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2022年9月

[No.1137-1]子供のように

No.1137-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「う~ん、もぉ!」
「あら?珍しく不機嫌ね」

そりゃ、不機嫌にもなる。
この雨じゃ・・・。

「雨?」
「そうよ、この雨よ!」

別に雨そのものが悪いとは思っていない。
この雨のせいで・・・。

「見てよ、これ」
「これって・・・靴がどうしたの?」

大雨で靴が濡れた。
まぁ、大雨じゃなくても靴は濡れるが。

「濡れてはいるよね」
「そりゃ、雨が降ってるからね」

問題はその先にある。
この場合、見せるより、聞かせた方がいいだろう。

「聞かせる?」
「そう!いい、聞いててよ」

その場で足ふみをした。
小刻みに何度も。

(No.1137-2へ続く)

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ホタル通信 No.509

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.461 見覚えのある電車
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

読み返してみると、何だか思わせぶりと言いますか、深みがあるっぽく作られていますね。

この話、事実もそこそこ含んでいますが、かなり脚色しています。たまたま飛び乗った電車の部分は事実ですが、これを少しドラマティックに仕上げようと思い、過去の体験を織り交ぜたような構成にしてあります。
繰り返すと、確かに電車には飛び乗った。そして、その電車は思いで深い電車だった・・・ここまでは事実です。従って、学生時代のクラスメートに偶然会う、そしてラストの“彼”の話は創作になります。

このような構成にしたのに大きな理由はありませんが、この電車が特別なものであったのは間違いありません。
そこから、端を発して、尾ひれ背ひれが付いて行きました。当初、“彼”が他界しているという設定はなかったのですが、何となく“ぽい”雰囲気を出すためとラストの文章として、比較的しっくりくるので、こう仕上げました。今と違い、当時はこんな雰囲気の小説が多く、へたくそだけど勢いだけはありましたね。

もちろん、今でもこの電車は特別です。この電車、駅にまつわる話をいくつか書いてありますので、よければ探していただければ。

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[No.1136-2]流され橋

No.1136-2

「徒歩なら・・・30分くらいかかるかな」
「そんなに!?」

近くて遠い・・・まさしくこのことだ。

「で、話を戻すと」
「その橋が・・・」

台風や大雨で、頻繁に流されていた。
なんせ木造の貧弱な橋だったから。

「怖っ!」

ただ、そんな貧弱な橋もしぶとい一面があった。

「しぶとい?」
「うん、何度も復活するの」

流されてもすぐに架け直されていた。
簡素な構造がゆえに。

「それなら、鉄製の橋でも架けたらいいのにね」
「言えてるw」

でも、後で聞いた噂によると・・・。
わざと流されるように作られていたらしい。

「そうなの?」
「理由はよくわからないけど」

安全上の・・・ということらしい。
下手に耐えるより、あえて壊れるように。

「理解できるような、できないような・・・」
「私もそうよ」

ちなみに、その橋は今はもうない。
代わりに流されようがない大きな橋が近くに架かっている。

(No.1136完)
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[No.1136-1]流され橋

No.1136-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
通称“流され橋”
そう呼ばれていたことを随分と後から知った。

「なにそれ?」
「その言葉通りよ」

台風の季節になると思い出す。
その橋のことを。

「流される橋?」
「うん、流されちゃうの、台風の時とかに」

実家のすぐそばを大きな川が流れている。
昔、そこに木造の橋が架かっていた。

「えっ!?木なの?」
「そう、全部、木」

人や自転車がかろうじて通れる橋だった。
極端に言えば、単なる板が置いてある感じだ。

「柵も手すりもなくてさぁ」
「子供心に怖い橋だったな」

ある意味、知る人ぞ知る橋だった。
地元のごく一部の人しか利用していなかった。

「なんだか、おっかなそうだね」
「ほんと、そうよ」

できれば使いたくない橋だった。
でも、そうも言ってられない事情もあった、

「事情?」
「うん、対岸に行こうとしたら・・・」

その橋を使えば、数分程度で行ける。
でも、使わなかったら・・・。

(No.1136-2へ続く)

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[No.1135-2]泪のムコウ

No.1135-2

「好きな人でもできた?」
「ううん」

私の聞き間違いだろうか?
私には否定しているように聞こえたのだが・・・。

「それって、好きな人は居ないってことよね?」
「そうよ、そう答えたつもり」

混乱してきた。
確か、人を好きになると・・・なんて言ってたはずだ。

「どういうこと?」
「その言葉通りよ、苦しくなるってこと」

・・・の割には好きな人が居ないという。
試されてる?それとも新手のジョークなのか?

