[No.1141-2]金木犀のころ
No.1141-2
「匂いは印象的だけど花は・・・ね」
鮮やかだけど小さい。
花と言うより、小さな実のように見える。
「地味と言うか、控えめと言うか・・」
だから、パッと見で金木犀だと気付かない。
それがキョロキョロする原因でもある。
「でもこの匂いを嗅ぐと色々思い出すの」
「色々?」
何かの出来事を具体的に思い出すのではない。
説明が難しいが、何かモヤモヤしてくる。
「不鮮明だけど確実に」
「それ、確かに説明が難しいわw」
だから今時期はやや気持ちが不安定になる。
この匂いでこうなる人はそう居ないだろう。
「そうでもないよ?」
「・・・まさか、あなたも・・・」
友人が小さくうなづく。
「何年の付き合いになるのよ、私たち?」
楽しいことも辛いことも共有してきたことを忘れていた。
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