[No.1265-2]ブラックタイガー
No.1265-2
「子供の頃?」
「実は母が好きで・・・」
好きだけど食べている姿は見たことがない。
いつも口癖のように“好きだ”と言っていただけだ。
「だから高級品なんだと・・・」
「昔はそうだったのかもね」
確かにその可能性はある。
「でもどうしたの急に?」
「ほら、今なら腹一杯食べてもらえたのに」
一応、普通程度に稼げるようになった。
だから、そうすることもできる。
「もう少し早く思い出したかったな・・・」
気付いた時に母は居ない。
“孝行したい時分に親はなし”とはこのことだ。
「別に貧乏じゃなかったけど」
「子供が3人いたからさ」
それなりに生活は大変だったと思う。
それは大人になったからこそ分かる。
「母にとってはごちそうだったんだろうな」
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