[No.1233-2]傘がない
No.1233-2
「いつまで降り続くんやろな」
「そう長くは続かないようだけど」
こうやって雨宿りするのは、あの日以来だ。
「・・・あの日以来やな」
「えっ!?僕も同じことを考えてた」
彼女との出会いは、雨宿りだった。
こうやって肩を並べて、雨が止むのを待っていた。
「随分、濡れてたもんなw」
「言ったやろ?天気なんか気にせえへんしw」
その言葉は嘘でも本当でもあるだろう。
あの時、彼女は泣いてた。
「だったよなw」
わざと雨に降られて、涙を隠した。
僕にはそう見えた。
「ん?晴れ間が見えてきたで!」
「あっ・・・本当だ!」
思ったよりも早く雨が上がりそうだ。
「じゃあ・・・行こうか?」
「せやね!」
それから暫くして、僕らは二度と会うことはなくなった。
「こっちにおいで」
その猫は僕の声に反応して振り返った。
少しの間でもいい・・・僕が傘になろう。
(No.1233完)
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