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2022年7月

[No.1124-1]セミの夢

No.1124-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「今年はどうなの?」
「どうって・・・なにが?」

友人が唐突に意味不明な質問をしてきた。
時々、こんな質問をしてくる。

「何がじゃないわよ」
「夏と言えばアレでしょ!?」

夏・・・その一言でピンときた。
夏と言えばアレしかないだろう。

「もしかして、セミ?」
「もちろん!」

なるほど、そう言うことか。
それなら話は早い。

「今年はまだだよ」
「正確に言えば・・・」

現実世界では“まだ”だった。

「何よ、その現実世界って?」
「言葉通りよ」

ここ数年、セミとちょっとした出会いがある。
ただ、出会いと言うより、別れの意味合いが多いが。

「まだ、目の前には現れてないけど」
「夢の中で出てきたわ」

ベランダの植木鉢にセミが居た。
それが土の上をゆっくり歩いていた。

(No.1124-2へ続く)

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[No.1123-2]私の流儀

No.1123-2

「だから、みぞれ味なんだ」
「うん、全く同じ味じゃないけどね」

シンプルな味で育ったせいで、今もみぞれを選んでしまう。

「もちろん、みぞれが無かったら他を選ぶわよ」

さっきも言った通り、ある方が珍しい。
何となく若者向けではないように感じるからだ。

「昔を懐かしんでいるのかな、私?」
「かもね」

当時、夏になると毎日食べていた。

「私は食べるだけで作ったことはなかったの」
「だから・・・」

毎日、母が用意してくれていたことになる。
当時はそんなことを考えたこともなかった。

「あるのが当たり前・・・そんな感じだったね」
「そんなもんよ、子供の頃なんて」

決して高級な味じゃなかった。
むしろ、チープな味と言っていい。

「でも・・・愛情がこもってたな」
「そりゃそうでしょ」

こうやってみぞれ味のカキ氷を頬張る度に思い出してしまう。
そして、“ありがとう”を言えなかったことも。

「別に遅くないじゃん!」
「今からでも」

そうだ、今年は墓前の前でアイスのお礼をしよう。
喜んでくれるだろうか、今更だけど。

「待っててね!お母さん」

(No.1123完)
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[No.1123-1]私の流儀

No.1123-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「イチゴじゃなくていいの?」
「うん、私はこれ」

数あるテイストから、ひとつを選んだ。
この味があるのは珍しい方だろう。

「みぞれ味・・・」
「私は食べたことないけどね」

カキ氷の定番はイチゴだと思う。
続いて、メロン・・・その次からは好みが分かれる。

「カキ氷に白い蜜を掛けてもばえないじゃん!」
「別にばえる必要なんかないし」

見た目より味だ。
でも、イチゴやメロンが嫌いなわけじゃない。

「ならどうして?」
「小さい頃ね・・・」

母親が手作りのアイスを作ってくれた。
手作りといっても、砂糖水を凍らせただけだったが。

「市販のアイスを食べた後に」
「容器を再利用して」

さすがに市販のカキ氷のアイスのようには行かなかった。

「甘い大きな氷の塊って感じだった」
「・・・硬そうね」

実際、硬かった。
それをスプーンでほじりながら食べていた。

「まず、真ん中を掘って穴を開けて」
「あなたなりの流儀ね」

そして、穴の周りを削って食べ進めて行く。
友人が言う通り、これが私の流儀だった。

(No.1123-2へ続く)

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ホタル通信 No.502

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.446 悩んでいても腹は減る
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

最初に小説のタイトルについて触れておきますね。一般的に言われる言葉なので、もちろんオリジナルではありません。

さらに踏み込むと、この小説はタイトルが先に決まり、このタイトルに似合う経験談を探した・・・というのが事実です。ではタイトルはどうやって・・・となりますが、単に思い付いたのではなく、あるキャラクターのカレンダーに書いてあった言葉でした。当ブログをよくご存知の方なら、あえて言わなくても分かっていただけますし、お知らせにも答えが書いてあります。

そのキャラクターの言葉が妙に印象に残ったため、この言葉に似合う経験談を探し、肉付けしていったのがこの小説です。
小説は悩みながらも、それほど深刻な雰囲気は漂っていませんが、実際はかなり大変な日々でした。だからこそ、「悩んでいても腹は減る」の言葉に共感できたと思います。実際、悩んでいても腹は減ってましたからねw

