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[No.1209-1]何もなかった

No.1209-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
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実家の近くにうっそうとした森があった。
河原沿いに果てしなく広がっていた。

「当時はね」
「当時?」

小学生の僕らには恐怖の存在だった。
入り口は見えども出口は見えない。

「実家を離れてしばらくしたら」
「森がなくなってて」

再開発が進み、森が消え、道が出来ていた。
最初から森がなかったかのように。

「びっくりしたでしょう?」
「違う意味で、だけど」

なくなったことより、もっと驚いたことがあった。

「なになに?」
「果てしないと思っていた森がさぁ・・・」

実はとても小さな森だと分かった。

「当時は・・・」
「入ることさえためらわれるほどだったのに」

もちろん、僕が大人になった影響が大きいと思う。
子供と大人とでは目線が大きく異なるからだ。

「それってあるあるじゃない?」
「大人になると何でも小さく感じてしまうでしょ?」

それがショックだった。
ある意味、偉大な存在だっただけに。

(No.1209-2へ続く)

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