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[No.1072-2]普通の定義

No.1072-2

だいたい地に落ちているセミは死んでいる。
あるいは息も絶え絶えになっている。

「だよね」
「虫の中でも警戒心は強いはず」

友人もセミについてそれなりに詳しくなっている。
まぁ、私の影響が大きいと思うが。

「ピクリとも動かないし」
「間違いなく死んでいると思ってた」

蟻も数匹、群がり始めていた。
夏の終わりによく見るあの光景が始まろうとしていた。

「自然の摂理とは言え・・・」
「そうだね」

とは言え、これもある意味、一期一会だ。
このまま見過ごすのも心苦しかった。

「・・・あなたらしいね」
「せめて、目のつかない所に・・・」

無残な姿をさらす必要はない、そう思った。

「で、目のつかない所に・・・」
「えっ!?それで気付いたの・・生きているって!?」

もちろん、そうだ。
私の手の中で、力強くもがいていた。

「普通・・・そうでしょ?」

普通という言葉の定義が変わった瞬間だった。
S1072
(No.1072完)
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