時は流れ、当時ほど大きな悩みはなくなりましたが、悩みが尽きることはありません。でも、今も“腹の虫”が、その悩みをちょっとでも和らげようとしてくれています。

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[No.1122-2]期待に応える男

No.1122-2

「まぁ・・・そういわれたらそうよね」
「じゃなくて、フォローしてよ・・・」

周りを見れば突然の雨に慌ただしく人が動いている。
傘なしでやり過ごせる雨量ではない。

「罪悪感を感じるよ・・・」
「あなたのせいじゃないわよ」

分かってはいる。
でも、そう簡単にも割り切れない。

「あの人・・・怒ってるだろうな」
「考えすぎよ」

コンビニの軒下で雨宿りしている人が居る。
表情は見えないが仕草で・・・分かる。

「でも、恵みの雨じゃん!」
「最近、晴れが続いて水不足なんだし」

そう言われると気持ちが楽になる。
確かに誰かの役に立っているのかもしれない。

「でしょ!」
「雨を待ってる人達だっているんだから」

なるほど・・・決して雨男は迷惑男ではないってわけか。
なら、もっと降ればいい。

「そうそう!」
「今日から“期待に応える男”に改名したら」

(No.1122完)
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[No.1122-1]期待に応える男

No.1122-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
夏の天気は変わりやすい。
それは十分過ぎるほど分かっている。

「浮かない顔ね?」
「そりゃそうだろ」

今朝、家を出た途端、雨が降り出してきた。
確かに曇り空ではあったが・・・。

「もしかして・・・この雨のせい?」
「そうだよ」

降水確率は10%だった。
圧倒的に降らない確率の方が・・・高い。

「自覚してても嫌になるよ」
「自分の雨男ぶりには」

折りたたみの傘は常備してある。
だから、雨に打たれることはない。

「それならいいじゃん!」
「良くないよ!」

今もこうして傘越しの会話になっている。
それに雨の激しさも増している。

「恐るべし・・・雨男ねw」
「恐るべし!じゃないよ・・・ったく」

雨男、雨女はタイミングが最悪の人のことだ。
見事なくらい、一歩踏み出せば雨が落ちてくる。

(No.1122-2へ続く)

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[No.1121-2]後ろ通ります

No.1121-2

「将来が楽しみな子ね」
「言えてる」

子供らしくないと言えばそこまでだ。
でも、それを上回る清清しさを感じる。

「なんか可愛いね!」
「ほんと!あんな子が欲しいよ」

今度は愚痴から妄想に変わって行きそうだ。

「あっ・・・」
「どうしたの?急に」

ひとつ大事なことを忘れていた。
立派な大人のくせに。

「ありがとう!って言ってない」
「・・・ほんだ」

予期せぬ出来事だけにとっさに言葉が出なかった。
出たのは驚きの“えっ!”だけだった。

「さすがに・・・もう居ないわね」

追い抜くスピードは子供そのものだった。
元気よく追い抜いて行った。

「じゃ、心の中で」
「うん、分かった」

私たちの声が届いてくれたら嬉しいな。

(No.1121完)
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[No.1121-1]後ろ通ります

No.1121-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「えっ!?」
「えっ!?」

ほぼ同時に、驚きの声をあげた。
もちろん理由は分かっている。

「親かと思った」
「私もよ」

友人と歩道を歩いていた時だ。
後ろから1台の自転車が私たちを追い抜いた。

「礼儀正しいと言うか・・・」
「そうよね」

追い抜く前に、背後から声が聞こえた。
“後ろ通ります”と。

「ベルで済ます人が多いもんね」
「そうそう!邪魔だよ!って感じで」

だから声を掛けられたことは一度もなかった。
でも、それくらいでは二人とも驚いたりはしない。

「親の教育がいいのかしら?」
「そう思うよね」

そう・・・追い越して行ったのは子供だった。
それも小学1年生くらい幼かった。

「大人でも言えないよね?」
「確かに」

さっき言ったようにベルで威圧してくる人が多い。
特に・・・は。

「後ろに目は付いてないってーの!」
「だよねw」

話題が賞賛から愚痴に変わりつつあった。

(No.1121-2へ続く)

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ホタル通信 No.501

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.446 桜散る
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性

