[No.1089-2]二代目
No.1089-2
「煮た?」
「うん、大袈裟に言えばドロドロに」
それが格別の味だった。
溶けた餅に白味噌がよく染み込んだ。
「だから、こっちで初めて食べた時・・・」
「つゆよりも、餅にびっくりしたよ」
ここでは餅を焼いて食べる。
焦げ目が付いた餅が、不思議とつゆにマッチする。
「でも、これはこれで、“有り”だと思った」
「でしょ!」
もちろん、焼いた餅を食べたことはある。
でも、煮て食べるのが実家の習慣だった。
「ほんと、地域や家によって違うよね」
「あぁ、大袈裟だけど代々受け継がれてたりするし」
目の前の雑煮も、言わば受け継いだ。
ごく自然に・・・。
「よっ!二代目!」
「おいおい・・・からかうなよ」
確かに、知りうる範囲では二代目に間違いないが・・・。
きっと喜んでくれているだろう。
「けど、ほんと美味しいよ」
「味も変わらない」
正式に受け継いだわけじゃない。
でも、こうやって代々受け継がれるのかもしれない。
(No.1089完)
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