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2024年5月

[No.1258-1]給食の匂い

No.1258-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
はっきりしているのに例えようがない匂いがある。
それが給食の匂いだ。

「何でよ?」
「言った通り、はっきりしてるじゃん?」

確かにイメージではそうだ。
想像しただけで食材の匂いがしてきそうだ。

「でも、実際は違うんだよな」
「何て言うか・・・」

食材よりもある匂いがしてくる。
確認したことはないが。

「ある匂い?」
「説明が難しいんだけど・・・」

一言で表せば金属の匂いだ。
それも、給食で使う食器の匂いだ。

「金属?食器?」
「匂いなんかするの?」

僕もそうは思う。
けど、記憶の中にその匂いがしっかり刻まれている。

「ただ、ここは会社の食堂だから」

食べる食器ではなく、作る方の機械の匂いだと思う。

(No.1258-2へ続く)

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ホタル通信 No.569

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.632 おねいちゃん
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

脚色している所があるもののほぼ実話です。それと亡くなったのはおばさんではなく、おじさんでした。

まぁ、なぜおじさんをおばさんに替えたのか覚えていませんが、何か意味があったんでしょうね、小説を書いた当時は。さて、ほぼ実話なので書いてある通りです。通夜の席で、小さい頃に可愛がってもらった親戚のおねいちゃんに、何十年ぶりに再会しました。
関係性ですが、私の父の姉夫婦の子供で、10歳以上年が離れていました。話はそれますが、この関係性から言えば、ご夫婦の旦那さんは、極めて他人です。でも、私を一番可愛がってくれたのは間違いなく、この旦那さんでした。結局、大人になってから一度もお礼を言うことなく、他界してしまいました。

この流れからすれば、その旦那さんにスポットをあてた小説にしてもおかしくはなかったのですが、少し湿っぽくなることもあっておねいちゃんを話の主軸にすることにしました。実際、旦那さんと負けず劣らず、可愛がってもらったのも事実ですから。
お互い年を重ねても、いざ会ってみれば、いつまでも相手はおねいちゃんで私は子供です。そんな関係が嬉しいやらちょっと恥ずかしいやら、不思議な気持ちです。

でも、一時的でも童心に帰れたというか、昔話に花が咲いた通夜でした。傍らでおじさんも聞いてくれていたことでしょう。
Jt569
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[No.1257-2]トンボ

No.1257-2

「トンボって伝統だよね」
「大袈裟だけど」

先輩から後輩へ受け継がれる。
意外なほど真面目だった、それに関しては。

「サボることもできるけど」
「みんなちゃんとするんだよね」

先輩が怖かったからじゃない。
何ならみんな進んでやっていた。

「ほんと、遅刻はするし」
「部活以外はダメな私たちだったのにねw」

グラウンドに対する感謝の表れとも言える。
どこで身に付いたか分からないが。

「それが部活なんだよ」
「そうかもしれないね」

グラウンドの整備が終わって部活も終わる。
そしてグラウンドを静かに後にする。

「ほんと青春だったね」
「その後もでしょ?」

そう・・・その後の寄り道も楽しかった。
カラオケにカフェに・・・他にも色々と。

「そうだったわね!」

その変わりようと言ったら・・・。
グラウンドの女神はどこに行ったのやら。

「いつの間にか、女神になってるw」
「いいじゃんw」

彼らもそうなんだろうか・・・。
整備が終わるのを見つめる私たちが居た。
J1257
(No.1257完)
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[No.1257-1]トンボ

No.1257-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ見て?」
「なに?」

学校のグラウンドで久しぶりにそれを見た。
夕暮れのグラウンドにそれが映える。

「懐かしいね!」
「思い出すよね」

高校生の時、陸上部に所属していた。
練習終わりにはいつもそれを使っていた。

「トンボってさぁ・・・」
「青春って感じしない?」

練習そのものより、終わった後がエモい。
今風に言えば。

「そうなんだよな~」
「今のように夕日に照らされながら・・・」

静かにグラウンドを整備する。
不思議なくらい誰もしゃべらない。

「なんでだろうねw」
「充実してるからじゃない?」

練習疲れは苦ではない。
むしろ、心地よい充実感を残してくれた。

「それを噛み締めてるわけよ」
「みんな」

それは部活を経験した者にしか分からない。

「・・・だね」
「彼らもそうなんだと思う」

グラウンドを整備している彼らも無言だ。

(No.1257-2へ続く)

