2022年4月
[No.1107-1]私もよ
No.1107-1
登場人物女性=牽引役
女性=相手
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今年も始まった。
待ちに待っているわけではないが・・・。
「今年は何育てるの?」
ここ数年、友人の方から声が掛かる。
「いつも通りよ」
「じゃあ、ゴーヤだね!」
いちいち説明する必要がない。
でも、今年は育てるものを増やす予定だ。
「増やす?」
「実は去年・・・」
試しにトマトを育ててみた。
種からではなく、苗からだが。
「それが案外、上手くいって」
「今年はさらに気合を入れて」
ゴーヤよりは少し手が掛かる。
でも、その手間が嬉しくもある。
「そんなものなの?」
「そんなものなの!」
今年は種から育てるつもりだ。
ホタル通信 No.494
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.400 あなたと繋がる場所
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性
日常をテーマにしているからこそ、創作活動自体が小説になることもしばしばあります。
400話目が切りの良い数字かどうかはさておき、振り返ってみると、400話目に到達するまでに、約3年8か月の月日が流れていたんですね。何度かお話している通り、続けようと思っていたわけではなく、結果的にそうなったに過ぎません。
小説の内容はほぼ事実で、小説を始めたきっかけや見て欲しい人がいることなど、当時の小説の方向性が色濃く分かります。
今現在(2022年4月)はどうかと尋ねられると、かなり方向性は変わってきていると言わざるを得ませんが、それも良しとしています。
ところで、小説に出てくる“キーワード”って何だか分かりますか?
全然、隠していないので、すぐ分かると思います。それを知っているのは作者と「見て欲しい人」だけです。
書くことで心のバランスを保っている・・・そう言えるのかもしれません。広い意味で「あなたと繋がる場所」として続けていけたら幸いです。
[No.1106-2]新たな出会い
No.1106-2
4月の初旬を過ぎたころ、それに気付いた。
「あぁ、卒業したんだな・・・と」
もちろん、確認したわけではない。
そもそも確認するすべもない。
「でも、そう考えるのが普通よね?」
「間違いないだろう」
就職したのか大学生になったのかは分からない。
けど、二度とすれ違うことはないだろう。
「寂しい?」
「そうだな、変な意味じゃなくて」
その女の子に特別な感情は抱いていない。
それは彼女も知っている。
「親心ってやつ?」
「あぁ、親になるのはまだ早いけどな!」
その女の子は別のステージへと飛び立った。
むしろ、喜ばしいことだ。
「その子も寂しがっているかもよ~」
「あはは!ないない」
そう言いながらも何かを期待せずにはいられない。
「そうそう!今日、新たな女の子とすれ違ったぞ」
[No.1106-1]新たな出会い
No.1106-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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会わなくなってから気付く。
彼女は高校3年生だったことを。
「何の話?」
「朝、すれ違う人の話さ」
今までも何度か話をしたことがあった。
通勤途中に出会う人たちのことを。
「あぁ、いつもの話ね」
「その中の一人で・・・」
とある高校生の女の子とすれ違う。
こっちも向こうも自転車だ。
「例の女の子?」
「彼女がどうかしたの?」
頻繁にすれ違うことはない。
でも、週に1度くらいは顔を会わせていた。
「最近、見かけないんだよね」
「ここ1ヶ月くらい」
その謎が最近解けた。
謎と言うほど、大袈裟なものではないが。
「卒業したんでしょ?」
「ちょっと!俺より先に答えを言うなよ~」
でも、それに間違いないと思う。
[No.1105-2]桜は知っている
No.1105-2
「ねぇ、将来・・・」
友人がおもむろに口を開いた。
最後まで聞かずとも、言いたいことは分かる。
「私は・・・戻ってきたいけどな」
「都合よく行くかどうか分からないけど」
出来れば地元で働きたい。
けど、それを理由に仕事を選びたくはない。
「分かるよ、それ」
「私もそんな感じ」
もちろん、将来の絵描きはまだ出来ていない。
「その時はその時よ!」
「あーその投げやり感、好き!」
似た者同士の二人だ。
最後の最後まで息が合う。
「・・・いつ引っ越し?」
「そっちは?」
引っ越し日を確認し合う。
「・・・同じ日!?」
桜の花びらが私たちの鼻の上に、同時に落ちてきた。
[No.1105-1]桜は知っている
No.1105-1
登場人物女性=牽引役
女性=相手
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私たちは4月から別々の大学に通う。
頻繁に会うことはできないだろう。
「でも、一生の別れじゃないし」
「だね!スマホもあるし」
連絡ならいつでも取りあえる。
その点については良い時代だ。
「いい高校生活だったね」
「うん」
学校沿いの道を自転車を押して歩く。
今まで素通りだったのに。
「名残惜しいね」
「そうね・・・」
桜の花びらが宙を舞っている。
最高の演出かもしれない。
「来年は別々の場所で・・・」
「桜を見ることになりそうね」
友人の言葉に小さくうなずく私が居た。
「私の方が先に咲くかな?」
「多分、そうだろうね」
この後、数十秒間、無言が続いた。
ホタル通信 No.493
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.566 継ぎ足し
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性
ホタル通信を書くにあたって読み返してみると、意味不明な小説があります。今回の小説もその類です。
話の主軸である“歯磨き粉”については事実であり、日常的な光景です。無くなりそうで無くならないもの・・・その代表格が歯磨き粉です。
それを例えにして、後半の恋愛話に結び付ける良くあるパターンなんですが、それが自分でも理解できません。当時は意気揚々と書いていたと思うのですが、イマイチ、何を言いたいのか、分かりません。月日のせいにはしたくないものの、その想いが風化してしまっています。
それでも一応作者なので、過去の自分を分析しながら、解釈して見ると・・・次のような感じでしょうか?