「いやいや!意味わかんない!」
「そう?」

ふざけている様子はない。
それに真顔はさっきから変わらない。

「一般論よ、一般論!」
「なにそれ?!」

ここに来て一般論だと言ってくる始末だ。

「なら最初からそう言いなさいよ!」
「・・・ん?泣いてる・・・の?」

(No.1135完)
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[No.1135-1]泪のムコウ

No.1135-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、恋バナしていい?」

友人が真顔で聞いてきた。

「い、いいけど・・・何かあったの?」
「ううん、そうじゃないんだけど」

と言うものの何かあったはずだ。
普段、恋バナなんてしたことがないからだ。

「珍しいわね、そんなキャラじゃないのに」
「私も一応、乙女だからさぁ!

とにかく耳を傾けることにした。
友人らしからぬ真顔が気になるからだ。

「不倫はダメだからね!」
「まだ何も言ってないよ!」

とりあえず先制パンチを繰り出しておいた。

「人を好きになるって苦しいよね」
「・・・はぁ?」

哲学風な言葉に思わず声が出てしまった。
やや呆れた声が。

「はぁ?じゃないわよ!」
「ごめんごめん、つい・・・w」

真顔だけに笑いがこみ上げてくる。

(No.1135-2へ続く)

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ホタル通信 No.508

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.567 雪の壁
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

振り返ると「あった!あった!」と思わず声をあげてしまいそうになる小説です。一部を除いてほぼ事実です。

小説では北海道に5年ほど・・・とは書いていますが、実際はもっと住んでいました。仕事の都合と言いますか、新入社員としての配属先が札幌でした。
寮生活が始まり、初めての銀世界に浮かれて散歩に出掛けたのはいいですが、迷子になり、大袈裟ですが街中で遭難しそうになりました。
今、自分がどこに居るのか全く方向が分からなくなり、結構な時間、さ迷った記憶があります。

で、さんざん迷った挙句、気が付けば寮の近くまで戻ってきていました、焼肉屋の匂いに誘われるかのように。とにかく、この経験から、雪道でフラッと散歩に出掛けるのは危険だと分かり、その後はキチンと目的を持ち、自分の位置を把握できるよう気をつけるようになりました。
温暖化の影響でしょうか・・・今は昔ほど雪の壁は高くはありませんが、もし、雪国に転勤することになったら、雪をなめてはいけませんよw
まぁ、今の時代、スマホがありますから、迷子にはならないと思いますが。

でも、ほんと迷子になった時は焦りましたね・・・日は暮れてくるし、寒いし、お腹は減るし。それにしてもこの経験が、小説のネタになるなんて。何事も経験はするものですね。

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[No.1134-2]トンボの舞

No.1134-2

「トンボかぁ!」

数匹のトンボが秋空を舞っている。
赤トンボ・・・のようだ。

「よく見つけたね」
「さっきから、ウロウロしてたで」

どうやら僕の頭上を飛んでいたらしい。

「赤トンボに好かれてたんやね!」
「あははwかもしれないな」

いや・・・実際、動物にはモテている。
もしかしたら、虫にも。

「なら、キスされたかもなw」
「なるほど!」

まぁ、そんなことはない。
でも、ノリでそう応えてしまった。

「だったら強烈なキスだったな」
「痛いほど」

それにしても突然のことでビックリはした。

「もてる男はつらいw」
「ほんまやね」

珍しく同意している。
怪しいくらいに。

「じゃあ、うちもおでこにする!」

(No.1134完)
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[No.1134-1]トンボの舞

No.1134-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「痛っ!」
「どないしたん!?」

そう言われても答えようがない。
何が起こったのか、僕にも分からないからだ。

「いてて・・・」
「おでこに何か当たったぞ」

場所的に小枝かもしれない。
周りに木が生い茂っているからだ。

「上から落ちてきた?」
「いいや、違うみたいやで!」

どうやら上ではないらしい。
じゃ、前から飛んできたのだろうか?

