« 2023年5月 | トップページ | 2023年7月 »

2023年6月

[No.1194-2]風に吹かれて

No.1194-2

「知ってる?ゴーヤって案外、茎は細いのよ?」
「そうなの?あんな大きな実を付けるのに?」

私も最初、そう思った。
グングンと育ち始めても、茎の太さはそれほど変わらない

「でも、細くないと」
「風で揺れないのよね」

もし、茎が太くしなやかではなかったのなら・・・。
ツルはネットや支柱に気付けないはずだ。

「つまり・・・風で揺れるから、その時に?」
「多分、そうだと思う」

風で揺れ、ツルが周辺物に触れる。
それで、巻き付けられる場所を探り当てていると思う。

「まぁ、調べたわけじゃないけどねw」
「でも、理にかなってるよ」

確かに自然界にはそうことが多いと聞いたことがある。
だからこそ、茎はそれほど太くならない。

「ほんと、よくできた話よね」
「真剣に研究してみたらどう?」

それもいいかもしれない。
ツルは一種のセンサーと言えるだろう

「何かに応用できるかもしれないよ?」
「あははwでも、可能性はゼロじゃないよね」

彼らはツルで何を感じとっているのだろうか。
確かめたくなる。

「私にも巻き付いてくれるかしら?」

(No.1194完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1194-1]風に吹かれて

No.1194-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今年も始めた?アレの栽培は」
「もちろん!」

毎年、家庭菜園でゴーヤを栽培している。
食べるというより、育てるのが目的だ。

「簡単だし、ベランダに出るのが楽しくなる」
「夏はグリーンカーテンにもなるし」

もちろん、収穫したら食べる。
言葉の意味は少し違うが、趣味と実益を兼ねている。

「ほんとスキね」
「緑はいいわよ~」

癒しの効果もある。

「ゴーヤで癒しか・・・」
「なんか笑えるw」

確かに植物なんていくらでも種類がある。
癒しを求めるなら、もっといい植物があるだろう。

「そうなんだけど、愛おしくて」
「愛おしい?」

ツルが伸びる植物に共通して言えることがある。

「なにそれ?」
「誰に教わったわけじゃないのに」

器用にツルをネットや支柱に巻き付ける。

「まるで見えているかのようにね」
「言われてみたら確かに・・・」

気付けばアチコチでしっかりとしがみついている。

(No.1194-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.537

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.611 心にキラリ
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

嘘のような本当の話で、舗装したての道路に、スパナが埋まっていました。工事中に落としたとは思いますが、真相は謎です。

もしかしたら、工事が終わった後の、比較的、柔らかい時に誰かが落として、行き交う車で踏み固められてしまったか・・・そんな感じにも見えました。アスファルトは黒いため、スパナでなくても、特に金属類は目立ちます。それこそ、光輝いていたわけですから、気付かないわけには行きません。ですが、小説を書いてから時は流れ、再度舗装工事をした際に取り除かれてしまったようです。残念ながら今はそれを見ることができません。

当時は珍しいというか、ほんとビックリしました。道路に落ちているならいざ知らず、埋まっているわけですからね。見ようによっては芸術作品ですね、前衛的な。
平日、通勤途中に目に入ってくるわけですよ「今日も元気に埋まっています~」と言わんばかりに。スパナからそんな声が聞こえてきそうな感じでした。生き物ではない、完全に無機質な物に、会うのが楽しみでもありました。