無くなりかけた歯磨き粉を、別れそうで別れられない彼氏に例え、ズルズルと関係が続いてしまう・・・そんな時、新しい彼が出来てしまった、という感じでしょう。これに関しては、昔、経験したことがベースになっていると言わざるを得ない展開です。
つくづく読み手を無視した小説に笑ってしまうほどですが、これもひとつの持ち味として、これからも書き続けていこうと思っています。
[No.1104-2]ウンチの絵文字
No.1104-2
「店員の態度に問題が・・・」
「ううん、違う」
即座に否定された。
「違う?じゃあ、支払いが上手く行かなかったとか?」
「PayPayとかの?」
即座に首を横に振った。
これも違うらしい。
「えっ・・・それじゃあ・・・」
「もしかして!」
ひとつ大事な“あるある”を思い出した。
「横入りされたんだろ?」
「おばちゃんとかに」
僕も何度か経験がある。
確かに無性に腹が立つ行為だ。
「だから、違うって!」
「これも違うの!?他に何があるんだよ・・・」
他には思い付かない。
これら以外で、腹が立ちそうなことと言えば・・・。
「降参!それなに?」
「支払い時に、アプリを表示したんだよ」
割引のクーポンを店員に見せたらしい。
「その時、丁度あなたからLINEが届いて」
「“ウンチしてくるって”って絵文字と共にぃ!」
[No.1104-1]ウンチの絵文字
No.1104-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「ん?」
「何かあったの?」
化粧品売り場から戻ってきた彼女の顔が険しい。
行く前はウキウキ顔だったのに。
「・・・」
「いや、だからどうしたの?」
僕の問い掛けに答えてくれない。
もしかして、店員ともめたとか・・・。
「腹が立つことでも?」
「・・・そうね」
やはり、そうだったみたいだ。
何かあったらしい。
「何があったか聞かないけど・・・」
「・・・逆に聞いて欲しいわ」
よほどのことがあったらしい。
言わずにはいられないほどの。
「い、いいぞ!」
「聞くよ」
ここは男らしく彼女の話を聞くとしよう。
それで怒りが収まるなら。
「で、何があった?」
「化粧品を買って支払いしようとしたら・・・」
なるほど・・・問題はレジで生じたということか。
と、なれば・・・。
[No.1103-2]ヒースロー空港
No.1103-2
「なんで分かったの?」
「夢の中で・・・」
はっきりと看板に書かれていたらしい。
それも日本語で。
「あはは!随分、親切な夢ね」
「私もそう思ったよ!」
今まではどの空港かもわからず、ただ乗り遅れるだけだった。
それが、突然、解決したようだ。
「なんだか、スッキリしたよ!」
「そんなもんなんだ・・・」
友人曰く、結構、気になっていたらしい。
ただ、日本ではないことは知っていたようだ。
「シチュエーション的には海外旅行だったからね」
「行ったこともないくせに?」
この後、二人で大笑いした。
友人は海外旅行に行ったことがない。
「そんなに憧れもないんだけどね」
「潜在意識がそうさせてるかもよ」
でも、不思議だ。
どうして、そんな具体的な名前が出てくるのだろう。
「ヒースロー空港になにか繋がりでも?」
「ううん・・・名前をちょっと知ってるレベル」
確かにそうだろう。
私も似たようなものだ。
「なんだか、その空港に興味が出てきちゃって・・・」
「・・・私も」
この数ヵ月後、私たちは旅立つことになった。
[No.1103-1]ヒースロー空港
No.1103-1
登場人物女性=牽引役
女性=相手
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「以前、話したことあるよね?」
「夢の話」
友人が唐突に話を切り出してきた。
でも、その話自体はよく知っている。
「・・・いつも乗り遅れるってやつだよね?」
「そう」
その話は何度と無く聞かされていた。
出発時間に間に合わず、乗り遅れてしまうらしい。
「また・・・見たの?」
「うん、見たんだけど・・・」
歯切れが悪い。
でも、表情は暗いどころか明るく感じる。
「長年の謎が解けたみたい」
「謎?乗り遅れることの?」
すぐさま首を横に振った。
どうやら、それではないらしい。
「じゃあ、何が?」
「空港よ、空港!」
イマイチ意味が分からない。
空港のどんな謎が解けたというのだろうか。
「ストレートに言いなさいよ」
「ごめん、ごめん」
友人が、おもむろに口を開いた。
「ヒースロー空港?」
「そう!空港はヒースロー空港だったんだよ」
確かに今まで空港の名前までは聞かされていなかった。
もちろん、彼女自身も知らなかったからだ。
ホタル通信 No.492
小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。
小説名:No.537 苦労して
