« 2023年7月 | トップページ | 2023年9月 »

2023年8月

[No.1206-2]きんぴら風に

No.1206-2

「で、成果の方は?」
「そうね・・・」

今までに数十個の身を収穫した。
ただ、去年よりは小ぶりだった。

「けど、結構な数ね」
「美味しくいただいたわよ、全部」

定番に加えて、新メニューでも味わった。

「なになに?」
「ちくわとあえて、きんぴら風に」

甘さと辛さに、独特の苦みが加わる。
定番とはまた違った味わいがある。

「・・・美味しそう」
「お酒にも合うわよ!」

もう、何度もいただいた。
酒のつまみにもなる。

「今度、お邪魔してもいい?」
「自分で買って作りなさいよw」

ちょっとイジワルしてみる。

「あなたの家で収穫されたものがいいの!」
「はいはい」

仕方ない。
週末は家で飲み会を開くことにしよう。

「狭いけどベランダでどう?」

まだ青々としたゴーヤを傍らに添えて。
1206
(No.1206完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1206-1]きんぴら風に

No1206-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「頑張ったね・・・」

その言葉が自然に出てしまう。
それほど、厳しい6日間だった。

「今年はどんな感じ?」

もはや合言葉に近い。
友達も慣れたものだ。

「それが・・・ね」
「えっ!ダメだったの?」

台風の影響で帰省から戻るのが1日遅れた。
夏場の1日はかなり大きい。

「・・・ギリギリセーフだった」
「なんだぁ・・・ビックリするじゃない!」

葉は一部枯れ、勢いもなくなっていた。
ただ、土は思ったよりは乾燥していなかった。

「台風が恵みの雨になったみたい」

後から聞いた話によると・・・。
風はそれほどでもなかったらしい。

「災い転じて・・・ってやつだね!」
「ほんと」

その雨で生き長らえた・・・大袈裟だけど。

「生命力には驚かされるよ」
「雑草でもないくせにねw」

それに、今でも成長が止まっていない。
いつもなら、そろそろ枯れ始める頃なのに。

(No.1206-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.543

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.507 推しメン
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:男性

ベースになる出来事は実際にあったのですが、かなりの脚色を加えたことで実話度が下がってしまいました。

本当の推しメンは、愛称が「ぱ」で始まる人でなく別の人です。なぜ、「ぱ」の人にしたのか、はっきりとは覚えていませんが、別の人にこれといった愛称がなかっため、「ぱ」の人を登場させました。ですから、昔付き合った人に似ているのは“別の人”です。
実話をベースには作っていますが、時々、わざと事実を曲げて作ることもあります。

小説上の相手(女性)は、僕が最初に付き合った人を写真で見て知っていたため、「この子・・・誰かに似ていない?」のセリフが出てきます。
たまたま見ていたテレビで目立っていた人が居た・・・それが、一番最初に付き合った人に似ていたことを、思い出そうとする相手とそれをやんわり阻止しようとする僕のせめぎ合いを描いた小説です。一番最初に付き合った人とは言いましたが、本当は付き合うという所まではいっていません。告白はされてOKはしたものの、タイプではなかったため、付き合わずして終わった・・・みたいな感じです。

この彼女との出会いがのちのちある問題へと発展して行きます。小説にしているので隠す必要はありませんが、彼女の友達と付き合うようになり・・・。若気の至りではあったものの、今でも心が痛みます。

543
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1205-2]命の質量

No.1205-2

「視線?」
「変な話だけど・・・」

赤トンボと目があったような気がした。

「あははw」
「確かに目は大きいからね!」

その割には僕のおでこ目掛けて飛んで来たが・・・。

「それに僕を取り囲むように」
「群れて飛ぶんだから」

少なくとも数匹のトンボと接触した。
ただ・・・。

「ただ・・・なによ?」
「なんて言えばいいのかな・・・」

接触した時、質量を感じた。
命の質量と言うか・・・。

「どうしたの?」
「いきなり哲学っぽくなってw」

トンボを手に持ったことはある。
その時はまるで重さを感じなかった。

「まぁ、そうよね」
「見るからに軽そうだもんね」

僕もそう思っていた。

「それが意外に重いんだよな」
1205
(No.1205完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1205-1]命の質量

No.1205-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「どうしたの?」
「おでこなんか抑えちゃって」

