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[No.1276-1]命を運ぶ

No.1276-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
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「・・・」

どうやらまだ生きているようだった。
わずかだけど動いているのが確認できる。

「おはよう!」
「今日は随分遅いじゃない?」

クラスで一番来るのが遅い友人に言われた。

「まぁ・・・ね」
「・・・もしかして」

その“もしかして”が今年もあった。
去年に引き続いて。

「だって、歩道に居るんだもん!」
「人通りも多いし」

人も自転車もひっきりなしに通る場所にそれは居た。
息も絶え絶えに。

「で、またレスキューしたと?」
「・・・そうよ」

透明な羽に緑の筋。
そんなに詳しくないけどクマゼミだと思う。

「あんたって人は・・・」
「尊敬しちゃうよ」

見過ごせば間違いなく踏みつぶされる。
人か自転車に。

「どうせ死ぬなら・・・」
「・・・木の上で?」

小さく頷く私がいる。

(No.1276-2へ続く)

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