[No.1215-2]二本の虹
No.1215-2
「写真撮った?」
「撮ってねーよ」
滅多にないことだけに撮りたい気持ちはある。
でも、それはそれで・・・。
「ふ~ん、私は撮ったわよ」
意味不明なマウントを取ってくる。
どうせ、インスタにでも上げるのだろう。
「俺は心の中に・・・」
「ダサっ!」
正しく、一刀両断とはこのことだろう。
まぁ、気心が知れた仲だからこそ言えるのだが。
「そろそろ私は帰ろうかな?」
「どうぞ、お先に!」
彼女とは帰る方向が違う。
彼女は虹に近付く方向に、俺は遠ざかる方向に。
「消えないうちに撮っておいたら?」
「はいはい」
その気がない返事を返しておく。
「それじゃ、また明日」
「あぁ」
虹を背に自転車を走らせる。
振り向くと、もうそこには虹はなかった。
(No.1215完)
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