[No.1123-2]私の流儀
No.1123-2
「だから、みぞれ味なんだ」
「うん、全く同じ味じゃないけどね」
シンプルな味で育ったせいで、今もみぞれを選んでしまう。
「もちろん、みぞれが無かったら他を選ぶわよ」
さっきも言った通り、ある方が珍しい。
何となく若者向けではないように感じるからだ。
「昔を懐かしんでいるのかな、私?」
「かもね」
当時、夏になると毎日食べていた。
「私は食べるだけで作ったことはなかったの」
「だから・・・」
毎日、母が用意してくれていたことになる。
当時はそんなことを考えたこともなかった。
「あるのが当たり前・・・そんな感じだったね」
「そんなもんよ、子供の頃なんて」
決して高級な味じゃなかった。
むしろ、チープな味と言っていい。
「でも・・・愛情がこもってたな」
「そりゃそうでしょ」
こうやってみぞれ味のカキ氷を頬張る度に思い出してしまう。
そして、“ありがとう”を言えなかったことも。
「別に遅くないじゃん!」
「今からでも」
そうだ、今年は墓前の前でアイスのお礼をしよう。
喜んでくれるだろうか、今更だけど。
「待っててね!お母さん」
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