« [No.1163-1]吼えない犬 | トップページ | ホタル通信 No.522 »

[No.1163-2]吼えない犬

No.1163-2

「それは凄いね・・・」
「だから、売れ残ったんだと思う」

なかなか買い手がつかなかったようだ。
気性の荒さと言うか、吼え癖のせいで。

「それでも何度か帰っていたら」

徐々に吼える時間が短くなって行った。
そして、ついには・・・。

「吼えなくなった?」
「そうね、ほとんど」

それどころか、リードを見せると寄ってくるようになった。
そして、散歩に連れ出すことにも成功した。

「すごい進歩!」
「だよねw」

でも、ここ1年くらいで状況が大きく変化した。

「1年前に帰った時・・・全く吼えなくて」
「立ち上がってもヨロヨロするばかりで」

人間で言えばもうおじいちゃんのはずだ。
だから、年相応とは思っていた。

「で、先週、帰ったら・・・」

部屋に入っても吼えられるどころか寝たままだった。
あれだけ、敏感だったのに。

「ようやく目を覚ましても・・・何か・・・ね」
「元気が無かったのね?」

一度も立ち上がることなく私を見つめたままだった。

「昔のことを思い出すとね・・・」

吼えてもらった方が、嬉しい時もある。

(No.1163完)
読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ
ブログランキングへ にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ web拍手 by FC2

| |

« [No.1163-1]吼えない犬 | トップページ | ホタル通信 No.522 »

(047)小説No.1151~1175」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« [No.1163-1]吼えない犬 | トップページ | ホタル通信 No.522 »