実話度:★★☆☆☆(40%)
語り手:女性
現実の話を、何らかに例えてオチを迎える・・・当ブログではよくあるパターンです。
さて、子供の頃、亀やフナ、ザリガニを追っかけていた野生児であったのは間違いありません。良く言えば、実家の周辺が自然に恵まれていたこともあり、“遊び”には事欠きませんでした。
でも、不思議なもので、亀を見つけることは極稀でした。小説にも書いている通り、隠れる場所が多く、子供の力では見つけることが出来なかったのかもしれませんね。
一方、大都会とは言えないものの、それなりの都会に住み、彼らとは無縁だと思っていたら、逆に向こうが積極的に姿を見せてくる現状に驚きを隠せませんでした。それもそのはずです、1匹、2匹のレベルではなく、その数たるやら・・・。
昔はあんなに苦労してたのに、今は掃いて捨てるほどの亀に出会えている・・・これが小説のきっかけです。
[No.1102-2]好き嫌いは人嫌い
No.1102-2
「でも、知ってる?」
「ん?何を?」
好き嫌いが多い人にはある特徴が見られると聞いた。
真偽のほどは定かではないが。
「好き嫌いが多い人は・・・」
「人の好き嫌いに通ずるってこと」
食べ物の好き嫌いは人にも当てはまる。
そういうことだ。
「・・・なるほど」
「そうかもしれない」
あっさりと認める所はいさぎよい。
「ほんと?」
「あぁ、結構、付き合う相手を選ぶかも」
それは相手も同じだろう。
知らず知らずの内に、相手からも選ばれている。
「だから・・・か」
「ん?何がよ」
何か思いついたらしい。
「さっき、嫌いな食べ物はないって」
「うん、言ったよ」
言葉の意味を理解するのに時間は掛からなかった。
[No.1102-1]好き嫌いは人嫌い
No.1102-1
登場人物女性=牽引役
男性=相手
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「俺、これ無理」
「これも!?」
乳製品がダメだとは知っている。
牛乳はもちろん、チーズやバターがそれだ。
「食感が、こう・・・なんていうか」
干しぶどうもダメだという。
「どんな食感よ!?」
「ほら、クチュクチュしてるというか」
なるほど・・・。
まぁ、分からなくもないが。
「それにしても好き嫌いが多い人ね」
「何なら他にもあるぞ!」
あえて聞かないことにしよう。
好き嫌いが多いことは十分すぎるほど理解した。
「無いの?嫌いな食べ物」
「私?無いよ」
幸いにも嫌いな食べ物はない。
「珍しいな」
「確かに」
どんな料理も気にせず食べられる。
この意味は大きい。
[No.1101-2]知らなかったこと
No.1011-2
「そうね・・・でも・・・」
「それを“やさしさ”と捉えてたと思うよ」
本当にそうなんだろうか?
もし、そうではなかったとしたら・・・。
「あえて聞かないけど」
「手紙の内容がその答えじゃない?」
そこには意外な一言も書かれていた。
一度もそんなことを思ったことがないのに。
「・・・そうかもな」
手紙を読んだ時、一気に感情が押し寄せてきた。
涙が・・・止まらなかった。
「いわゆる、嗚咽ってやつ?」
「そうもなるわよ」
その時、あらためて思った。
母は最期まで強く、そして優しかったと。
「その手紙は?」
「形見のニット帽と一緒に大切に持ってるよ」
けど、あれ以来、読んでいない。
いや、正しくは読めないでいる。
「分かるよ、その気持ち」
「ほら、読んだら・・・アレだろ?」
今でも泣き崩れる姿が容易に想像できるからだ。
「そんな姿を母に見せられないだろ?」
「別にいいじゃない!子供なんだから」
[No.1101-1]知らなかったこと
No.1101-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「もしかしたら・・・とは思ってたけど」
母が亡くなった後に手紙を見つけた。
それは僕らに宛てたものだった。
「弟と姉、そして僕・・・それぞれに」
それがどこで書かれたか、読めばすぐに分かった。
「・・・病室?」
「うん」
“熱があり上手く書けない”と手紙にはそう綴られていた。
事実、歪んだ文字がそれを物語っていた。
「普段は達筆なのに」
「・・・頑張って書いたのね」
母には余命は伝えていなかった。
散々迷った末、出した結論だった。
「でも、手紙には・・・」
死が近づいていることを察した内容が書かれていた。
「自分の体のことは自分が・・・ってよく言うじゃない?」
「・・・だよな」
日に日に悪くなる体調からすれば誰だってそう思う。
回復の見込みはないと。
「母が知ってたこと」
「僕らは知らなかったことになる」
母はそんな僕らをどう思っていたのだろうか。
今でも時々、考えることがある。
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