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2024年8月

[No.1276-2]命を運ぶ

No.1276-2

「つまり、死に場所を探してたんだ?」
「そう言うこと」

なるべく人通りが少ない場所を探した。
加えて緑の多さも重要だった。

「それで遅れたんだ?」
「随分、探したみたいだねw」

なかなかふたつの条件を満たす場所がなかった。
ある意味、こんな都会じゃ無理かもしれない。

「暑い中、ご苦労さん!」
「で、どこに置いてきたの?」

答えに困る。
・・・と言うか、答えが出ていない。

「えっ!?」
「どういうこと?」

早い話、良い場所が見つからなかったのだ。

「・・・えっ・・・」
「・・・見てこれ」

その瞬間、教室に友人の悲鳴が轟いた。
無理もない・・・虫が嫌いだからだ。

「ちょ、ちょっと!?」
「連れてきちゃったの?」

成り行きで教室まで持ち込んでしまった。
制服にくっつけて。

「でも途中で・・・」

木の上は無理だったけどせめて土には帰してあげたい。
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(No.1276完)
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[No.1276-1]命を運ぶ

No.1276-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」

どうやらまだ生きているようだった。
わずかだけど動いているのが確認できる。

「おはよう!」
「今日は随分遅いじゃない?」

クラスで一番来るのが遅い友人に言われた。

「まぁ・・・ね」
「・・・もしかして」

その“もしかして”が今年もあった。
去年に引き続いて。

「だって、歩道に居るんだもん!」
「人通りも多いし」

人も自転車もひっきりなしに通る場所にそれは居た。
息も絶え絶えに。

「で、またレスキューしたと?」
「・・・そうよ」

透明な羽に緑の筋。
そんなに詳しくないけどクマゼミだと思う。

「あんたって人は・・・」
「尊敬しちゃうよ」

見過ごせば間違いなく踏みつぶされる。
人か自転車に。

「どうせ死ぬなら・・・」
「・・・木の上で?」

小さく頷く私がいる。

(No.1276-2へ続く)

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ホタル通信 No.578

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.669 時代は変われど
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

書いていること自体は事実なんですが、経験してきた歴史を書いただけなので、実話度はかなり低めに設定しています。

さて、この手の小説は時々登場します。「誰の」とか「何の」ことを言っているのか・・・。それでも最後の最後でその正体を明かしたり、小説のタイトルが答えだったりすることもあります。そんな中にあってもこの小説はその答えを明かしていません。
別に隠す意図はないのですが、「読み手の想像や経験にお任せしたい」という想いで、あえて答えは伏せています。ヒントを言えばあるバンドの女性ボーカルです。バンドと言ってもちょっと特殊な感じです。分かる人はこれだけでも答えを導けると思います。

随分と前置きが長くなりましたが、そんな彼女の歌声は時代が変われど、“物”が変われど色褪せない・・・と言いたいのがこの小説です。特段、ファンではなかったのですが、その歌声に魅了されていました。実はその彼女のことを書いた小説を少なくてももうひとつ作っているのですが、話が多すぎて探せずにいますw

全体的に過去形の小説です。それが何を意味しているのか・・・。実はこれも彼女を特定する大きなヒントなんですよ。
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[No.1275-2]レンズ越しの青空

No.1275-2

「今年も来たわよ!」
「それ、さっきも言ったw」

彼女も「それ2回目」と笑ってるだろう。
そんな雰囲気の風が通り過ぎた。

「私達、今年でとうとう大台に乗ったわよ」
「あなたはいつまでも・・・歳のままね」

あれからもう・・・年が過ぎようとしている。
良くも悪くも彼女の時間だけが止まったままだ。

「まずは掃除ね!」
「そうだね!」

雑草を抜き、抜いた跡の土をならす。
砂利も見た目よく整える。

「次はお花と・・・」
「お供え物はここでいい?」

ビールを開ける。
“ブシュ!”という音が快く響いた。

「じゃぁ、恒例の記念撮影と行きましょうか!」
「了解!」

まず、友人が墓石の横に立つ。

「これでどう?」
「ん?・・・どうしたの」

墓石の後ろに雲一つない青空がレンズ越しに見える。

「あっ・・・何でもないよ、ほら笑って!」
J1275
(No.1275完)
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[No.1275-1]レンズ越しの青空

No.1275-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
毎年恒例の行事がいくつかある。
そのひとつが今日のこれだ。

「今年も来たわよ!」
「それ誰に言ってるのw」

その答えを知ってるけど一応聞いてみる。
このやり取りも毎度のことだ。

「今年は晴れで良かったね」

去年は薄曇りで快晴とまではいかなかった。
けど、今年は抜けるような青空だ。

「でも、この暑さは勘弁して欲しいわねw」
「確かにw」

山を切り開いた霊園でも今年は暑さが厳しい。
ただ、時より吹く風が救いだ。

「えっ・・・と・・・ひとつ、ふたつ・・・」

友人が墓石の間を縫う小道を数え始めた。

「毎年、同じことしてるね、私達」
「覚えられない私達ってw」

同じ墓石が並んでいる。
だから、覚えられない。

「彼女、怒ってるかもよ?」
「だねw」

いい加減、私のお墓の場所を覚えろよ、と。
ただ、このグダグタ感が墓参りを続けられる秘訣だ。

(No.1275-2へ続く)