あのスパナを見た人は、きっと友人や家族、色んな人に話していると思います。工事的にはミスがあったかもしれないけど、十分心豊かになりましたよ、感謝。

web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1193-2]赤い糸

No.1193-2

「あなたの場合はどうなの?」
「わたし!?」

私の彼とは運命的な出会いには程遠かった。
大学のサークルで“普通”に知り合った。

「ほんと普通・・・ねw」
「そうね・・・ごく普通かも」

でも、付き合い始めて分かったことがある。

「なにを?」
「あなたが言う“赤い糸”よ」

私達が赤い糸で結ばれていたとは今も思っていない。
それが“見えない”からではない。

「赤い糸って結ばれてるから出会うんじゃなくて」
「出会った後に、ふたりで紡いでいくものだよ」

最初は赤い糸なんてない。
でも、日を月を年を追うごとにふたりを結んでくれる。

「・・・なによ、それ・・・いい話じゃん」
「そう?」

運命の人は赤い糸が連れてくるんじゃない。
ふたりで紡いだ結果、結ばれていることに気付く。

「なんか、逆襲を食らった気分!」
「その糸、切ってやるぅ~!」

ふたりで紡いだ糸は、ダイヤモンドよりも硬い。

(No.1193完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1193-1]赤い糸

No.1193-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「赤い糸って信じるタイプ?」

友人が唐突に話題を振ってきた。
それも、一種の都市伝説のような話題を。

「現実的にはあり得ないことよね?」
「分かってるけど・・・ほら・・・」

何となく察しは付く。
新しい彼氏でもできたのだろう。

「運命的な出会いでもあったの?」
「分かる?!」

どう考えてもそう言う流れだろう。
白々しいほどの流れが、逆に清々しくもある。

「これってやっぱり赤い糸よね?」
「あなたがそう思うならそれでいいじゃん」

話が面倒と言うより、この手の話に興味がない。
占いや前世もこの類だ。

「絶対、赤い糸よ!」
「私には見えたもん!」

本当に見えたのなら少し友達と距離を置きたい。
まぁ、それだけ燃え上っているということか。

「切れないように大事にするのよ」
「その赤い糸」

でも、正直に言えば全く信じていないわけじゃない。

(No.1193-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1192-2]彼らには・・・

No.1192-2

「ただ、ちょっとは危険だと認識して欲しいわけよ」
「轢かれたりでもしたら可哀そうでしょ?」

人間に近すぎるのも考え物だ。
まるで危機感がない。

「危機感ね~確かになさそうね」
「さっさと逃げたらいいのに」

それどころか、近付いてくる。
もちろん、彼らは逃げているつもりだろうけど。

「今度、人間の怖さを思い知らせたら?」
「ほどほどに・・・だけど」

確かに一理ある。
じゃないと、いつか事故になる。

「大きな声でも出してみる?」
「いいかも、それ」

それなら、ビックリしてにげてくれるはずだ。
なんなら少し追いかけまわしてもいい。

「人間って怖いんだぞ~ってね」
「怖そう~w」

これくらいが、丁度良い距離だ。
人間との。

「彼らにはどんな風に見えるのかな」
「こんな私が」

繰り返しになるけど“危険人物”くらいで丁度良い。
人間を代表して、明日、ハトと対峙しよう。

「すっぴんで行ってみたらどう?」
「それ・・・どういう意味?」

(No.1192完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1192-1]彼らには・・・

No.1192-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時々、ハト達に行く手を阻まれることがある。
もちろん、意図的でないことは分かっているが・・・。

「私もある!」
「ほんと、頭に来るよね!」

確かに、そんな気持ちにならなくもない。
でも、私の場合は別の感情が沸いてくる。

「別の感情?」
「うん、この前も・・・」

自転車で走行中、目線の先に彼らが群れているのが見えた。
一応、スピードを落とし、徐行の準備は整えた。

「けど、私が近付いても」
「いっこうに逃げる気配がなくて」

結局、群れの中を掻き分けるように進んだ。
自転車の私が。

「その時、思ったんだ」
「彼らには私がどう見えているのだろうか?って」

一目散に逃げるわけではない。
だから、少なくとも敵とは見なしていないだろう。

「まぁ・・・そうだろうね」
「街中のハトなんて特にそうじゃない?」

公園なんかでは、自ら寄ってくるくらいだ。
エサを求めてだけど。

「“わぁ~見慣れた大きな物体が来た~!”って感じかも?」
「あははwかもね」

彼らにとって私は巨人以外何者でもない。
ましてや、自転車も加わると、その“迫力”は増すだろう。

(No.1192-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.536

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.603 未来への伝言
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

この話はいくつかの実話を組み合わせて作ったような小説です。なので、まとまっているような、いないような。

冒頭のスマホの話は、スマホではなく、実際は“ガラケー”が3代目からとあるメーカーさんでした。そこからスマホに変わるまでの間、ずっと同じメーカーでした。
また、パソコンもそのメーカーのものを使用していました。製品の良さって、性能だけではなく、ブランドが持つ影響力と言いますか、小説にも書いた通り、“すっぱいぶどう”の逆パターンです。