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[No.1256-2]なぞの根っこ

No.1256-2

「確かにそうよね・・・」
「まぁ、水だけは豊富だろうけど」

逆に洗剤やら何やらで過酷な環境下に居ると思う。
そんな中で、根が生えるとは思えない。

「でも、案外、生命力は強いかもよ?」
「それくらいの耐性はあると思う」

確かに一理ある。
ゴギブリ並みとは言わないが・・・。

「他に心当たりは?」
「う~ん・・・無いな」

その豆らしきものが極小だけに思い当たるものがない。
食事のメニューを思い出しても。

「根が生えるくらいだから」
「豆ではあるよね?」

なるほど…今さらながら納得した。
豆らしきではなく、豆ではあるはずだ。

「それ、育ててみる?」
「その発想はなかった!」

その方法なら、それが何であるか分かるはずだ。

「知らない植物に育つかもw」
「可能性はあるな」

育ったものの、見たことがない植物になるかもしれない。

「とにかく、育ててみるよ」
J1256
(No.1256完)
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[No.1256-1]なぞの根っこ

No1256-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「これ見てよ」
「なに?」

前から不思議に思っていたことがある。
それが今も目の前にある。

「根が生えてる?」
「そうなんだよな」

流し用排水口のゴミ受けから根が生えている。
容器の底の2ミリ程度の穴から。

「何の根なの?」
「こっちが聞きたいよ」

根と言ってもモヤシのような太いものではない。
それこそ、糸くずレベルの極細の根だ。

「心当たりは?」
「それが・・・」

ゴミ受けを掃除している時のことだ。
非常に小さな粒を見つけることがある。

「粒?」
「あぁ、極小の豆みたいな」

例えるなら、マスタードの粒がそれに似ている気がする。
でも、そうそうマスタードは口にしない。

「仮に・・・仮にだよ」
「それがマスタードの粒だとして」

それが発芽するとは思えない。

(No.1256-2へ続く)

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ホタル通信 No.568

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.621 二人連れ
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

書いてあることはほぼ事実なんですが、小説上の私(女子高生)の部分が事実とは異なります。作者の性別は非公開ですが、学生ではない・・・とは公表しています。

早い話、作者がすれ違う女子高生の二人組のことについて書いた小説です。状況については書いてある通りで、ある時を境にして彼女たちから笑顔が消え、ついには二人組ではなくなってしまいました。そこに何があったのか、知る由もなく、他人事ながら心配な日々が1週間ほど続きました。
親友でも喧嘩することもありますから、そんな類のものだとは思っていましたが、もしかしたら男子関係のことなのかな?とも考えていました。ドラマの見過ぎかもしれませんが。

でも、そんな心配をよそに笑顔も相棒も復活したんです。何事もなかったように。仲直りに1週間掛ったのか、そもそも何もなく、私の思い過ごしだったのかわかりませんが、とにかくほっとしたことを覚えています。
そんな彼女たちですが、ある年の4月になる前に姿を見なくなりました。説明するほどではないでしょうが、それぞれ旅立って行ったことは容易に想像が付きます。同じ大学ならまだしも、同じ就職先になることはそうそうないでしょうから、それぞれ違う道を歩み出したのだと勝手に思っています。

まぁ、そんな私もこの二人組と同じようなものです。かなり遠く離れた場所で新生活を過ごすことになりましたからw
Jt568
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[No.1255-2]もうひとりの主役

No.1255-2

「蝶か!」
「そう!モンシロチョウね」

桜が目立ちすぎて彼らはそれほど注目されない。
でも、彼らも春の主役だ。

「確かに主役かもしれない」
「でも、目線が上に行くからなぁ~」

どちらかと言えば彼らは下に居る。
背の低い花を渡り歩くイメージがある。

「だから気付かないんだよな」
「それほどその存在に」

桜の開花に目を奪われ、みんな上を見ている。
足元にも春が訪れているのに。

「タンポポとのコントラストもいいよね」
「うんうん!」

白と黄色が何とも鮮やかだ。

「それに何となく慣れてると言うか・・」

人に寄ってくるようにも感じる。

「そう言われると」
「下が気になり始めたよ」

そう言うと友人が腰を下ろし始めた。

「来週、ここでいいよね?」
「私もそう思ってた」

けど、“食”の目的は変わらないでおこうw
J1255
(No.1255完)
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[No.1255-1]もうひとりの主役

