[No.1069-2]風のせい
No.1069-2
「今日も、俳優の訃報があったね」
「うん、私もさっき知った」
それなりに昔に出演していたテレビも知っている。
気付けば私もそんな歳だった。
「この頃、知っている人の訃報が増えたよね?」
「そりゃそうよ」
私たちもそれなりに長く生きている。
これからもっと増えていくだろう。
「あの頃はこうだったとか、こんなテレビに出てたとか」
「親と同じこと、言うんだろうな」
親の影響ではなく、自然とそうなってしまう。
「それだけ歳をとったということよ」
「まだまだ若いわよ!」
とは言え・・・歳は目前だ。
「でも、今日はありがとうね」
「付き合ってくれて」
母の墓参りに友人も付き合ってくれた。
「ううん・・・逆にありがとう」
「随分、よくしてもらったのに御礼も言えてなかったから」
母もきっと喜んでいることだろう。
「もっと、いっぱい話したかったな」
「何なら、今ここで話してみたら?」
間髪いれずに、友人が提案してくれた。
「そうだね・・・あのね・・・」
供えたひまわりがこちらを向いたのは風のせいなんだろうか。
(No.1069完)
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