「風で飛んできた?」
「違う、違う!」

じゃあ、どこから・・・。
あたりをキョロキョロしてみる。

「小枝とちゃうねん!」
「えっ!?違うの?」

それなら、小石だろうか。
もしかして、通り過ぎた自転車が跳ねて行った?

「あれ、見てみぃ!」

彼女が空を指さした。
なるほど・・・こいつが犯人か。

(No.1134-2へ続く)

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[No.1133-2]緑の座席

No.1133-2

「寂しい?」
「あぁ、高校の時はほぼ毎日乗ってたわけだし」

大袈裟ではない。
クラブ活動をしてたし、バイト先もこの電車で通った。

「だから土日も、夏休みとかも」
「・・・そうだったわね」

その内、何十日は彼女と一緒だった。
目の前に居る、彼女と。

「だから青春の象徴と言うか・・・」
「あら、随分とロマンチストなのねw」

昔は、一緒に帰ることにも一苦労だった。
今のように直接連絡も取れるわけではなかったし。

「話は変わるけど、彼氏は?」
「話、変わりすぎw」

彼氏どころか、結婚しているかもしれない。

「答えは・・・ほら、これよ」

彼女が左手を僕に見せる。
そこには・・・。

「・・・そうなんだ」
「何よ~!そのリアクション」

同窓会の帰り道がたまたま一緒になっただけだ。
その二人が昔、付き合っていたに過ぎない。

「あなたは実家に?」
「あぁ」

座席にはもう一つ変わったところがある。
彼女は気付いているのだろうか。

(No.1133完)
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[No.1133-1]緑の座席

No.1133-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「この電車も変わったよな?」
「そうかしら?」

いや、かなり変わった。

「ドアのところにボタンがあるし」
「昔は二人掛けの座席はなかっただろ?」

通路に平行に並ぶ座席・・・。
ごく一般的な作りの電車だった。

「行先表示のディスプレイだってあるし」
「言われて見れば・・・」

まぁ、地元ならではの反応だろう。
変化に気付き難い・・・地元あるあるだ。

「特に変わったのが座席だよ!」
「さっき言ってたよ?」

二人掛けのことじゃない。

「色だよ、色!」
「色って・・・何の?」

やはり、気付いていないらしい。
もう一度言うが、地元あるあるだ。

「座席に決まってるだろ」
「昔は緑一色だったよな?」

原色の緑ではなく、エメラルドグリーンだ。
誇張すれば。

「あははw」
「でも、確かにそうよね」

それが今ではカラフルな模様に変わった。
それが何だか寂しくもある。

(No.1133-2へ続く)

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ホタル通信 No.507

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.583 知れば知るほど
実話度:★★★★★(100%)
語り手:女性

読み返してみると、随分、艶っぽい話ですね。それに実話度100%です。ドラマじゃあるまいし・・・でも事実なんです。

ただ、ひとつだけで事実ではないことがあります。事実ではない・・・というより、何かが“逆”になっています。
100%のお決まりでもありますが、作者は語り手である女性か、相手の男性のどちらかです。つまり、これが逆の可能性があります。作者が男性で、立場を変えて小説にした・・・さぁ、混乱して来ましたよねw

実話度100%ですから、小説の通りです。
小説では友達以上恋人未満という表現を使っていますが、実はこの表現は微妙で、友達だった期間がなく、いきなり、それを飛び越したような関係でした。
ちょっとニュアンスは違うかもしれませんが、いわば同志のような繋がりから発展して行きました。同じ職場で働いていましたが、彼が大阪に転勤になり、その後を追うように私も大阪に転勤になり、部門は違えど近い距離で仕事をすることになりました。この偶然が私たちの距離を縮めたのは間違いありません。

さて、最後に気になるのは今はどうなの?と言うことです。
(変な意味ではなく)関係は続いています。ただ・・・その関係が何とも不思議というか、笑えないというかw

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[No.1132-2]さつまいも

No.1131-2

「大袈裟さだけどね」
「どの家だってあるわよ、そんなこと」

さつまいもにまつわる話は他にもある。
けど、今回は黙っておこう。

「と、いうわけで!」
「どういうわけよw」

一口食べてみる。
当たり前だが、さつまいもの味がする。

「食べるたび、懐かしさがこみ上げてくるよ」

特別有名な品種でなくてもいい。
いや、むしろごく普通のさつまいもがいい。

「何だか深いね」
「かもな・・・」

何だかんだ言っても結局すきなんだと思う。
さつまいものことが。

「私も好きよ」
「そうだっけ?」

その割にはさつまいもを選んだ姿を見たことがない。
いつも、違うものを選んでいる。

「あら?よく観察してるわね」
「好きなら食べればいいだろ?」

別に何も問題はない。
好きなものが、かぶったところで。

ところがある日、悲劇が起きた。

「じゃ、遠慮なく!」

残り1個のさつまいもを彼女にとられてしまった。

(No.1131完)
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[No.1132-1]さつまいも

No.1131-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「さつまいも、好きね」
「いや、別に・・・」

