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2023年3月

[No.1176-1]知らない機能

No.1176-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ん?うそでしょ・・・」

かれこれ5年は使っている。
けど、今・・・知った。

「こんな経験ない?」
「どんな?」

昨日、自宅で画像を印刷した。
その際、プリンターのインクが無くなってしまった。

「それなら私もよく経験するわよ」
「話はまだ途中よ?」

幸いインクの替えがあったので事なきを得た。

「で、何気なく取扱説明書を見てたら・・・」

そこに衝撃的なことが書いてあった。

「えっ!?どんなことよ」
「両面印刷が出来るって・・・」

友人の顔が険しくなる。
どうやらお気に召さなかったようだ。

「は?当然でしょ、今の時代」
「私はそうじゃなかったの」

歴代のプリンターは両面印刷は出来なかった。
だから、今もそうだと思い込んでいた。

「両面印刷なんてオフィスでしかできないかと」
「まぁ・・・分からなくもないけど」

だから、知らずに5年間過ごしてきた。

「これが経験?」
「そう!似たような経験を何度もしてる」

付いていないと思っていた端子が付いていたり。
それを捨てる直前に気付いてみたり。

(No.1176-2へ続く)

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ホタル通信 No.528

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.568 物忘れ
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

本当はかなりの事実に基づいて作っていますが、テーマが薄いため、実話度はかなり低めに設定しました。

通りなれた高速道路があるのですが、真っすぐ進めば行きつけの店、分岐する道を進めば市内から市外へ・・・のような分岐点があります。会話に夢中になっていると、本来、市外へ向かうべき所を真っすぐ進んでしまいそうになることが度々ありました。
行きつけの店というくらいですから、圧倒的に真っすぐ進むことが多かったからです。そんな時、いつも「危うく真っすぐ行ってしまうところだった」と車内では、謎の盛り上がりがありますw尚、市内から市外へ・・・と書きましたが、もう少し具体的に書くと大阪から名古屋に行く時に通る分岐点です。そこは年に4回ほど通ります。
ですから、事実としてはかなり濃いのですが、見方によっては“ただそれだけ”のことです。冬のホタルではよくあることなんですが、さすがにこれは気が引けて実話度をかなり控えめにしました。

それでも“今も”、間違えそうになっています。成長していないと言うか、よほど行きつけの店の影響力の大きさと言うか・・・。

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[No.1175-2]100円の重み

No.1175-2

「今じゃ、100円以上もするコーヒーをさ」
「・・・なんだろうね、この気持ち」

それどころかもっと高価な物だって買える歳になった。
100円なんて息をするより簡単に消費してしまう。

「昔を思うと100円ってやっぱり重いよ」
「そうかもしれないね」

何気なく買った缶コーヒーが思い出させてくれた。
とても大事なことを。

「缶コーヒーに感謝しなきゃね!」
「ほんとそう」

お茶を買っていたらどうだったんだろうか?
どうでもいいことだが。

「あははw」
「違う展開が待ってたかもね!

とにかく、思いがけない日曜日の午後になった。

「あっ!忘れた」
「はい、これ」

この缶コーヒーは彼女のために買った。
手渡すまでに随分、時間が掛かってしまったが。

「私に?」
「好きだろ?この銘柄」

それにまだ肌寒い。

「温かいうちにどうぞ」
「・・・ほんと温かいね」

(No.1175完)
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[No.1175-1]100円の重み

No.1175-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
自販機で何気なく飲み物を買う。
出てきた缶コーヒーをまじまじと見つめた。

「・・・どうかした?」
「間違ったの?」

そうではない。
あることをフッと思い出した。

「子供の頃って」
「100円って大金だったよな」

でも今は、いとも簡単に消費してしまう。
缶コーヒーを買ったように。

「いきなりどうしちゃったのよ?!」

自分でもよく分からない。
急にノスタルジックになったみたいだ。

「なんでだろうね」

今も昔の100円の価値はそれほど変わらない。
でも、昔は100円あれば色々と買えた。

「駄菓子屋に行けば結構数を買えたな」
「ひとつ5円のお菓子もあったし」

だから大金のように思えるのかもしれない。
それに・・・。

「それに?」
「そんなに頻繁に貰えないだろ?お小遣い」

時々貰えた100円を握りしめて駄菓子屋に向かう。
それがどれだけ嬉しかったか。

(No.1175-2へ続く)