朝からやつらに囲まれた。
それも相当な数のやつらに。

「やつら?」
「不良でもいたのw」

分かっているくせに、あえて煽ってくる。

「本当は分かってるんだろ?」
「今度はなに?」

なかなか良い返しだ。
以前は“セミ”だった。

「トンボだよ」
「赤トンボ!」

それも引くぐらいの大量のトンボに囲まれた。
決して大袈裟な表現ではない。

「相変わらず好かれてるのね!」
「あのなぁ・・・」

動物ならいざ知らず、虫に好かれることはない。
僕じゃなくても。

「そうかな?」
「そうだよ!聞いたことないよ」

でも、好かれている可能性はゼロではない。
何となく視線を感じるからだ。

(No.1205-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1204-2]線路に咲く花

No.1204-2

「これから花が咲くのかしら?」
「・・・どうだろうね」

でも、花が咲きそうな雰囲気がある。
何の根拠もないが。

「咲いたらすごいよね!」
「線路に咲く・・・花、なんてね!」

“映え”はしないかもしれなが、“萌え”はしそうだ。
少し寂し気な雰囲気も加わって。

「どんな花が咲くのかしら?」
「希望は・・・白かな」

線路内を色で表すと“茶色”だ。
線路自体はもちろん、石も褐色の物が多いからだ。

「そうね・・・白がいいね」

それが雑草なのか花なのか分からない。
でも、その生命力には驚かされる。

「電車にあれされない?」
「大丈夫だよ」

線路と線路の間に生えている。
というか、だからこそ生き残ったと言える。

「楽しみがひとつできた気分」
「ほんと、何気ないことなのに」

線路に咲く花・・・。
それがたとえ雑草だとしても。
1204
(No.1204完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1204-1]線路に咲く花

No.1204-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「あれ?」

最寄り駅の線路に一本の草が生えている。
雑草のような。

「なに?」
「ほら、あれ見てよ」

友達にも見て欲しくなった。
その理由を上手く説明が出来ないが・・・。

「草?花?」
「・・・今は分からない」

見た目は雑草だ。
今のところは。

「一本だけ、シュッと生えてるね」
「そうなんだよね」

線路内はとても綺麗だ。
もちろん、ごみは落ちてないし、草木も生えていない。

「ほんと、あれ一本だけが」
「シュッと・・・ね」

束を成して生えているのではない。
本当に、1本だけが背筋良く。

「あははw」
「確かに、背筋が伸びてるね!」

どこからか種が飛んで来たのだと思う。
行き着く先がここだとは知らずに。

(No.1204-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.542

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.648 月の欠片
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:女性

月の話自体は事実なんですが、それ以外は創作です。作者が現役の学生ではないことはホタル通信でも書いていますから、シチュエーションは全くの創作です。

とは言え、あまりにも月が幻想的で、美しさよりも恐ろしさが勝っていました。また、妖艶と言う言葉も相応しいものでした。月って見慣れているけど、時々、思いもよらない表情を見せてくれます。
そんなこんなをなぜか部活を舞台に、青春ドラマのワンシーンのような会話が展開します。創作とは言え、ちょっぴり高校時代を思い出しながら・・・。

そう言えば月をテーマにした小説は少なくありません。テーマにしやすいのでしょうね、きっと。月の満ち欠けなどを揺れ動く人の心に例えたり、怒りや悲しみなどの感情表現の代替えとして使ってみたり。
近いんだけどかなり遠い存在である月に色々と思いをはせるのは自然なことなのかもしれません。

この小説ではないけれど、私も下を向いていたことが多かったな、と昔の自分をそう振り返ります。
542
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1203-2]胸のときめき

No.1203-2

「で、どうだった?」
「そう、慌てないの!」

もちろん、操作方法を知らない。
そもそも、レコード自体、何も知らないのだから。

「とりあえず父からレクチャーを受けて」
「いつもと立場が逆転したけどね」

特にスマホなんかは私の独壇場だ。

「なんか針の付いたレバーを持ち上げて」
「・・・はり・・・って、あの針?」

問い掛けに小さくうなずく。
そう聞きたくなるのも分かる。

「どうやら針が、こうなんていうか・・・」

音を拾うらしい。
私には全く理解できないが。

「・・・最先端技術?
「いや、違うでしょw」

けど、そう見えなくない。
今まで見たことがないのだから。

「針を静かに下ろしたら、聞こえてくるのよ音楽が」
「とっても優しい音・・・だったな」

音楽通ではない私でさえ、今とは違うことが分かる。
柔らかく、そして伸びがいい。

「それで、これをテープに録音するの」
「昔の人は」

レコードの他にテープも残されていた。
山のように。

「なんか不便そうだけど・・・」
「何なの・・・この胸のときめきは!」
1203
(No.1203完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1203-1]胸のときめき

