[No.1163-2]吼えない犬
No.1163-2
「それは凄いね・・・」
「だから、売れ残ったんだと思う」
なかなか買い手がつかなかったようだ。
気性の荒さと言うか、吼え癖のせいで。
「それでも何度か帰っていたら」
徐々に吼える時間が短くなって行った。
そして、ついには・・・。
「吼えなくなった?」
「そうね、ほとんど」
それどころか、リードを見せると寄ってくるようになった。
そして、散歩に連れ出すことにも成功した。
「すごい進歩!」
「だよねw」
でも、ここ1年くらいで状況が大きく変化した。
「1年前に帰った時・・・全く吼えなくて」
「立ち上がってもヨロヨロするばかりで」
人間で言えばもうおじいちゃんのはずだ。
だから、年相応とは思っていた。
「で、先週、帰ったら・・・」
部屋に入っても吼えられるどころか寝たままだった。
あれだけ、敏感だったのに。
「ようやく目を覚ましても・・・何か・・・ね」
「元気が無かったのね?」
一度も立ち上がることなく私を見つめたままだった。
「昔のことを思い出すとね・・・」
吼えてもらった方が、嬉しい時もある。
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