[No.1087-2]木の匂い
No.1087-2
「匂い・・・どんな?」
「木の匂いよ」
とは言え、ヒノキのような高級な匂いではない。
どこか湿っぽくもある匂いだ。
「木の匂いね~」
「まぁ、解体してるんだからするよね」
それは間違いない。
木造の古びた家だからだ。
「どこかでかいだ匂いなんだよね・・・どこかで」
それが思い出せないでいる。
明らかにかいだことがある匂いなのに。
「香水とか、芳香剤の匂いとか?」
「ううん、そんなんじゃない・・・」
人工物ではなく、もっと自然のような・・・。
「じゃあ、植物とか?」
「それも違うような気がする」
人工でもなく、自然でもない。
自分で八方塞の状況を作り出してしまった。
「仕方ないわね!」
「今日の帰り、付き合ってあげるわよ」
解体は始まったばかりだ。
まだ、匂いはするはずだ。
「ありがとう!助かる」
「何だか、お婆ちゃんの家に行くみたいね」
| 固定リンク | 0
「(044)小説No.1076~1100」カテゴリの記事
- [No.1107-2]私もよ(2022.04.28)
- [No.1100-2]せっかちな桜(2022.03.30)
- [No.1100-1]せっかちな桜(2022.03.29)
- [No.1099-2]久しぶりな言葉(2022.03.27)
- [No.1099-1]久しぶりな言葉(2022.03.26)
コメント