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[No.1172-1]そこに手すりがあるから

No.1172-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
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「ちょっと見てて!」

突然、そう言うと目の前の階段を颯爽と滑っていった。
“危ない!”と声を掛ける間もなく。

「どう?見事だった?」
「どうじゃないよ・・・」

階段の脇に幅が15cmほどの手すりがあった。
彼女はそれを小脇に抱えるように滑って行った。

「小脇に抱えるなんてw」
「じゃあ、どう表現すればいいんだよ?」

適切な言葉がないとはこの事だ。

「そうね・・・やっぱり小脇にかな?」
「だろ?」

僕もやったことはある。
けど、子供の頃の話だ。

「もう、大人なんだから・・・」

見ているこっちが恥ずかしくなる。
それに、そもそも危険だ。

「危険?学校よりはマシよ」
「小学校の時なんて・・・」

いつしか、危険自慢になった。
小学校の階段の方が“急”だったと。

「そうかもしれないけど」
「もうやめろよ」

本当にケガでもされたら大変だ。

「仕方ないでしょ?」
「そこにあるんだから」

山があるから登る・・・まるでそんなニュアンスだ。

(No.1172-2へ続く)

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