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2023年9月

[No.1212-1]俺は副音声

No.1212-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「この人、誰?」
「・・・だよ」

ドラマや映画を見ているとこんなことが良くある。
その度、その俳優を俺が答える。

「そうなんだ!」
「どうりで似てると思った」

それなら、わざわざ聞くこともないだろう。
全く分からないわけじゃないのだから。

「じゃ、この人は?」
「またかよ」

とは言いつつも、その俳優を答える。
映画を見始めてからこれで3人目だ。

「よく分かるよね?」
「いやいや、有名な人だろ!?」

有名じゃない人なら、こんなやり取りはあり得る。
でも、主役級の有名人ばかりだ。

「あなたが居てくれて助かるわ」

と言われても映画に集中できない。
それに、そろそろ次のステップに進む頃だ。

「ねぇ、なんで・・・」

ほら・・・来た。
実は、ここからの方が面倒くさい。

(No.1212-2へ続く)

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ホタル通信 No.546

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.689 宝箱
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

う~ん…という感じの小説です。この書き出しで始まるホタル通信を何度か書いたような書かないような。

この話、ふたつのとても小さな事実がもとになっています。ひとつは映画のワンシーン、もうひとつは森です。とは言え、何の映画だったのか覚えていません。最近、このようなことが増えてきてちょっと反省です。これではネタばれになりません。もうひとつの森は、実家の近くに存在していました。残念ながら今はその森はもうありません。

その森に宝箱があったような話は創作です。
確かに何かが眠っていそうな雰囲気がありありの森でしたが、さすがにそんなに都合良く行きません。多少、畑もありましたから、古びた農機具などがあって、そのイメージを宝箱の話に展開させました。最後は、ありがちな恋愛系と言いますか、何度もオチに使っている合コンで締めくくっています。ただ、これが言いたかったわけではなく、かなり無理をしたオチになって居る感が否めません。

そのオチなんですが、意味深だけに特に明確な答えを用意しているわけではありません。人それぞれ、色々と想いを巡らせていただければ幸いです。
J546
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[No.1211-2]茶色の紙袋

No.1211-2

「ちょっと思い出したことがあって」
「どんなこと?」

小さい頃、近所に駄菓子屋があった。
そこで買い物をすると・・・。

「茶色の紙袋?」
「そう、それに入れてくれてた」

100円もあればその袋がいっぱいになる。
その印象が今でも尾を引いている。

「それに今、気付いたみたい」
「原点はここなんだって」

たかが駄菓子でもこの袋に入るとご馳走になる。
そんな感覚を持っていた。

「確かに子供にとってはそうよね」
「どんな高級な菓子よりも」

そう考えるとこの紙袋は魔法の袋とも言える。
美味しく見せてくれるのだから。

「実際、美味しいけどね」
「ここのパン屋さんはw」

紙袋からは小さめのバゲットが顔をのぞかせている。
それがまた紙袋と実にマッチする。

「ほんと美味しそうね・・・そのバゲット」

それが紙袋に隠れてしまうのにそう時間は必要なかった。
J1211
(No.1211完)
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[No.1211-1]茶色の紙袋

No.1211-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「この袋って不思議よね?」
「不思議?」

茶色の紙袋にパンが入っている。
さっき買ったばかりのパンが。

「ほら、美味しそうに見えない?」
「白い紙袋とかに比べて」

焼き芋なんかもこんな袋に入っている。

「まぁ・・・そう言われてみれば」
「でしょ!」

ビニール袋ではダメだ。
それに色も茶色じゃないとダメだ。

「随分、拘るわね?」
「でも明確な理由は分からないのよね」

とにかく、茶色の紙袋に入れば美味しく見える。
素朴な感じがすると言うか・・・。

「お洒落ではあるよね、逆に」
「派手な袋よりは」

パンの色にマッチしていることもあるだろう。
よく考えれば焼き芋もそうだ。

「確かに辻褄はあってるね」
「どっちも茶系だし」

でも、それだけではないと思う。

(No.1211-2へ続く)

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[No.1210-2]校歌の力

No.1210-2

歌詞もメロディもほぼ覚えている。
でも、それが小学校なのか中学なのか、高校なのか・・・。

「どれでもいける歌詞なんだもん」
「全部、同じ地区にあるから」

覚えていないというより、3つがごちゃ混ぜになっている。

「何となく見えてきたわ」
「要は特徴がないわけね?」

友人の言うとおりだ。
もちろん、悪い意味ではない。

「全く違う地区なら、歌詞に特徴が出るもんね」
「そうなんだよね」

だから、3つが入り乱れて混乱している。
それぞれ覚えているのに。

「それはかなり気持ち悪いわね」
「そう!ここまで出掛かってるのに」

何度も口ずさんでみた。
でも、肝心の学校名のところになると・・・。

「小学校なのか中学なのか」
「高校なのか・・・ね」

どれでもピタっと当てはまってしまう。
学校の名前が同じなだけに。

「ネットで調べてみたら?」
「なるほど!その手があったね」

でも・・・なんか違う気がする。

「やっぱり、思い出したい・・・自力で」
J1210
(No.1210完)
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[No.1210-1]校歌の力

