« [No.1164-1]ストローなかまぼこ | トップページ | [No.1165-1]安否確認 »

[No.1164-2]ストローなかまぼこ

No.1164-2

「何だかすごく食べたくなってきた」
「けどさ・・・」

もちろん、通販で取り寄せれば済むことだ。
でも、祖父母の家で食べるから幻なんだ。

「かまぼこだけでなく、雰囲気とか・・・ね」

田舎だけに空気も綺麗だった。
特に朝なんて、森林の匂いがしたくらいだ。

「なるほどね・・・」
「私が思うほど単純じゃなかったのね」

全てが揃ってこその味だった。
別にグルメじゃないけど拘りたかった。

「おばあちゃんの優しさも加わって」
「分かる気がする」

だから、通販だけでは解決しない。
そもそも祖父母は他界し、家もなくなってしまった。

「それは・・・もう無理ね」
「だから幻なんだよ、ある意味」

そのため、取り寄せることをしなかった。

「でも・・・」
「どうしても食べたくなった?」

彼女の言葉に小さく頷く自分がいる。
今更、何が自分をそうさせたか分からないが。

「で、そのかまぼこって?」
「“平戸 かまぼこ”で、ググってみてよ」

(No.1164完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| |

« [No.1164-1]ストローなかまぼこ | トップページ | [No.1165-1]安否確認 »

(047)小説No.1151~1175」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« [No.1164-1]ストローなかまぼこ | トップページ | [No.1165-1]安否確認 »