[No.1133-2]緑の座席
No.1133-2
「寂しい?」
「あぁ、高校の時はほぼ毎日乗ってたわけだし」
大袈裟ではない。
クラブ活動をしてたし、バイト先もこの電車で通った。
「だから土日も、夏休みとかも」
「・・・そうだったわね」
その内、何十日は彼女と一緒だった。
目の前に居る、彼女と。
「だから青春の象徴と言うか・・・」
「あら、随分とロマンチストなのねw」
昔は、一緒に帰ることにも一苦労だった。
今のように直接連絡も取れるわけではなかったし。
「話は変わるけど、彼氏は?」
「話、変わりすぎw」
彼氏どころか、結婚しているかもしれない。
「答えは・・・ほら、これよ」
彼女が左手を僕に見せる。
そこには・・・。
「・・・そうなんだ」
「何よ~!そのリアクション」
同窓会の帰り道がたまたま一緒になっただけだ。
その二人が昔、付き合っていたに過ぎない。
「あなたは実家に?」
「あぁ」
座席にはもう一つ変わったところがある。
彼女は気付いているのだろうか。
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