No.1210-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ここまで出掛かってるんだけどね」
「何かの歌?」

さすが友人、察しがいい。
でも、歌は歌でも歌謡曲じゃない。

「歌謡曲じゃない?」
「演歌?」

演歌も歌謡曲の一部だ・・・と思う。
とにかく、歌手が歌うものではない。

「校歌だよ、校歌」
「こうか・・・校歌?」

そう、学校の歌、校歌だ。
あらためて言う必要もないが。

「校歌が思い出せなくて」

とは言え、メロディも歌詞もほぼ覚えている

「話が矛盾してない?」
「ほぼ覚えてるんでしょ?」

なかなか伝えるのが難しい。
覚えているけど覚えてない。

「新手のなぞなぞみたいねw」
「確かにw」

小学校から高校まで同じ名前の学校に通った。
とは言え、一貫校ではない。

「全部、○○小学校、○○中学校・・・」
「○○が同じってことね?」

それが思い出せない原因になっていた。

(No.1210-2へ続く)

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ホタル通信 No.545

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.696 余裕な発言
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

まるでドラマのワンシーンのような発言が隣から飛び出してきました。イラっとしたと言うより、敗北感を味わったような。

普通・・・という言い方は好きではありませんが、普通、失恋したら、多かれ少なかれダメージはあるはずです。もちろん、それをものともせず、次の恋に・・・という人も少なくないでしょう。でも、この方はそのどちらとも言えない、何とも余裕と言いましょうか・・・だからこそ、小説のタイトルにもなり得ました。

「ひとりを楽しんでみようかな?」このセリフにどんな意味が含まれているか分かりますよね?
単純に考えれば、常に誰かとお付き合いしていることをかなり上から目線で言ったものでしょう。ただ、となりで話の流れを聞き、雰囲気を感じていた私には、少し違ったように聞こえました。
多分、この方、恋愛にそれほど関心がないようでした。口悪く言えば、人を本気で愛したことがないような・・・。形だけの恋愛に疲れ、だからひとりを楽しみたいという発言に繋がったように思えてなりません。

ただ、いずれにせよ、私にとっては羨ましい話です。私は私でこんなセリフを言ってみたいですね。 「ひとりに飽きたから、誰か作ろうかな?」なんてねw
J545
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[No.1209-2]何もなかった

No.1209-2

「男子ってそんなとこ、あるよね?」
「それは否定しない」

見えないはずの出口も見えた。
それも入れ口とさほど変わらない場所に。

「それに出口の向うには何もないし」
「何もない?」

出口の向うには異次元が広がっていると噂があった。
もちろん、信じてはいなかったが。

「子供らしいね!」
「信じてはいなかったけど・・・ほら・・・」

何らかの期待は持っていた。
それだけの雰囲気を持っていたからだ。

「そんなもんだから」
「何もないんだよ、なにも・・・」

拍子抜けもいいところだ。

「でも、小さい頃は楽しめたんでしょ?」
「その森で」

楽しめたと言うより、怖くて入れなかった。
奥深くには。

「それが“楽しめた”って言うのよ?」
「そ、そうなのかな~」

そう言われるとそう思わなくもない

「当時を思い出しながら歩いてみたら?」
「何ならお供するわよ、怖いなら」
J1209
(No.1209完)
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[No.1209-1]何もなかった

No.1209-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
実家の近くにうっそうとした森があった。
河原沿いに果てしなく広がっていた。

「当時はね」
「当時?」

小学生の僕らには恐怖の存在だった。
入り口は見えども出口は見えない。

「実家を離れてしばらくしたら」
「森がなくなってて」

再開発が進み、森が消え、道が出来ていた。
最初から森がなかったかのように。

「びっくりしたでしょう?」
「違う意味で、だけど」

なくなったことより、もっと驚いたことがあった。

「なになに?」
「果てしないと思っていた森がさぁ・・・」

実はとても小さな森だと分かった。

「当時は・・・」
「入ることさえためらわれるほどだったのに」

もちろん、僕が大人になった影響が大きいと思う。
子供と大人とでは目線が大きく異なるからだ。

「それってあるあるじゃない?」
「大人になると何でも小さく感じてしまうでしょ?」

それがショックだった。
ある意味、偉大な存在だっただけに。

(No.1209-2へ続く)

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[No.1208-2]長く続けるということ

No.1208-2

「あら、凄いじゃない!」
「だろ?」

ついでに朝食の準備もしなきゃいけない。
朝から忙しさを極めた。

「でも、さっき言った通りで」
「楽しかったよ」

自分のお弁当を自分で作る・・・。
不思議な感覚ではあったが。

「今度、俺が作ってあげるよ」
「本当?」

この1週間でお弁当作りに目覚めた。
それに他人に食べてもらってこそ、お弁当だ。

「それじゃ、お願いしようかな」
「でも、大丈夫?」

もちろん、大丈夫だ。
逆に、何か心配になることがあるのだろうか?