主軸である桜の話、そして後半の資格取得については事実です。記憶は曖昧ですが、おそらく資格取得がこの話のきっかけになったと思います。

さて、この話・・・ちょっと問題があります。それはラスト2行が何を意味しているか、思い出せないことです。
流れからすると、資格取得の合否を口に出さずに、歩道と頭上の花びらで説明したようですが、そもそも合格しそうなのか不合格になりそうなのか、分かりません。もちろん、口に出さないのは、学生に配慮した上での行動とは思いますは、そうなると不合格が濃厚です。でも、それなら交互に指差す必要もなく、歩道を指差せばそれで済みます。そうしなかったのは、何か他の理由があったからでしょう・・・と、まぁ自分の作品ながら、時々こんな感じになってしまいます。それでも、無理やり結論を付けると、合格する確率がフィフティーフィフティーの意味があったのでは?と推測しています。

話は変わりますが、桜は咲く時も散る時もストーリーがあります。希望や期待、その反対に不満や悲しみも宿っている、とても不思議な存在です。世の中には数え切れない植物が息づいている中で、咲いたり散ったりすることを一喜一憂するのは桜だけなんじゃないかと思います。

最後に、ここ最近、資格取得には縁遠い生活をしています。
数ヶ月前までは意気揚々に勉強していたのですが、少し大きめに生活の変化があったため、ちょっと停滞しています。でも、また勉強を始めたいと考えています。その時は、もちろん桜・・・です。

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[No.1120-2]お返しです

No.1120-2

「そうだな・・・じゃ、もらうかな」
「それ、真っ白じゃんw」

キャラメル味が嫌いなわけではない。
むしろ、反対に好きな味だ。

「じゃ、これにする」

白と茶のまだらなモノを選んだ。

「じゃなくて・・・」
「僕はこんなのでいいよ」

彼女を太らせようという悪意はない。
単純に美味しいモノを食べて欲しいだけだ。

「私はいいからさ」
「分かったよ・・・」

とは言え、美味しそうに食べる彼女の顔が好きだ。
だから、自分のことは二の次でいい。

「あー!また白いの食べてる!」
「ん?そうか?」

白々しいほど、大げさにとぼけてみた。

「もぉ・・・仕方ないわね」

そう言うと、さっきのを超えるモノを探しあてた。

「はいこれ!お返しよ」

(No.1120完)
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[No.1120-1]お返しです

No.1120-1

男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「はい、これ」

ポップコーンを一粒手渡した。
でも、何でもよかったと言うわけではない。

「これ、色が濃いよ」
「本当だ!」

キャラメル味のポップコーンを二人で食べている。
僕は彼女のために選別をしている。

「これもだよ、はい!」

だからと言って彼女に選別を頼まれたわけではない。
好きでやっているだけだ。

「おっ!これなんて最高だよ」
「すごいね!」

明らかに偏ってキャラメルが掛かっているのが分かる。
今にもキャラメルが垂れてきそうな勢いだ。

「まぁ、垂れてはこないけどな」
「あははwそうだね!」

それほど濃厚だということだ。
実際、色の濃さとおいしさは比例する。

「じゃ、次は・・・」
「あなたも食べたら?」

つい、色の濃いモノを探すのに夢中になっていた。

(No.1120-2へ続く)

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[No.1119-2]距離感

No.1119-2

「へぇ~そうなんや!」

あらためて見ると、見事なまでの距離感だ。
近すぎず遠すぎず・・・だ。

「ネコらしいな」
「確かに」

見渡せば、あちこちに野良猫が集まっている。
どうやらここは集会所のひとつらしい。

「かなり集まってきたな」
「集合時間は19時なんやろか?」

彼女もまた独特のセンスの持ち主だ。
センスと言うより、個性と言った方が良い。

「そうだな、19時かもな」

冗談のようで冗談ではない雰囲気もある。
本当に集合時間が19時に思えてきた。

「なら、うちらもやな!」
「うちら!?」

どうやら僕たちも集会所に集まるネコの一員らしい。

「うちらの距離感もそんなもんやろ」

(No.1119完)
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[No.1119-1]距離感

No.1119-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「不思議やわぁ~」
「何でなんやろ?」

彼女が仕切りに不思議がっている。
何が不思議なんだろうか?

「何が不思議なの?」
「あれ見てん!」

指差した先にネコが数匹座っている。
日が落ちた公園の片隅に。

「ネコがどうしたの?」
「普通、ケンカになるやん!」

なるほど・・・言いたいことが分かった。
昔、実家で飼っていたから習性は分かっている

「夜、ネコの集会があるんだって」
「集会?」

ちゃんとした集会を見たことはないが・・・。

「何でもコミュニケーションをとってるんだって」
「独特のね」

一定の距離を保って座っている。
威嚇するわけでもなく、じゃれ合うこともない。

(No.1119-2へ続く)

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