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2022年11月

[No.1150-2]嬉しい言葉

No.1150-2

「・・・どうしたの?」
「考えごと?」

いけない。
考えごとが顔に出ていたようだ。

「まぁ・・・考えごとと言えば考えごとかな?」
「悩みごと?」

悩みごとではない。
けど、強いて言えば贅沢な悩みごとかもしれない。

「そのコートさぁ・・・」
「誰が買ったんだっけ?」

彼女がキョトンとした顔をしている。

「誰って、あなたでしょ?」
「そ、そうだよな・・・」

彼女は嘘を付いていない。
純粋な声なんだ。

「ふ~ん・・・何だかさっきから様子が変よ?」
「なんでもないよ」

コートを買ったのは間違いなく彼女だ。
でも、そのお金は僕が給料として稼いだものだ。

だから“あなたに買ってもらった”と彼女は言うのだ。

(No.1150完)
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[No.1150-1]嬉しい言葉

No.1150-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
時々、彼女が口にする言葉がある。
間違っているけど、正しくもある。

「ん?どうしたの?」
「なんでもないよ」

その言葉に気の利いた返事をしたことはない。
いつも良い意味でスルーしている。

「寒くなってきたね」
「だね」

数日前から急に寒さが増してきた。
だから、衣替えも急ピッチで進んだ。

「これ暖かいんだよ!」
「良かったね!」

それはベージュのハーフコートだ。

「前のが傷んじゃったからさ!」
「先月買っておいたの」

嬉しそうな彼女を見ると僕も嬉しくなる。
急な寒さも時には悪くない。

「大事に着るね!」
「うん!」

とは言え、僕が直接買ってあげたものではない。

(No.1150-2へ続く)

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[No.1149-2]壮大な言い訳

No.1149-2

「その通り!」
「でも、本当の問題はもう少し先にあるのよね」

実は交差点を渡るルートが他にもある。
けど、横断歩道を渡るよりも、かなり時間が掛かる。

「だから、普通は横断歩道を渡るの」
「そりゃ、そうよね」

ただ、横断歩道の途中で赤に変わると話が変わる。
そこで足止めをくらうことになるからだ。

「つまり、結果的に別ルートの方が早いと?」
「そう!それ!」

すごく損をした気分になる。
たかが、信号ごときだけど。

「・・・まぁ、気持ちは分からなくもないけど」
「話がムズいよ!」

確かに説明が難しい。
状況が伝わらないだけに。

「一度、体験したら分かるわよ」
「誰かに話したくなるから」

実際、さっきもそうだった。
渡り始めた途端、赤に変わった。

「えー!って感じだったよ!」
「ん?」

友達が神妙な顔になっている。

「まさか・・・これが待ち合わせに遅れた理由?」

(No.1149完)
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[No.1149-1]壮大な言い訳

No.1149-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
待つか渡るか・・・咄嗟に判断しなければならない。
ちょっと大袈裟だけど。

「何の話?」
「横断歩道の話」

家の近くに交差点がある。
高架下の、かなり複雑な交差点だ。

「そこの横断歩道が長くて」
「渡りきるのに時間が掛かるんだよね」

そのため、青信号は長めに点灯している。

「それなら問題ないじゃない?」
「それがそうでもないの」

その横断歩道の信号は近づかないと見えない。
それが問題だ。

「どういうこと?」
「つまり・・・」

遠くからだと見えない。
だから、いつ信号が青になったのか分からない。

「そりゃそうだけど、いまいち、意味が・・・」
「そこで登場するのが、待つか渡るかだよ!」

青信号なら渡ればいい。
でも、いつ青になったか分からない。

「・・・だから、途中で赤に変わる?」
「渡りきるのに時間が掛かる横断歩道だもんね」

正解ボタンがあれば押してあげたい気分だ。

(No.1149-2へ続く)

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ホタル通信 No.515

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.469 雨女の真実
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

冬のホタルの定番中の定番である雨女・雨男の小説ですがオチがイマイチ理解できません、自分で作っておきながら。

家を出て数分後に雨が降る・・・これは今でも続いています。冗談ではなく、それこそ「私と雨」というタイトルで学会に発表したいくらいです、大袈裟ですがwそれくらいタイミングよく雨が降ってきます、憎らしいほどに。
ですが、よくよく考えてみると、私と同じ時間に家を出る人は世の中にはごまんと居るはずです。そう考えると、その中に本当の雨女が居るかもしれない・・・それが今回の小説です。

小説は上記のような展開で話が進んで行きます。もちろん、オチに向かって。でも、いざふたを開けてみると、何がオチなのか、何度か読み直してもどうもハッキリしません。多分、「それだけの時間があれば」世の大勢の人が家を出る、だからその中に本物の雨女が混じっている可能性がある、と言いたいような違うような・・・それなら、なぜ「自転車でしょ?」というセリフをわざわざ入れたのか謎です。

