[No.1223-2]金のスプーン
No.1223-2
「贅沢な時間だったな」
子供ながらに“金のスプーン”は自慢だった。
さりげなく友達にも自慢した。
「そのスプーンは何本かあったんだよな」
「なんかお金持ちになった気分だったよ」
ただ、ある日を境にそのテンションは消え去った。
あることに気付いたからだ。
「・・・多分、あれよね?」
「気付いてた?」
彼女が小さくうなづく。
それを知りながら僕に話を合わせてくれていたようだ。
「金メッキだったんでしょ?」
「正解!」
不注意でスプーンを傷付けてしまった。
すると・・・。
「銀色が見えたんだよね・・・」
全てが金で出来ていたと思っていた。
今なら、そんなことは思わないが・・・。
「子供の頃ならそう思うわよ」
「全部金で出来てるって」
僕が勝手にそう思い込んでいただけだった。
「そのスプーン、今はどうなってるの?」
僕が就職する時に持たせてくれた。
今では金のスプーンの面影しか残っていないけれど。
(No.1223完)
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