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[No.1174-2]私の仮説

No.1174-2

「未来?」
「そう!すごく科学技術が発達した夢とか」

だから、その仮説に行き着いた。

「で、その仮説とは?」
「夢は前世の記憶なの」

言い放った後の友人の表情が微妙だ。
呆れているような、感心しているような・・・。

「・・・なくもないわね」
「えっ!?」

意外な反応にこっちが驚いた。
この手の話には否定的なはずだが・・・。

「否定・・・しないの?」
「別に・・・だって仮説・・・可能性のひとつでしょ?」

友人の言葉に妙に納得してしまう。
自分が言い始めたことなのに。

「確かに、前世があって・・・」
「その記憶が夢となって・・・なくもないわよ」

オカルトな話ではなく、結構、真面目な仮説だ。
前世だって、DNAの記憶と言ってもいい。

「おっ!何だか本格的になってきたわね」
「最初は・・・興味なかったくせに!」

前世の記憶だから未来の夢を見ることができない。
自分で言うのも何だか、しっくりくる。

「大発見かもしれないよ!」
「学会に発表する?」

学会は冗談としても、自分なりに研究するのもおもしろい。
今日の夜から、どんな夢を見たか記録することにしよう。

「で、昨日の夢はどうだった?」
「好きな夢を自由に見られる・・・そんな未来の夢を見たよ」

(No.1174完)
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[No.1174-1]私の仮説

No.1174-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
ある仮説を立ててみた。
長年、疑問に思っていたアレについて。

「何なのよ、アレって?」
「聞きたい?」

友人が興味を示してくる。
さすが、友人。

「いやいや!さすが、じゃなくて・・・」
「無理にでも話すつもりだったんでしょ?」

もう一度、言おう。
さすが、友人。

「かもね!」
「かもね!じゃないわよ・・・で?」

話を戻すと、夢についてある仮説を立てた。
夢は大概、支離滅裂な展開が多い。

「そりゃ・・・夢だからね」
「でもさぁ、不思議に思わない?」

例えば、海外に居る夢を見ることがある。
まぁ、絶対そこが海外ときまったわけじゃないけど。

「まぁ、たまにあるよね」
「でしょ?行ったことがないのに」

行ったことがない場所、全く知らない人・・・。
どうしてそれが夢に出るのだろうか?

「それは・・・潜在意識と言うか」
「テレビで見た風景が夢に」

確かにそれは否定できない。
でも、見慣れた日常の夢を見ることは決して多くない。

「もし、潜在意識なら見慣れた景色こそ・・・」
「・・・頻繁に出てきてもよさそうでしょ?」

それに未来の夢を見ることがない。
少なくとも私は。

(No.1174-2へ続く)

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ホタル通信 No.527

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.501 車いすの少女
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:男性

読み返して見て、思い出しました。確かに当時、車いすの彼女とすれ違っていたことを。

と、言うことは・・・そうです。今はすれ違っていません。気付けば彼女が居なくなっていた・・・のではなく、私の通勤の時間帯がまた変わってしまったからです、通る道は同じでも。
かなり交通量の多い一方通行の道路でした。車もさることながら、私を含めた自転車の軍団もあっちから、こっちからの状態で、車いすの方には過酷な道路でした。恐らく、その道路を選ばざるを得なかったのだと思います。

そんな彼女とすれ違う内に、勝手に親近感を覚えたのが小説のきっかけですが、さすがに声を掛けた事実はありません。それこそ、怪しい人になってしまいますから。
でも、彼女とすれ違う時は、極力、距離を取り、スピードダウンすることを心掛けました。後半はもちろん創作ですが、結局、自分が彼女に励まされているような展開になっています。

そしてラストの1行に繋がっていくわけです。目線の先に彼女が居ないのは、うつむき加減の僕が前を見ることができるようになったからです。

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[No.1173-2]漫画の方じゃなくて

No.1173-2

「ただ、週刊の少年誌に連載してたって」
「それ・・・かなり凄いことじゃないの!」

言われてみればそうだ。
漫画家としてデビューするだけでも難しい世界だ。

「けど、驚いたのはその先なんだよ」
「えっ・・・まだなにかあるの?!」

その漫画家の代表作を調べていた時だった。

「架空の町が舞台の漫画があったんだけど」
「この展開からすると・・・もしかして」

そう、その町は地元が舞台となっていた。

「どうして分かったの?」
「漫画的には“背景”と言った方がいいのかな?」

そこには見慣れた風景が描かれていた。
私鉄の最寄り駅やよく遊んだ公園が、そこに。

「家の近くに大きな橋が架かってるんだけど」
「その河原なんかも」

知らない人が見ればただの駅や公園だ。
河原なんて、どこでもそれほど大差ない。

「めちゃくちゃ興奮したよ!」
「そりゃそうよね!」

興奮すると共に、涙が溢れ出てきた。
単なる懐かしさだけじゃない。

「私も・・・見てみたい!」
「漫画の方じゃなくて」

(No.1173完)
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[No.1173-1]漫画の方じゃなくて