たまに、自分で作っておきながら、意味不明になっている小説があります。でも、これも冬のホタルの醍醐味かなw

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[No.1148-2]力強いお湯

No.1148-2

「あること?」

実は薪のお風呂で思い出すのは薪ではない。

「薪の匂いの記憶なのに?」
「うん、それよりも」

薪で焚かれた水・・・つまり、お湯だ。

「珍しいな、お湯が思い出なんて」
「なんて言うのかな・・・」

薪で炊かれた水は、どこか力強く感じる。
いや、絶対、何かが違う。

「その表現、新しいなw」
「そうね、私もそう思う」

単なる気持ちの問題かもしれない。
薪のお風呂に入っている・・・それがそんな気持ちにさせる。

「でもね・・・芯まで温まるの」
「心も体もね」

そんな匂いがさっきしてきた。
どこからともなく・・・。

「薪のお風呂があるとか?」
「それはないでしょw」

近くに銭湯はない。
ましてや、そんな家もあるわけがない。

「単なる秋の匂いなのかな・・・」
「今度、行こうよ!そんな場所に」

(No.1148完)
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[No.1148-1]力強いお湯

No.1148-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
気のせいだろうか・・・懐かしい匂いがした。

「懐かしい匂い?」
「うん、薪のね」

友人がキョトンとしている。
ちょっと唐突過ぎたのかもしれない。

「薪が焼けるというか、火の匂いというか・・・」

うまく説明できない。
頭の中ではある光景が浮かんではいるが。

「それならその光景を言えばいいじゃん」
「素直に」

それもそうだ。
あえて遠回しに言う必要もない。

「お風呂・・・薪のお風呂・・・」
「えっ!?」

祖父母の家は薪のお風呂だった。
それこそ、時代劇に出てきそうな代物だった。

「煙突も付いてて」
「ほら、ここ・・・火傷の跡」

はしゃぎ過ぎて、ひじが煙突に触れてしまった。
良くも悪くも、その痕跡がここに残っている。

「楽しかったな」
「・・・光景が目に浮かぶよ」

匂いだけではなく、あることも思い出される。

(No.1148-2へ続く)

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[No.1147-2]ハートの形

No.1147-2

「それだよ、それ!」
「直接的な答えじゃないけど」

何だか謎解き風な展開になってきた。
彼がストレートに言わないからだ。

「手作りが嬉しいってこと?」
「それもあるけど、ほら・・・」

多分、褒められているとは思う。
けど、答えが見えず、イライラしてきた。

「もう!ハッキリ言ってよ・・・」
「じゃあ、言うよ・・・」

一応、緊張してみる。

「形だよ、ハンバーグの」

しまった・・・。
手作りとは言え、形が雑だったようだ。

「ごめん!変な形だよね?」
「変?謙遜しちゃって!」

ゴール直前で振り出しに戻された気分だ。

「いや、だから、意味分かんない・・・」

照れる、変な形、謙遜・・・更に混乱してきた。

「ハンバーグ、ハートの形にしたんだろ?」
「ハート!?えっ・・・き、気付いちゃった・・・」

彼は気付いていない。
たまたまそのような形になってしまったことを。

(No.1147完)
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[No.1147-1]ハートの形

No.1147-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「照れるなぁ~」
「ん?なにが?」

彼と紅葉を見に出掛けた。
ついでにお弁当を作って。

「またまたとぼけちゃって!」

何やらひとりで盛り上がっている。
よほど私のお弁当が美味しいらしい。

「そんなに美味しい?」
「味か?それは言うまでもなく」

普段から料理はしている。
それに毎日お弁当も作っている、自分用に。

「そう・・・それならなによ」
「照れるって?」

会話が噛み合っていないことは何となく分かる。

「ほら、これだよ、これ!」

彼がおかずのハンバーグを指差した。
それは手作りのミニハンバーグだ。

「それが?」

自分で言うのも何だが、至って普通のハンバーグだ。
これといった特徴はない、強いて言うなら・・・。

「まぁ、手作りだから・・・」

でも、変だ。
その程度なら彼が“照れる”必要はないはずだ。

(No.1147-2へ続く)

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ホタル通信 No.514

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.467 気を付けて!
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

これぞ、日常を切り取った小説でしょうね。自分で言うのも何ですが。

公園ではありませんが、ちょっとした憩いの場があり、そこに続く小道があります。そのあたりは、野良猫の住処になっており、小説のような出来事がよく発生する場所でもあります。
野良猫と言っても完全な野良ではなく、地域猫ほど人には慣れていないような状況です。警戒心が強い猫が居ると思えば全く無警戒な猫も居ます。ある意味、うまく共存できている感じがしています。

そんな中、堂々と小道の真ん中で寝そべっている猫もおり、そこを通る時はかなり慎重に自転車を漕いでいます。
時には急に飛び出してくることもあり、いつでも急停止できるスピードであることは言うまでもありません。
そんな彼らと出くわすと、一言、言いたくなります。表向きは怒っていたりしても、内心、可愛くて仕方ありません。人懐っこい猫は擦り寄ってきますから、気が付けば自転車から降り、彼らの目線になっている自分がいます。
動物、それも猫を扱ったものは多いと思います。極端な猫好きではありませんが、実家で飼っていたこともあり、つい、交流を持ってみたくなります。