そこから話がさらに飛躍して、父親が持つウォークマンの一号機の話に変わりますが、これは完全に創作ですし、なぜ、この展開になったのか覚えていません。同じメーカーの製品ではあるものの、父親がウォークマンを持っていた事実もなく、謎ではありますが、多分、オチに相当する部分を先に思い付き、それに肉付けして行った結果だと推測します、自分で作っておきながら。

ただ、父親は音響機器が好きだったこともあり、それが自然な形で表現されたかもしれません。実際、録音されたテープ自体はありましたから。

web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1191-2]こっちを食べな

No.1191-2

「羨ましいかどうかの前に」
「わたしの話も聞いてくれる?」

友人が首を縦に振る。
余裕の表情が何とも、腹立たしいが。

「私の彼は・・・そんなこと言わない」
「でしょ~!」

正確には付き合った当初は言ってくれた。

「最初だけ、やさしいってパターン?」
「うふふ・・・浅いわね!」

さっきのお返しだ。
同じセリフを言ってみた。

「だって今は言わないって・・・」
「そうね、今は言わない」

それにはちゃんとした理由がある。

「理由?」
「そう・・・当初、言ってくれてた時・・・」

それこそ、美味しい方や量が多い方を私にくれた。
でも、それを私は“良し”とはしなかった。

「なんでよ?」
「彼にも美味しいもの、量が多い方を食べて欲しい」

だから、彼はそれを見越して何も言わなくなった。
言えば、私が断わると分かったから。

「今は彼が渡してくれた方を素直に受け取るの」
「幸せは二人で分かち合いたいからね!」

こっちが美味しいとか・・・ひとりで独占するものじゃない。

(No.1191完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1191-1]こっちを食べな

No.1191-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、のろけ話、してもいい?」
「またぁ?」

例え断っても、ねじ込んでくるからタチが悪い。
それに私だって彼は居る、一応。

「ねぇ、こんなことない?」
「例えば・・・たい焼きとか」

目線の先で美味しそうなたい焼きを売っている。

「そのたい焼きがなによ?」
「ほら、一個を分け合うことがあるじゃん」

なるほど、ひとつをシェアする・・・。
それほど仲が良いということアピールか。

「うふふ・・・浅いわね!」
「のろけポイントはそこじゃないわよ」

そこじゃない・・・。
何を聞かされるのか、逆に恐ろしい。

「半分こ、したらさぁ」
「大きい方をくれるの、私に」

・・・なるほど、そういうことか。
まぁ、良くある話だけど。

「他もそうよ、美味しい方をくれる」
「“こっちを食べなって”ね!」

確かに、嬉しくはある。
ダイエット、ウンヌンは別にしても。

「どう?羨ましい?」

それならこっちの話も聞いてもらうことにしよう。

(No.1191-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1190-2]○○○さん

No.1190-2

「確かに彼女とは・・・」
「何だよ?その疑いの目は・・・ただの同僚だよ」

とは言え言い方には気を付けたい。
ただの・・・安っぽい関係に聞こえるからだ。

「彼女、一生懸命だからさ」
「それに応えてあげたくて」

彼女の仕事は、言わば縁の下の力持ちのような感じだ。
誰かがやらなきゃならない仕事を彼女がしている。

「出会う前は、ひとりでさ・・・」
「誰にも気にされず」

勝手な想像だけど、張り合いがなかったと思う。

「それは・・・言えてるね」
「気にされてるから頑張れる・・・みたいな」

だから僕はあえて、細かい指摘をした。
良いことも悪いことも。

「最初は嫌われたよw」
「でも、そのうち・・・」

彼女の雰囲気が変わり始めた。

「だから、僕が転勤した後も、連絡は取り合ってた」
「でも、僕にも色々あって・・・」

いつの間にか連絡が途絶えてしまった。

「だから、辞める時も・・・」
「連絡がなくても当然と言えば当然だけどね」

僕のことなど記憶の片隅にもなかっただろう。
退社する、しないの決断の中では。

「私は違うと思うな、連絡しなかった理由」

同性だけにその理由が分かると言う。

「あなたに知らせるのが怖かったからよ、鈍感ね!」

(No.1190完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1190-1]○○○さん

No.1190-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「○○○さん、辞めたって知った?」
「えっ・・・そうなの!?」