No.1173-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
卒業してから地元とは疎遠になった。
別に地元が嫌いだったわけじゃない。

「どうして?」
「単純なことさ」

遠い場所で仕事を始めることになったからだ。
とは言え、国内だけど。

「確か・・・北海道だったわね?」

それもあってそう頻繁には帰ってこれなかった。

「それはそうね」
「だから、時々、地元が恋しくなって」

ネットでローカルな話題を探していた。
今の時代・・・便利になったものだ。

「ちょっとした散策もできるしなw」
「だね!」

そんな時、ある情報を知った。
どうやら、地元出身の漫画家がいると。

「漫画家!?」
「すごいじゃん!」

僕もかなり驚いた。
ある意味、芸能人よりすごいことかもしれない。

「有名な人?」
「どうだろう・・・」

漫画の世界は広い。
知らない“有名な人”なんて山ほど居る。

(No.1173-2へ続く)

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[No.1172-2]そこに手すりがあるから

No.1172-2

「とにかく!」
「分かったわよ、かたぶつなんだから」

その言葉の使い方を間違っている。
それに普通は立場が逆だ。

「逆?どういう意味?」
「僕が滑って、君に怒られるのが普通だろ?」

これが本来の姿だ。
真面目に言うことでもないが。

「それは偏見よ!」
「女子だって・・・・」

もはや偏見なのか何なのか分からなくなってきた。
ただ、繰り返すようだけど、危ない。

「せめて、やる前には声を掛けてくれよ」
「サポートするから」

サポート?・・・自分で言っておきながら恥ずかしくなる。

「ほんと!?」
「助かるぅ!」

“勢いづかせてどうする!”・・・と自分を責めたい。
でも、その方がケガされるよりマシだ。

「・・・ったく、頼むぞ」
「了解!」

今後、似たようなてすりを見つけたら要注意だ。
先手を打つことも必要だろう。

「じゃぁ、理解してもらえたということで・・・」

何だか嫌な予感がする。

「今度は、にけつして滑らない?」

いや、確かに、子供の頃、してたけど!

(No.1172完)
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[No.1172-1]そこに手すりがあるから

No.1172-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ちょっと見てて!」

突然、そう言うと目の前の階段を颯爽と滑っていった。
“危ない!”と声を掛ける間もなく。

「どう?見事だった?」
「どうじゃないよ・・・」

階段の脇に幅が15cmほどの手すりがあった。
彼女はそれを小脇に抱えるように滑って行った。

「小脇に抱えるなんてw」
「じゃあ、どう表現すればいいんだよ?」

適切な言葉がないとはこの事だ。

「そうね・・・やっぱり小脇にかな?」
「だろ?」

僕もやったことはある。
けど、子供の頃の話だ。

「もう、大人なんだから・・・」

見ているこっちが恥ずかしくなる。
それに、そもそも危険だ。

「危険?学校よりはマシよ」
「小学校の時なんて・・・」

いつしか、危険自慢になった。
小学校の階段の方が“急”だったと。

「そうかもしれないけど」
「もうやめろよ」

本当にケガでもされたら大変だ。

「仕方ないでしょ?」
「そこにあるんだから」

山があるから登る・・・まるでそんなニュアンスだ。

(No.1172-2へ続く)

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ホタル通信 No.526

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.488 銀のロケット
実話度:★★★☆☆(60%)
語り手:女性

この小説、あまり事実を書きすぎると、作者の性別や年齢が分かりそうなので、敢えてボカしておきます。

とは言え、決定打となる何かが書かれているので、その気になれば分かってしまいますが、それが事実かどうかは伏せておきます。
さて、色々と前置きが長くなりましたが、話の主軸となる、アイドルの話は本当です。その昔、たまたま訪れた音楽店でサイン会をやっており、何となくCDを買ったことがありました。小説では、私と彼が一緒に・・・となっていますが、実際は小説上の“私”、ひとりでした。

今の時代、サイン会なんてやっているんでしょうか?
昔で言うところの新人歌手と言う枠も曖昧になっている気がします。それにわざわざ音楽店を回らずとも、SNSなどのネットを駆使した方が、効果的なような気がします。ただ、偶然、出会ったアイドル歌手が売れたら売れたで嬉しい気持ちがありますね。「売れない頃に、サイン貰ったことがある!」と謎のマウントをとったりします。