No.1255-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
世間では桜の開花が始まったらしい。
そうなると・・・。

「来週あたり行ってみる?」
「どこに?」

あえてとぼけてみた。
答えは分かっているけれど。

「桜に決まってるでしょ?!」
「分かってるわよw」

今の時期、世間は桜一色になる。
見ると言うより、“食”が優先されるとは思うが。

「行かないの?」
「もちろん行くわよ」

私もどちらかと言えば“食”が目当てだ。

「でも、もう一人の主役を忘れてない?」
「主役?一人?」

桜の季節になると出てくるやつがいる。
白くて小さい・・・。

「人間なの?」
「わけないでしょw」

正確には一人じゃなくて一匹だ。

「おい!」
「ごめん!ごめん!」

多分、桜よりも早くやつらが現れる。
現に目の前を通り過ぎて行った。

(No.1255-2へ続く)

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[No.1254-2]偶然とは

No.1254-2

「すごい偶然だよね?」
「流行の歌ならまだしも」

偶然にしてはかなりの確率だと思う。
だからこそ、何かを感じずにはいられない。

「ただ悪い予感じゃなくて」
「なんか・・・こう・・・」

それこそ“何か”の流れを感じる。
上手く言えないけれど。

「確かにそんなことがあると」
「気になっちゃうよな」

この曲自体には特別な思い入れはない。
単に懐かしい・・・という感覚でしかない。

「何かを思い出させようとか?」
「誰がよ?」

二人で顔を見合わせた。

「まぁ、可能性はあるわね」
「誰かは分からないけどw」

とにかく、今はこの曲に耳を傾けることにした。
少なからず、思い出す“何か”は感じるからだ。

「俺が知らない思い出?」
「さぁ~どうだろうw」

私の脳裏に浮かんだ光景は・・・。
J1254
(No.1254完)
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[No.1254-1]偶然とは

No.1254-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「えっ・・・」
「どうした?」

テレビから昔の映画音楽が流れてきた。
かなり昔に流行った洋楽だ。

「CMにも使われていたよな?」
「そうそう!」

でも、それだけでは驚きの声をあげない。
これには前触れがあったからだ。

「前触れ?」
「うん、実は・・・」

ランチをしていた時に店のBGMとして流れていた。

「そうだったの?」
「全然、気付かなかったよ」

確かに店内が少し騒がしかった。
だから、気付かなかったのも分かる。

「懐かしくてもっと聞きたくて」
「曲名をググってたの」

そしたら・・・。

「テレビで流れてきた?」
「そうなんだよね」

もちろん単なる偶然にしか過ぎない。
でも・・・。

(No.1254-2へ続く)

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ホタル通信 No.567

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.532 独りの時間
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

この小説、ほぼ事実なんですが、面白おかしくするために、あえて“独り感”を強めに演出している関係で実話度80%にしています。

小説では独り寂しく・・・の展開ですが、実はそこまで“独り”ではなく、二人で出掛けて別行動をしていた時の暇つぶし感覚で立ち寄った・・・のが事実です。ですから、寂しくはない独りだったのですが、賑やかな場所ですから、そんな事情を知らない人達にはそう見えてしまうのも事実でしょうね。

さらに情報を付け加えると、場所は住んでいる街ではなく、旅先である東京お台場なんですよ。たまたま、住んでいる街で毎年やっていたイベントをお台場でもやっており、つい、賑やかさに誘われてフラフラと吸い込まれて行ったわけです。後は小説に書いてある通りの展開と言いますか、そんな気持ちで飲んでいました。
この手の小説はとても書きやすく、筆がスイスイと進みます。基本、自分の気持ちをそのまま文字にしているわけですからね。

ラストの3行はとても気に入っています。最近はこんな感じで終わる小説が少ないので、懐かしいやらレベルが落ちたのやらw
Jt567
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