○○○さんはかつての職場で同僚だった女子社員だ。
同僚とは言えど組織的にはやや複雑な間柄だった。

「ちょっと待って・・・確認してみる」

昔と違って在籍を確認するのは簡単だ。
WEBで確認できるからだ。

「・・・本当だ・・・居なくなっている」
「でしょ」

比較的、珍しい苗字だから検索も容易い。
おそらく、社内で1人しかいない苗字だろう。

「どうして・・・」
「知らないの?ほら、これ見てよ」

彼女が所属していた部門のホームページを見せられた。
自分も、ごくたまに見ていた。

「・・・統廃合」
「うん、早い話、無くなったみたい」

一般的な統廃合ならそれほど心配はしない。
でも、彼女の居た部門はそうはいかない。

「東北に統合されるなんて・・・」

彼女は北海道で勤務していた。
だから、統合するなら転勤しかありえない。

「実質・・・無理な話だよな?」
「そうね、結婚してるから」

旦那が彼女に合わせるわけにはいかないだろう。
そう簡単には。

「つまり、退職を見込んだ統廃合・・・」

じゃないとしてもそう見えてしまう。

(No.1190-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.535

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.513 行きと帰り
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

小説に出てくる橋は実在します。あえて隠す必要もありませんが、橋を隔てた海上の空港と言えば・・・。

さて、この橋は車で何度か通ったことがあります。行きつく先は空港ですから、通る理由は限られています。誰かを送ったり、逆に迎えたり。ですから、出会いもあれば別れもある・・・それを橋をテーマに大袈裟にした小説です。
実話度の通り、小説中のエピソードはほぼ創作ですが、全く何もなかったわけでもありません。行きは二人で、帰りは一人で・・・と書けばそこそこ伝わると思います。

最近はこの手の小説は書いていないように思います。創作の感性が鈍ったというより、経験が減ってきているように思えます。
良くも悪くも若い頃はがむしゃらですけど、年齢を重ねるとそう冒険も出来ません。決して悲観することではありませんが、少し物足りなさは感じます。
橋って不思議な存在です。渡る前と渡り切った後では、もちろん風景は変わりますが、何かこう・・・気持ちの面でも変わった気がすることがあります。小説に出てきたような橋ではなく、小川に掛かる小さな橋でも。

橋の向うはちょっとした未来かもしれません。数十秒先、数分先には渡り切っている自分が居るはずです。当たり前のことですが、あえて口に出してみました。

web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1189-2]田舎の色

No.1189-2

「記憶が呼び起されてるのかな?」
「どうだろう・・・」

そんな気もするが、違う気もする。
もっと複雑な何かが・・・。

「最近、特に感じるようになったな」
「みんな歳をとったせいかもしれない・・・」

両親はもちろん、この私も。
若い時と感じ方が変わった。

「そりゃそうでしょ」
「あなただって色々あったでしょ?」

長く生きていればひとつやふたつ“何か”はある。
先週、歩いた道もそうだった。

「そう言えば・・・」
「かつて母親が入院してた病院に向かってたの」

父の手術に立ち会うために。
一歩一歩、踏みしめるかのように歩いた。

「残念ながら青空も曇り空に見えたわ」
「私には」

色々な想いが重なり、色が形成されたと思う。
目に見える色、目には見えない色・・・。

「何だか哲学っぽいけど」
「分かる気がする」

決して鮮やかな色ではなかった。
でも、そこに悲しみは感じなかった。

「むしろ力強い感じがした」

そう・・・誰かが私の背中を押してくれているような。

(No.1189完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1189-1]田舎の色

No.1189-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「田舎の色?」
「田舎と言っても実家のことだけど」