後半はほぼ創作で、銀のロケットを買ってもらった事実はありません。これは単なる小説上の演出と言うか、これがないと小説が成立しなかったと思っています。

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[No.1171-2]会う老人

No.1171-2

「でも、どうしてこの話題を?」
「なんかさぁ・・・」

実は明確な理由はない。
けど、何となく人に話したくなった。

「自分の未来を重ね合わせてる?」
「それとも・・・父親とか?」

多分、どちらも正解だと思う。
老人から何かを感じ取っているのは間違いない。

「男ってそんなとこあるよね?」
「そ、そうかな・・・」

だけど、決して暗い話ではない。
むしろ、明るい話だ。

「明るい?」
「あぁ、なんか元気が出る」

別に足取りが力強いからではない。
その老人からにじみ出る何かを感じている。

「人生・・・そのものとか?」
「そうかもな」

仕事帰りの疲れた体に活力が戻ってくる。
そんな気がしている。

「飲みに行くよりいいんじゃない?」
「・・・だなw」

今日も出会えるだろうか?
その老人に。

(No.1171完)
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[No.1171-1]会う老人

No.1171-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「老人?」

ここ最近、仕事帰りに出会う男性の老人がいる。

「うん、老人」
「変わった人なの?」

この手の話題を出せばこう言う展開になる。
でも、至って普通の老人だ。

「全然、普通の人」
「そうなんだ・・・」

まぁ、こんなテンションにもなるだろう。
話の先も見えないと思うし。

「帰り道、すれ違うんだ」
「ちょっと腰が曲がってて・・・けど」

その足取りは力強い。

「散歩・・・にしては遅いよね?」
「だよな」

最近、定時に帰るようになった。
だから、いつも18時頃にすれ違ってると思う。

「なら、向こうも仕事帰りかしら?」
「さぁ・・・どうだろう」

荷物らしきものは持っていない。
つまり、手ぶらだ。

「それならやっぱり散歩?」
「かもしれないなw」

(No.1171-2へ続く)

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[No.1170-2]新発見!

No.1170-2

「そうそう!それ!」
「まぁ、表現は難しいわね」

座っていると言っても人により、想像する姿は違う。

「それで?」
「知ってた?うずくまってる時は・・・」

しっぽがだらしなく出ていないと言う。

「・・・どういう意味?」
「体に巻き付いているというか・・・」

ここは、ググってみた方が早い。
“猫 うずくまる”で良いだろう。

「・・・なるほど」
「全部じゃないけどしっぽは出ていないね」

体に巻き付いているか、収納されている。

「灯台下暗し・・・だね、確かに」

当り前すぎて気にしていなかった。
言われてみれば新発見かもしれない。

「違うわよ!これじゃない」
「違うの?!」

友達曰く、新発見は違うところにあるらしい。

「どう伝えればいいのかな・・・とにかく・・・」
「しっぽを垂らせる場所なら垂らしているの!」

いまいち、ピンと来ない。
垂らせる場所では垂らしている・・・。

「だから!わざわざ端っこにうずくまって・・・」
「もー!上手く伝えられない!」

(No.1170完)
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[No.1170-1]新発見!

No.1170-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇねぇ、聞いて!」

朝から友人がうるさい。
その理由は想像できる。

「また朝から猫ちゃんと戯れてきたの?」
「・・・タワムレル?」

いけない。
言葉を選ぶべきだった。

「遊んだの!ってこと」
「な~んだ!」

制服に動物らしき毛がびっしり付いている。
犬も猫も飼っていないのにも関わらず。

「よく分かったわね?」
「野良犬はさすがに見掛けないからね」

けど、今日はいつもとは違うテンションだ。
普段はもう少し大人しい。

「それでなに?」
「あーそうそう!新発見したのよ!」

なるほど・・・だからそのテンションなんだ。
・・・えっ?!

「新発見?!」
「灯台下暗し・・・と言うか・・・」

どうやら今になって何かを見つけたらしい。
あるいは何かを知ったとか。

「猫ってさぁ・・・座ってる・・・じゃなくて」
「ほら・・・地べたにお腹を・・・」

どうやら“うずくまっている”と言いたいらしい。

(No.1170-2へ続く)

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ホタル通信 No.525

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.487 夜のひまわり
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

詳しく書けば、マンションの駐輪場から敷地内を30秒程度走ると、小説に出てきた5mほどの短い橋があります。

その橋の中央にちょっとした花壇があり、決して手入れがされいるとは言い難いですが、時々、綺麗な花が咲いています。そんな時、夜、自転車の灯りに照らされた“ひまわり”が視界に入ってきたわけです。平日、朝晩、毎日通っているわけですから、気付かないわけはありません、特に朝は。でも、それに気付くこともなく、日々通り過ぎてきたわけです。