さつまいもの天ぷらを選んだのにこのセリフだ。
自分でも変だということは承知している。

「好きだから選んだんじゃないの?」
「それはそうだけど・・・」

確かに嫌いではない。
でも、それほど好きでもない。

「だったら他を選んだら?」
「いっぱい種類があるわけだし」

ナス、かき揚げ、ちくわ・・・好物が並んでいる。

「そうなんだけど」
「つい・・・」

言わば習慣だ。
それを選ばずにはいられない。

「子供の頃、さつまいもを作ってたんだ」
「農家・・・じゃなかったよね?」

農家じゃない。
それなりに大きな畑を借りてそこで作っていた。

「だからことあるごとに」
「さつまいもが・・・」

蒸したり、煮たり、そして揚げたり・・・。
特にさつまいもの天ぷらは我が家の定番だった。

「だから?」
「そうだな」

無意識に手が伸びてしまう。
さつまいもは我が家そのものだった。

(No.1131-2へ続く)

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[No.1131-2]今でも覚えてる

No.1131-2

「だから、最初に話した店から」
「足が遠のいて・・・」

気づけば新しい店に入り浸りだった。
それは他の子供たちも同じだった。

「だから、危機が?」
「そう・・・」

でも、その店は小さいながらスーパーだ。
品揃えは少ないものの生鮮食品も売っていた。

「だから駄菓子程度なら大丈夫だと」
「そもそも、子供が使う金額なんて知れてるし」

そう自分に言い聞かせていた。
ある意味、子供は残酷だ。

「確かにそうよね・・・じゃあ、何で?」
「少し離れた場所にスーパーが・・・」

今でいう、小型のショッピングモールができた。
そのため、客は一気にそこに流れた。

「だから・・・か」
「あぁ」

それから、程なくして店を畳んだらしい。

「あれだけお世話になっていながら」
「酷いやつだろ?僕って」

皮肉なことに新しい駄菓子屋も店を畳んだ。
理由はおそらく同じだろう。

「何だか、バチが当たった気分だったよ」

やがて中学生になり、高校生になり・・・。
その店は取り壊され、跡形も無くなった。

「でも今でもうっすら覚えている」
「店のおばちゃんの顔を」

(No.1131完)
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[No.1131-1]今でも覚えてる

No.1131-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
子供の頃の話だ。
近所に一軒の駄菓子屋があった。

「正しくは、駄菓子も売っていた・・・だけど」
「正しくは?」

その店は今で言うスーパーだった。
とは言え、一軒家サイズの小さな店だった。

「ちっさ!」
「ほんと今、振り返ると」

店の4分の1は駄菓子で占められていた。
有り難いことに。

「だから、僕の中では駄菓子屋だったな」
「だろうねw」

100円もあればそれなりの駄菓子を買えた。
当時は5円で買える物もあったくらいだ。

「えっ、5円?」
「あぁ、基本10円だけどなw」

そんな駄菓子屋に危機が訪れた。

「いきなりの展開ね・・・」
「新しい駄菓子屋ができたんだ」

とは言え、その駄菓子屋もちょっと変わっていた。

「どんなふうに?」
「その駄菓子屋、本業はクリーニング店で」

店先に駄菓子を並べていた。
なぜ、そんな業態だったかは知る由もなかった。

「ほんと・・・変わっている」
「けど、品ぞろえが新しいと言うか・・・」

今まで見たことがない駄菓子が揃っていた。
どれも子供心をくすぐるものばかりだった。

(No.1131-2へ続く)

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ホタル通信 No.506

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.588 トナカイのかぶりもの
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