これから寒い時期に入ってきます。
心配する必要はありませんが、暖かい場所を見つけて、無事過ごしてね、ネコちゃんたち。

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[No.1146-2]だから、それを

No.1146-2

「もしかして・・・」
「うん、多分考えている通りだよ」

母が亡くなる半年前・・・・それがあの日だ。
そう、ガラクタを渡された日だ。

「その時は完治してたって聞いてたんだ」
「ガン・・・だったよね?」

難しい場所だったけど早期発見が功を奏した。
だから、安心していた。

「もちろん、病気が病気だけに」
「気にはしてたけど」

術後、数日で退院し、見舞いにも行けなかったほどだ。
それだけ順調だった。

「だからガラクタを受け取った時」
「特に何も考えてなかったんだ」

その数か月後、再発を聞かされた。
それだけじゃない・・・。

「余命を告げられて・・・さ」
「・・・隠してた?」

それしか考えられないほどの進行の早さだった。
もちろん、母が一番知っていたことだろう。

「だから、それを俺に・・・」

(No.1146完)
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[No.1146-1]だから、それを

No.1146-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
母が亡くなった後にある重大なことに気付いた。

「何だか重そうな話ね」
「ごめん、ごめん、そこまでは・・・」

生前、実家に立ち寄った時の話だ。
幼い頃のガラクタを渡された。

「ガラクタ?」
「あぁ、下手くそな絵とか」

何だか分からない陶器のような物もあった。
どうやら幼稚園の時の作品らしい。

「よくとっておいたわね」
「ほんとだよ」

この年になるまで全く知らなかった。
その存在を。

「まぁ、言う機会もなかったと思うけど」
「どうして?」

卒業後、実家を離れて働きだした。
それも相当遠い場所で。

「確かに」
「だから、そうそう実家にも寄れなかったし」

そんなこんなで言う機会を失っていたと思う。
でも、その機会が巡ってきた・・・皮肉なことに。

(No.1146-2へ続く)

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[No.1145-2]思い出のラジオ

No.1145-2

「チープなもの?」
「当時はそう思わなかったけどな」

音が出ただけで感動した。
自分専用のラジオだったことも大きい。

「あまり綺麗に受信できなかったけど」
「それでも毎日、聞いたものさ」

ヘッドホンではなく、片耳のイヤホンで聴く。
昔ながらのあの肌色のイヤホンだ。

「レトロだねw」
「ほんとだよ」

振り返ると、子供向けの簡易的なラジオだ。
AMしか入らなかったし。

「知ってる?ラジオってさ」
「数個の部品で何とかなるんだよ」

大袈裟かもしれないが、そんな感じだ。
特に安物のラジオは。

「だから、僕のラジオも」
「中身はスカスカだったw」

一度、興味本位で分解したことがあった。
素人でも簡単に分解できた。

「じゃ、原点はそこにあるのね」
「今の仕事に通じてるでしょ?」

その言葉に大いに気付かされた。
確かにエンジニア人生はそこから始まったかもしれない。

(No.11450完)
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[No.1145-1]思い出のラジオ

No.1145-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ラジオ持ってるのね?」
「あぁ、災害に備えてね」

ラジオは今でも災害時の強い味方だ。
でも、出来ればお世話になりたくはない。

「へぇ~感心、感心!」
「そのツマミを回して電源入れて」

ついでだ、正常に動くかどうか確認しておこう。
電池が切れている場合もあるからだ。

「これね・・・」
「大丈夫!なんか聞こえてきたよ」

とりあえず、問題なさそうだ。
いざと言うときに使えない・・・あるあるだ。

「その小型のラジオを見ていると」
「思い出すことがあるんだ」

それはラジオを初めて手にした時のことだ。
自分専用のラジオとして。

「中学生になった時」
「ある雑誌の付録に・・・」

ラジオが付いていた。
付いていたというより、年間購読に対する景品だった。

「すごいね、ラジオなんて」
「そう思うだろ?普通」

でも、それほどの物ではなかった。
今、考えると。

(No.1145-2へ続く)

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ホタル通信 No.513

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.553 森のにおい
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:男性

におい系の小説は、それがストレートに伝わらないので難しい部類に入りますが、そもそも自己満足の小説ですから、関係ないのかもしれませんw

さて、概ね、書いてあることは事実ですし、今でもそう感じています。大阪から名古屋に向かう中間辺りにそのパーキングがあり、今でも行き帰りの休憩スポットです。
山の中・・・とまでは行きませんが、見晴らしもよく、自然の中に居る感覚は十分あります。ただ、小説のように辛うじて自販機が・・・のような場所ではなく、食事も出来るし、お土産屋さんもあります、それほど大きくはありませんが。

どこか湿っぽくて、それでいて清清しい・・・まさしく森の呼吸の匂いを嗅いでいる感覚です。
私にとってこの匂いは、小説に書いてあるとおり、祖父母の住んでいた場所の匂いそのものです。単に、良い匂いがするというだけではなく、記憶がくすぐられる感覚です。そう考えると、匂いも立派な記憶のひとつだと思います。

これからの季節、春とはまた違った行楽が楽しめます。紅葉もいいですが、空気の綺麗な場所で、思いっきり深呼吸してみるのもいいかもしれません。

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