当時、それほど大きな悩みごとはなかったとは思いますが、周りが見えていないことが時々あるのも事実です。少し話は反れますが、これに似た事実として、更地になった場所に、どんな建物が建っていたか、思い出せないのと同じです。正確に言えば思い出せないと言うより、そもそも覚えていない・・・物理的に視界には映っていただけでしょう。
このひまわりも同じようなものです。見えてはいたけど、ひまわりとしては認識していなかったのでしょうね。

心に余裕を・・・と言うわけではありませんが、歩きなれた道、見慣れた風景でも、ちょっと立ち止まってみるのもいいかもしれません。気付かなかった“何か”がそこにあるかも。

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[No.1169-2]いつもの桜

No.1169-2

「でも、悪い気はしない」
「桜だけに」

だからこそいじりがいがある。

「でも、せっかち・・・という理由だけじゃないのよ」

その桜に何度も助けられた。
それを見る度、心が明るくなる気がした。

「それって桜の話?それとも私?」
「どっちもよw」

まだ肌寒い中、花を咲かせようとしている。

「それって・・・褒めてる?」
「もちろん!」

考えようによってはドジっ子だ。
本人を前に言えないが。

「まぁ、そう言うことにしておくわ」
「そうそう!」

その言葉に嘘はない。

「そう言えば、私、その桜見たことがない」
「そうね・・・明日、家にくる?」

幸い、明日はお互い仕事が休みだ。
桜にとってみれば、ご本人登場・・・ってことになるかも。

(No.1169完)
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[No.1169-1]いつもの桜

No.1169-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「また・・・」

それを見上げる度、ついつぶやいてしまう。

「咲いてたわよ」
「えっ!今年も!?」

自宅の近くに桜の木が植えられている。
その内の一本が今年もフライングした。

「確かに昨日は暖かかったもんね」

寒暖差を勘違いして咲いたようだ、今年も。

「感慨深い・・・じゃなくて笑っちゃうw」
「どうせ、私のことを想像してたんでしょ?」

悪いがその通りだ。
友人の性格は、まさしくその桜のようだ。

「どうせ、せっかちと言いたいんでしょ?」
「まぁ・・・ね」

でも、それだけではない。
せっかちくらいなら、他にも例えようがある。

「やっぱり!」
「何回も聞いたけど」

それにしても、いつもあの桜だ。
数ある中で、その一本だけ。

(No.1169-2へ続く)

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[No.1168-2]ゲームセンター

No.1168-2

「競い合うってw」
「で、何しに来たんだっけ?」

そうだった。
ここに来た目的を忘れていた。

「クレーンゲームよ」

流行りのキャラクターのぬいぐるみが欲しい。
是が非でも。

「えっ・・・と、どれだっけ?」
「ほら、アレよ」

取れれば目立つこと間違いない大きさだ。

「あまり得意じゃないぞ?」
「構わないわよ」

デートの途中、偶然、目に入ってきた。
そしたら、急に・・・燃えてきた。

「さすが、元ヤンチャ!」
「だからそれは昔!」

それにしても確かに変わった。
店内も明るく開放的で客層も全く違う。

「昔は真逆だったのにね」
「だな」

とにかく今は、ぬいぐるみをゲットしたい。

「じゃ、競争しない?」
「競い合うってこと?」

あえて、あの頃の言葉に置き換えてみた。

(No.1168完)
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[No.1168-1]ゲームセンター

No.1168-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「ゲームセンターも変わったよな」

彼がしみじみと言い放った。

「そもそもゲームセンターってなに?」
「そこから?!」

言いたいことは分かっている
でも、一応、突っ込んでみた。

「ゲームセンターはゲームセンターだろ?」
「今と昔は違うの!」

私も“昔の”ゲームセンターを知っている。
だからこその発言のつもりだ。

「クレーンゲームに、プリントシール」
「これが今のゲーセンよ!」

いけない・・・思わず昔のクセが・・・。

「あはは!出たな」
「言わないの!」

確かにヤンチャな時期があった。
それは否定しない。

「昔はさぁ、硬派なゲームばかりだったのにな」

それは同意する。
あるシューティングゲームにハマった時期があった。

「それアレでしょ?隠れキャラと言うか・・・」
「そうそう!ニョキニョキってやつねw」

友達と学校帰りによく寄り道した。
そこでお互いの腕を競い合ったものだ。

(No.1168-2へ続く)

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