」
「はいはい!自覚してますぅ!」

多くの小学生が大きな荷物を抱えている。
彼らは一体何を作ったのだろうか?

「聞いてみたら?」
「通報されるわよw」

ひとつ言えることはある。
彼らの発想は無限大だ。

「私たちの比じゃないことは確か」
「だろうね」

アイデアを形にする・・・。
大人になればなるほどそれが難しくなるのだ。
J1277
(No.1277完)
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[No.1277-1]夏休みの終わり

No.1277-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・今日からなんだ?」
「そうみたいね」

久しぶりに小学生の集団とすれ違う。
その表情は様々だった。

「私も1ヶ月くらい休みが欲しい!」
「私もw」

会社員には無理な話だ。
1週間でさえ、ままならないのが現実だ。

「でもさぁ」
「休み明けあるあるだよね?」

同僚がある小学生を指さす。
大きな紙袋を持った小学生を。

「あるある?」
「自由研究の作品が入ってるんじゃない?」

その言葉で思い出した。

「あぁ・・・なるほどね!」
「私たちの時代もあったよね?」

あったのはあった。
けど・・・。

「けど?」
「うん、何を作ったのか・・・」

何を作ったのか、何を観察したのか・・・。
肝心なところは覚えていない。

(No.1277-2へ続く)

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