先週、用事があって実家に帰った。
別に珍しいことではない。

「風景ってこと?」
「そうとも言えるし、そうとも言えない」

確かに実家に近づくにつれて風景は変わる。
分かりやすくに言えば緑が増えていくからだ。

「でも、そんな単純なことでもない」
「説明が難しいけど」

目に見える色の他に肌で感じるものがある。

「特異体質w?」
「かもしれないw」

特異体質はさておき、本当にそんな感じがする。
肌を通して色を感じる。

「まぁ、空気の質とか、匂いとか・・・」
「そんなのが影響してるのかもね」

それに“音”もそうだ。
都会では聞けない音がする。

「ちなみにどんな音?」
「小川の音とか」

先週、丁度、その音を聞いた。

「せせらぎではなくて」
「少し大きめの・・・」

これらが色を感じさせる。
なぜだか分からないけど。

(No.1189-2へ続く)

| | | コメント (0)

[No.1188-2]憧れの果物

No.1188-2

「缶詰・・・かなり絞られてくるよね」
「だろうな」

誕生日とか、特別な日に食べさせてもらえた。
缶詰だけど。

「みかんとか桃・・・とか」
「あとは・・・ん?」

どうやら気付いたようだ。

「もしかしてパイン?」
「正解!」

正解が出た以上、二つの壁の説明が必要だろう。

「もちろんよ、意味が分からない」
「ひとつめの壁は・・・」

缶詰のパインですら特別だった。
だから、小さい頃、生のパインを食べた記憶がない。

「これがひとつめの壁だよ」
「まずは生パイン」

ここを突破すると次の壁にぶちあたる。

「それなら、もうアレしかないじゃん」
「要は・・・ヘタというか葉っぱが付いた・・・」

そう、葉が付いたまま売られているパインだ。

「なかなか手が出ないよな」
「昔のイメージがあるから」

もちろん、金銭的に買えないわけじゃない。
でも、遠い記憶がそうさせているのかもしれない。

(No.1188完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

[No.1188-1]憧れの果物

No.1188-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
子供ながらに思っていたことがあった。
アレはお金持ちが食べるものだと・・・。

「なにそれ?」
「なんだと思う?」

そこに辿り着くのに壁が二つあった。

「壁が二つ?それヒントなの?」
「まぁ、ヒントと言えばヒントだけど」

さすがにこれで分かる人はいないだろう。
その食べ物は果物とだけ伝えておこう。

「果物?」
「あぁ、レアな果物じゃないぞ」

ただ、多くの人はその状態から食べていないだろう。
面倒だから。

「その状態?面倒?」
「僕も普段はカットされたのを食べてる」

量が多すぎることもある。
さすがに一人ではきつい。

「それってスイカじゃないの?」
「量も多いし、他の果物よりは面倒じゃない?」

確かにスイカもそうかもしれない。
カットされて売ってもいるし。

「でも違うんだよな」
「二つの壁、あっただろ?」

ある意味、憧れでもあった。
子供の頃は、よくて缶詰だったからだ。

(No.1188-2へ続く)

| | | コメント (0)

ホタル通信 No.534

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.506 野良猫
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

私が住んでいるマンションの敷地にその猫は居ます。すみかにしているわけではなく、縄張りとしているような感じです。

野良猫とは言え、見た感じは外来種のような・・・モフモフした毛並みで、血統はよさそうです。毛並みのせいもあり、優雅な態度が、ふてぶてしくも見えます。おまけに、顔がやや険しいこともあって。
冒頭“居ます”と書いたのは、今現在も時々見かけるからです。態度は相変わらずで、以前にもまして貫禄が付いたように思えます。やはり、人馴れはしていないようで、少しでも近付くと、勢いよく逃げて行きます。

そんな猫と私の“触れ合っていない”けど、触れ合いを描いたものです。
実家で猫を飼っていたこともあり、猫の基本的な性格と言いますか、性質は知っています。飼い猫でも自由気ままですから、野良猫になると、さらに自由でしょう。そんな野良猫と自分を対比させ何だかもどかしい胸の内を小説にしています。
もどかしい胸の内がなんなのか、それさえも良く分かっていない自分と、そんなことなどお構いなしの猫が逆にマッチしていると思っています。

そんなこともあり、ラストは気の利いたオチがあるわけでもなく何とも無機質な終わり方をさせていますが、この小説にはこれが相応しいと考えています。

web拍手 by FC2

| | | コメント (0)

« 2023年5月 | トップページ | 2023年7月 »