No.1203-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
便利な世の中になったものだ。
なんだか、おじさんのような発言だけど。

「ねぇ、レコードって知ってる?」
「知ってるけど実物は見たことがないよ」

私もつい最近まではそうだった。
レコードもそれを動かすプレーヤーも。

「どうしたのよ、急に?」
「レトロに目覚めた?」

決してそういうわけではない。
でも、それと似た感覚は持った。

「家の倉庫からさ」
「レコードが出てきて」

それは父の物だった。

「それっとお父さんの・・・」
「あっ!ちなみに父は健在だからね!」

この流れだと遺品のようになってしまう。
早めに誤解は解いておいた方がいいだろう。

「良かったぁ!」
「だと思ったよw」

たまたま倉庫を整理している時にそれを見つけた。
父も完全に忘れていたらしい。

「で、ついでにプレーヤーも出てきて」
「それなら聞くしかないでしょ!」

友人の言う通りになった。
倉庫の整理はいつしかレコード鑑賞に変わった。

「掃除あるあるね!」
「ほんとそうよw」

幸いにもどちらも保存状態が良好だった。

(No.1203-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1202-2]寂しくなんてない

No.1202-2

「そっか・・・」

実現しなかった理由は簡単だ。
母が亡くなった後に、その手紙を読んだからだ。

「そこで初めて知ったよ」
「そんなこと、想ってたなんて」

後悔と言うか、心残りと言うか・・・。

「最後まで母は母だね!」
「ほんと、そう思うよ」

その手紙の存在をもっと早く知って居たら・・・。
逆に後悔が残った、この俺に。

「まぁ、いいじゃん!」
「人生なんて後悔の連続よ」

急によく聞く名言を放り込んできた。
そんなの・・・分かっている。

「別にその時、言えなくても」
「今、言えばいいじゃん!」

確かにそうだ。
遅すぎるということはない。

「最高の供養にもなるんじゃない?」
「あぁ・・・」

来週早々にも実家に帰ることにした。

「照れずにちゃんと言うのよ!」
Susipakuab696app97555_tp_v
(No.1202完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1202-1]寂しくなんてない

No.1202-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「俺はそう感じたことはなかったけどな」
「記憶の中では」

母からの手紙にはこう書いてあった。
“子供たちには寂しい想いをさせてしまって”と。

「どうしてそんなこと書いたのかな?」
「多分・・・共働きだったからかな」

でも、フルタイムでがっちり働いているようではなかった。
聞いたことはなかったが、手伝い程度・・・と思っていた。

「振り返ると母がどんな仕事をしていたのか・・・」
「知らなかったんだな、と」

言い訳がましいが、子供なんてそんなものだろう。
母も積極的には話さなかったし。

「そうかもね」
「私なんか今でも知らないw」

でも、それを寂しいと感じたことはなかった。
むしろ、思春期の頃は居なくてよかったくらいだ。

「悪い子ねw」
「だな、いま思うと・・・思春期とは言え」

結局、そんな母の想いを知らずに大人になった。
そして、家を離れて働きに出た。

「母が後悔してたとしたら・・・」
「“そんなことはなかったよ”と言ってあげたかった」

けど、それは実現せずに終わった。

(No.1202-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.541

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

特別編

つい先日、小説がNo.1200になり、1000話を一区切りとするならば、1周と0.2周目を迎えたことになります。

2009年からブログを始めて、はや14年が経過したわけです。よくもまぁ、続いているなと自分でも感心しています。ただ、何度が記事にしていますが、質の低下・・・私の場合は感性の低下と言った方がいいですね、筆が進まない日々が続いています。感性が鈍ればそれは引退の時ではあるのですが、引退する勇気もなく、ダラダラと続けているのが本音です。

多分、引退・・・筆を止めるとしたら、5年後の2028年ごろになろうかと思っています。5年後に何があるか話せませんが、これが大きな区切りになると思います。人生においてかなり大きな区切りです。
振り返れば、私って子供の頃から文章が好きだったように思えます。読むよりも書くのが好きで、ポエムなんかも得意でしたw
高校の授業ではあるニュースに対して、新聞の見出しを考えるみたいなことがあって、国語の先生に絶賛されたこともありました。

ブログを始めた頃の温度感は残ってはいないものの、こうなったらとことん続けてやろう!という“野心”は持っています。そのためにも、鈍って行く感性をもう一度、磨き直さねば・・・。
19212klzds_tp_v
web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

« 2023年7月 | トップページ | 2023年9月 »