[No.1164-2]ストローなかまぼこ
No.1164-2
「何だかすごく食べたくなってきた」
「けどさ・・・」
もちろん、通販で取り寄せれば済むことだ。
でも、祖父母の家で食べるから幻なんだ。
「かまぼこだけでなく、雰囲気とか・・・ね」
田舎だけに空気も綺麗だった。
特に朝なんて、森林の匂いがしたくらいだ。
「なるほどね・・・」
「私が思うほど単純じゃなかったのね」
全てが揃ってこその味だった。
別にグルメじゃないけど拘りたかった。
「おばあちゃんの優しさも加わって」
「分かる気がする」
だから、通販だけでは解決しない。
そもそも祖父母は他界し、家もなくなってしまった。
「それは・・・もう無理ね」
「だから幻なんだよ、ある意味」
そのため、取り寄せることをしなかった。
「でも・・・」
「どうしても食べたくなった?」
彼女の言葉に小さく頷く自分がいる。
今更、何が自分をそうさせたか分からないが。
「で、そのかまぼこって?」
「“平戸 かまぼこ”で、ググってみてよ」
| 固定リンク | 0
「(047)小説No.1151~1175」カテゴリの記事
- [No.1179-2]カモとゴミ(2023.04.13)
- [No.1175-2]100円の重み(2023.03.28)
- [No.1175-1]100円の重み(2023.03.26)
- [No.1174-2]私の仮説(2023.03.24)
- [No.1174-1]私の仮説(2023.03.23)
コメント