「1年間、よろしくね!」
「えっ・・・」

答えに困る。
1年という時の長さに急に怖気づく自分が居る。

「冗談よ、冗談!」
「お弁当作りは、作り続けることが大切なんだよ」
J1208
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[No.1208-1]長く続けるということ

No.1208-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どう?私のありがたみが分かった?」
「別に」

ちょっとだけ強がってみる。

「意外に得意なんだよ、俺」
「知ってる」

彼女はいつもお弁当を持たせてくれる。
その彼女が1週間ほど留守にした。

「お弁当作り大変だったでしょ?」
「そうでもなかったぞ」

逆に楽しかった。
それに、センスが問われる作業は得意としている。

「確かに芸術的なセンスはあるよね、私よりも」
「まぁ・・・な」

ここまでストレートに言われると逆に答えに困る。
でも、センスには自信がある。

「何時に起きてたの?」
「5時45分」

とは言え、事前準備もしっかり行っていた。

「前日にザックリとメニューを決めて」

食材も可能な限り用意した。
切れるものは切っておいたりもした。

(No.1208-2へ続く)

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ホタル通信 No.544

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.519 聞けない歌
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:男性

小説のタイトルにもなっている聞けない歌、そしてそれがふたつあることは事実です。

先にお詫びしておくと、そのうちのひとつがどうしても思い出せません。ドラマの主題歌の方です、すみません。もうひとつは、「機動戦士ガンダム00 2nd Season」の主題歌、ステレオポニーの「泪のムコウ」です。この歌は当時の心境と言いますか、置かれている状況と重なりあって、本当に聞くのが辛くて辛くて・・・。そのため、トラウマの歌として長らく君臨していました。

この歌を聞けるようになったのは、何らかの転機があったわけではなく、小説に書いた通り、ただただ時間が解決してくれました。
私が強くなったからではなく、ドライな言い方をすれば、当時の心境や置かれていた状況が時間と共に風化し、何も感じなくなってしまった・・・という感じです。
歌をテーマにした小説は比較的多く書いています。比較的最近では、母が亡くなる直前に耳にした歌が正しくそれに当たります。この歌は“聞けない”わけではありませんが、涙腺が崩壊してしまうので、人前では絶対に聞けません。

歌に関する思い出は尽きないですね。楽しい時も辛い時も、振り返ればそこに歌がありました・・・何だか安っぽいキャッチフレーズみたいになっちゃいましたねw
J544
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[No.1207-2]野良猫のプライド

No.1207-2

「立場をわきまえてるのね!」
「あははwそんな感じ」

飼い猫には成り下がらない。
だからと言って野良猫としてのプライドもない。

「ほんと面白い関係ね」
「毎日、その道を通るのが楽しみよ」

多少、警戒されるものの近付くことは許してくれる。
その距離感もいい。

「ご飯、あげてみたら?」
「なつかれるかもよ」

多分、そうなると思う。
さっき言った通り、野良猫としてのプライドはない。

「そうしたいんだけど・・・」
「何かマズイことでも?」

マズイと言うほど大袈裟なことではない。
でも、それこそ無責任になってしまう。

「無責任?」
「あっ・・・そうだったわね」

私はあるプロジェクトの一員としてこの地に来た。
1年の限定で。

「私頼みになっても嫌だし」
「別れも辛いしね」

その1年がそろそろ来ようとしている。

「今の距離感のまま・・・それでいい」
1207
(No.1207完)
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[No.1207-1]野良猫のプライド

No.1207-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
通勤経路に遊歩道のような道がある。
そこに野良猫が結構棲みついている

「でも完全な野良猫じゃなくて」
「かと言って地域猫でもなくて」

緩く地域に見守られているという感じだ。
誰かがエサをあげても見て見ぬふりをしている。

「何だか・・・いいね、それ」
「うん、そう思う!」

無責任・・・と言う声も聞こえて来なくもない。
でも、見守る人は多く、差し伸べる手も多い。

「猫たちも上手く縄張りを確保してるみたいだし」
「ただ、面白いのが・・・」

縄張りがある以上、行動範囲はそれほど広くない。
そのこともあって、あることを良く見掛ける。

「あること?」
「そう!あること」

彼らは、彼らなりにお気に入りの家があるらしい。
玄関先やその近くで何かを待っている。

「まぁ、何かと言っても」
「ご飯でしょw」

そう・・・ご飯をもらおうとして待っている。
ただ、鳴いてねだっているわけではない。

「静かにその時を待っているような」

その姿が何とも愛おしい。

(No.1207-2へ続く)

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