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[No.1274-2]学生の集団

No.1274-2

「・・・」
「・・・」

古い言い方だがキャピキャピ感が半端ない。
まさしく若さが真横を通り過ぎて行く。

「圧倒されるね」
「・・・それと意外だったわね」

大人数の割にはキチンと整列して渡っている。
周りに迷惑を掛けないように。

「私たちの時とは違うじゃんw」
「そうみたいだねw」

マナーがどうこう言った自分が恥ずかしい。

「それにしても大人数だね」
「全員いるんじゃない!?」

先頭は3年生だろうか・・・。
何の根拠もないが。

「それはあり得るわよ」
「体育系なら先輩よりも前は行かないでしょw」

これに関しては今も昔も同じかもしれない。

「信号が変わりそうよ」
「まだ、人が残ってるよ!?」

そうなると残りは1年生ということになる。

「でも、楽しそうじゃん!それはそれで」
J1274
(No.1274完)
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[No.1274-1]学生の集団

No.1274-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「懐かしいね!」
「そうだね!」

横断歩道の向う側に学生の集団がいる。
多分、部活の何かだろう。

「お揃いのジャージだね」
「今も変わらないね」

テニス部かバトミトン部だろう。
それらしきカバーが掛かった道具を背負っている。

「楽しそうだね!」
「そうなるでしょ!」

雑踏を上回る声が聞こえる。
女子ならではかもしれない。

「私たちもそうだったじゃん」
「多分、周りは迷惑してたんだろうな・・・」

彼女たちにマナーを求めるのは酷だ。
誤解を恐れずに言えば。

「私もそう思うよ」
「そうやって大人になると思う」

青春とはそういうものだ。

「信号が変わったわよ」
「ほんとだ」

その瞬間、彼女たちが一斉に横断歩道を渡ってきた

(No.1274-2へ続く)

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ホタル通信 No.577

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.604 道すがら
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

実話度はゼロです。タイトルである「道すがら」というフレーズだけで小説を作りました。

とは言え、「道すがら」自体は何かきっかけがあって出てきたフレーズだったと思います。さすがに適当に言葉を選んだわけではありません。ただ、それが何だったかは覚えていません。さて、この話、読み返してもイマイチ何を言いたいのか分かりませんし、なぜ、バーベキュー会場に行く道すがらだったのか・・・創作と言えども謎です。自分で作っておきながら。

多分、それこそ道すがら何かを感じて、その感じた道すがらを題材にしたんでしょうね。あらためてそう分析しています。実は小説のネタは通勤や散歩中に感じることが多く、よほど何かを感じたんだと思います。それをいつもの恋愛系に結び付けて、ちょっとコミカルタッチに仕上げました。まぁ、ほぼ創作なので話自体には思い入れはありませんが、感じるものはあります。

道すがら・・・あらためて口に出してみると、何とも言えない不思議な感覚を覚えます。そこに様々な人生を感じずにはいられないからです。
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[No.1273-2]ニセモノが好き

No.1273-2

「ニセモノ?」
「そう!簡単に言えばね」

表現は良くないとは思う。
100円でもバニラはバニラだ。

「私、本格的なものが苦手なの」
「だから、バニラ感が濃いいと・・・」

食べられなくなる。
それは他の食べ物でも同じだ。

「・・・普通、逆じゃない?」
「かもしれないw」

とにかく、本物が苦手だ。
本格中華より町中華が好きだ。

「怒られるわよ」
「町中華も本格的よ」

それは分かっている。
早い話、庶民の味が好きなんだ。

「ふ~ん・・・面倒ねw」
「自覚してるw」

ニセモノには知恵と努力が詰まっている。

「そこまで言えれば本物よ」
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(No.1273完)
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[No.1273-1]ニセモノが好き

No.1273-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「私、それ苦手」
「うそ!?前、食べてたじゃん・・・」

確かに食べていた。
ただ、正確に言えば似て非なるものだ。

「似て非なる?」
「いやいや、一緒じゃん!」

これだから素人は困る。
全くの別物だ。

「けんか売ってる?」
「売ってないわよ」

友人がバニラアイスを食べている。
かなり高級なバニラアイスを。

「何が違うのよ?」
「それにこっちの方が美味しいじゃん!」

前、食べたのは安いバニラアイスだ。
100円程度でどこにでも売っている。

「だからなの!」
「・・・だから?」

簡単に言えば答えはこうだ。
私はニセモノが好きだ。

(No.1273-2へ続く)

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