[No.1191-2]こっちを食べな
No.1191-2
「羨ましいかどうかの前に」
「わたしの話も聞いてくれる?」
友人が首を縦に振る。
余裕の表情が何とも、腹立たしいが。
「私の彼は・・・そんなこと言わない」
「でしょ~!」
正確には付き合った当初は言ってくれた。
「最初だけ、やさしいってパターン?」
「うふふ・・・浅いわね!」
さっきのお返しだ。
同じセリフを言ってみた。
「だって今は言わないって・・・」
「そうね、今は言わない」
それにはちゃんとした理由がある。
「理由?」
「そう・・・当初、言ってくれてた時・・・」
それこそ、美味しい方や量が多い方を私にくれた。
でも、それを私は“良し”とはしなかった。
「なんでよ?」
「彼にも美味しいもの、量が多い方を食べて欲しい」
だから、彼はそれを見越して何も言わなくなった。
言えば、私が断わると分かったから。
「今は彼が渡してくれた方を素直に受け取るの」
「幸せは二人で分かち合いたいからね!」
こっちが美味しいとか・・・ひとりで独占するものじゃない。
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