[No.1101-1]知らなかったこと
No.1101-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「もしかしたら・・・とは思ってたけど」
母が亡くなった後に手紙を見つけた。
それは僕らに宛てたものだった。
「弟と姉、そして僕・・・それぞれに」
それがどこで書かれたか、読めばすぐに分かった。
「・・・病室?」
「うん」
“熱があり上手く書けない”と手紙にはそう綴られていた。
事実、歪んだ文字がそれを物語っていた。
「普段は達筆なのに」
「・・・頑張って書いたのね」
母には余命は伝えていなかった。
散々迷った末、出した結論だった。
「でも、手紙には・・・」
死が近づいていることを察した内容が書かれていた。
「自分の体のことは自分が・・・ってよく言うじゃない?」
「・・・だよな」
日に日に悪くなる体調からすれば誰だってそう思う。
回復の見込みはないと。
「母が知ってたこと」
「僕らは知らなかったことになる」
母はそんな僕らをどう思っていたのだろうか。
今でも時々、考えることがある。
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