話の主軸である、入院話は事実です。ですが、同僚ではなく先輩です。

かつての勤務地に出張で訪れた際に聞かされました。特に親しい間柄ではありませんでしたが、昔から付き合いはありましたから心配でした。
その先輩ですが、結論から言えば残念ながら他界しました。私と歳はそれほど離れていませんでした。その先輩は男性です。小説上、私は女性ということになっていますが、実際は・・・皆さんのご想像にお任せします。

私、先輩にあたる人を二人亡くしています。一人目は、私が入社してから数年経過した後でした。
言い方には気を付けなければなりませんが、親戚より会社の同僚や先輩、上司が亡くなった方がショックは大きかったです。血の濃さというより、関係性と言ったところでしょうか。
小説の後半、タイトルにもなっているトナカイのかぶりものは創作です。この小説は、先輩が亡くなった後に作ったものなので、私なりの供養であり、そして後悔の念だったりしています。

あれから、随分と月日が流れています。冬のホタルは自分の人生の縮図でもあります。

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[No.1130-2]きっかけは私

No.1130-2

「きっかけ?」
「さぁ・・・何だろうね」

とは言うものの、ある日、突然ではないはずだ。
何らかのきっかけがあると思う。

「よく考えてよ」
「そうだなぁ・・・」

腕組みをして考え始めた。

「・・・そう言えば」
「あの時からかもしれない」

彼が半年前の出来事を話し始めた。
それは・・・彼の誕生日の出来事だ。

「誕生日・・・?」
「ほら、手料理を作ってくれただろ?」

確かに作った。
でも、七味は使っていない。

「ハンバーグがさぁ・・・」
「えっ!?」

ここに来て、不安の波が押し寄せてきた。
少なからず心当たりがあるからだ。

「まさか・・・」
「うん、その“まさか”」

いつものハンバーグの味と違った。
レシピも同じで、作り方も完璧だったはずなのに。

「間違って七味入れちゃってたの!?」
「でも、ちょっとピリ辛で」

それがやたら美味しかったらしい。
どうやらきっかけは・・・私だったみたいね。

(No.1130完)
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[No.1130-1]きっかけは私

No.1130-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「あれ?香辛料・・・かけてたっけ?」
「最近、かけるようになったんだよ」

彼がうどんに七味をかけている。
一般的には話題にするほどのことではない。

「苦手だったんじゃないの?」
「苦手じゃなくて必要性を感じてなかったんだよ」

七味と必要性・・・どう言う意味だろうか?
面白い取り合わせではあるが。

「何なの、その“必要性”って」
「意味がないってことだよ、つまり・・・」

七味をかけても味が変化するわけじゃない。
そんなことを言いたいらしい

「味、変わるじゃん?」
「ピリッと辛くなるでしょ、香りも出るし」

私は昔から香辛料はかける派だ。
うどんでも、パスタでも。

「言うほど変わらない・・・と思ってたけど」
「最近、ようやく良さに気付いたと言うか・・・」

彼曰く、七味に目覚めたらしい。

「ほら、食の好みって変わると言うだろ?」
「どうやらそれみたい」

それはあるだろう。
私も好みが変わったものがある。

「それにしても、それが七味とはねぇ~」
「確かになw」

そもそも何がきっかけだったんだろうか?
それが知りたくなる。

(No.1130-2へ続く)

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[No.1129-2]賞味期限

No.1129-2

「劇的ってどのくらい?」
「1週間くらい過ぎてもOKみたいな?」

確かに、1日でもアウトだったことからすれば大きな変化だ。
でも、その程度なら劇的とは表現しない。

「じゃあ、1ヶ月とか?」
「ううん、半年以上!何なら1年でも大丈夫」

この変わりように自分が一番驚いている。
何が私をこう変えたのか・・・。

「た、確かに劇的ね・・・」
「でしょ!」

食糧危機のニュースに触発されたかもしれない。
食品ロスの現状を知ったのかもしれない。

「自分でも分かんないのよね」
「理由が」

繰り返しになるが、本当にある時を境に変わった。
徐々に賞味期限に寛容になっていったわけじゃない。

「いったい何がそうさせたんだろね」
「ほんと・・・今でも不思議だよ」

でも、お陰で食品ロスに貢献できている。
そんなに環境を気にしているわけではないが。

「・・・というわけで」
「えっ!?・・・嫌な予感がするんだけど」

ようやく、長い前振りが終わった

「さぁ、これをつまみに飲みなおすわよ!」

(No.1129完)
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