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2021年11月

[No.1077-2]ムーンフェイズ

No.1077-2

「で、何でこんな話を?」
「あぁ、そうだった」

最近、たまたま覗いた雑誌に特集が組まれていた。

「何だか懐かしくてさ」
「今だって売ってるでしょ?普通に」

確かに普通に売っている。
一過性のブームではなかったというわけだ。

「売ってるよ」
「・・・ん?」

別にレアでもコアでもない話題だ。
けど、皆が知っているわけでもないだろう。

「もしかして・・・」
「好きなの?」

僕の一方的な話だと思っていた。

「・・・まぁ、好きかな」
「何だよ!早く言ってよ!」

ここに来て意外な展開が待っていたようだ。
話して良かった話題だった。

「あなたが好きなのは知ってたわ」
「えっ!?話したことあったっけ?」

記憶にはないけど、以前話していたらしい。

「まぁ、細かいことは気にしない!」
「う、ううん・・・」

何だか訳がわからない、けど・・・
ムーンフェイズのように刻々と表情を変える彼女が居る。
S1077
(No.1077完)
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[No.1077-1]ムーンフェイズ

No.1077-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
最初に見たのはいわゆるトレンド雑誌だった。
そこで一目惚れしたと言っていい。

「それって女の人?」
「違う違う!」

普通に話せばこんな展開になってしまうだろう。
誤解を招く前に早めに軌道修正しておこう。

「じゃあ、何よ?」
「時計だよ、腕時計」

社会人になってそういう物に興味が出始めた。
自由に使えるお金を持つようになったこともある。

「腕時計?」
「今でもあるけど、ムーンフェイズだよ」

コマーシャル風に言えばこうだ。
文字盤に刻(とき)と共に豊かな表情を与える・・・。

「・・・ってな感じかな?」
「ふ~ん、好きだったんだ」

もう誤解は解けているはずだ。
なのに、何となく様子がおかしい。

「ほら、働きだしたらさぁ」
「流行のひとつでも・・・」

トレンド雑誌に載るくらいだ。
実際、当時、話題になっていた。

「それで、買ったの?」
「えっ?うん、とりあえず」

財布と相談の上で。
お金は自由に使えても身の丈は考えないといけない。

(No.1077-2へ続く)

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ホタル通信 No.479

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.515 デスティニー
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

実話度をどれくらいにするか、大いに悩みました。この小説、実話のようで実話ではなく、でも実話で・・。

意味不明な冒頭から始まりましたが、この小説の大筋は事実なんです。つまり、誰かが亡くなったこと、そしてその経緯もです。
ただ、亡くなったのは親友ではありません。そうなると、これにまつわるエピソードは創作になります。なぜ、そんなまわりくどい設定にしたのか、それは作者の正体が分かってしまうからです。
正直に書いたところで、性別・年齢は非公開なので何とでもごまかすことはできたのですが、やはり、人が亡くなる話となると、中途半端なごまかしはかえって失礼になると考え、それならば・・・と思い切って人物設定を変えてみました。
本当にお見舞いに行こうとして大阪を後にしようとしていた時に、訃報を聞き、お見舞いが葬儀になってしまいました。
亡くなった人が私を呼んだ・・・そんな神秘的なことは言わないまでも、心動かされたのは事実です。

小説のタイトルは石川優子さんという方の歌のタイトルを拝借しました。たまたま耳にしたこの歌が、当時の状況を表しており今でもこの曲を耳にすると当時のことが鮮明に蘇ってきます。
T479
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[No.1076-2]九十九島せんぺい

No.1076-2

「ふたつ違う?」
「まずは島の名前はね・・・」

正しくは“くじゅうくしま”と読む。

「へぇ~そうなんだ!」
「じゃあ、もうひとつの間違いは?」

商品名によく目を凝らして欲しい。

「・・・商品名?せんべいでしょ?」
「あはは、よ~く見てよ」

商品を手に取り、彼女に手渡した。

「えっ・・・せんべいじゃない!?」
「そうだよ、“へ”に点々ではなく・・・」

“へ”に○で、“ペ”が正解だ。
今風に置き換えるなら、電子決済ペイペイの“ペ”だ。

「あはは、そうだね」
「初心者なら誰でも間違うよ」

だからこそ印象にも残る。
もちろん、味は折り紙付きだ。

「そんなに美味しいの?」
「今まで食べたことがない味と触感だと思うよ」

結局、それを元の場所に戻すことはなかった。
S1076_20211125205001
(No.1076完)
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[No.1076-1]九十九島せんぺい

No.1076-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・食べたいの?」
「えっ!?いや、懐かしいな~って」

多分、物欲しそうな顔をしていたに違いない。
いや・・・多分ではない。

「懐かしい?」
「うん、これ、長崎のお土産なんだ」

スーパーの一角でちょっとした物産展をやっていた。
そこに、それがあった。

「へぇ~初めて見たよ」
「長崎からの帰りには必ず買ってたよ」

とは言え、買っていたのは母親だ。

「祖母が長崎に住んでて」
「あーそれで!」

帰省した際、その帰りに買うことが多かった。

「ただ、それも小さいうちだから」

中学生にもなると帰省から遠ざかった。
だから、自然とそのお土産とも縁遠くなる。

「これ・・・“きゅうじゅうきゅうしませんべい”って読むの?」
「あはは、大きくふたつ間違ってる」

初心者ならそうなってしまうだろう。

(No.1076-2へ続く)

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[No.1075-2]!でいなら走

No.1075-2

「ほら、でいなら走だよ!」
「はいはい・・・」

そろそろとどめを刺しておかないと身がもたない。
こんな茶番に付き合っていられない。

「それで・・・でいなら走が何だって?」
「どういう意味なんだろうな」

知ってるのに、わざとそう言ってくる。
言葉の使い方は間違っているが“確信犯”だ。

「さぁ~なんだろうね?」

こうやってボケるのも何回目だろうか?
演技も板についてきた。

「で・い・な・ら・走・・・」
「・・・なんだ!逆か!」

お決まりの茶番の後半がスタートした。
終わりが見えてきた。

「それ、“走らないで”だよね?」
「いやぁ~気付かなかったよ」

ここまで来ると主演男優賞でもあげたくなる。

「これ下から読むんだね!」

まぁ、これはこれで楽しんでるんだけどね。
S1075
(No.1075完)
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[No.1075-1]!でいなら走

No.1075-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
多分、言うだろう・・・。

いや、絶対に言うに違いない。

「でいなら走!」
「ビックリマークの位置は違うけどね」

ほら・・・言った。
もう何十回もこれを聞かされた。

「あっ、そう・・・」
「何だよ、反応が薄いな!」

どうして男子って、こうも子供なんだろう・・・。
何度も何度も同じことを繰り返してくる。

「ハァ!?これで何回目よ!?」
「耳にタコどころか、イカが出来ちゃうよ!」

わざと意味不明な言葉で返した。
これくらいが丁度良い。

「おっ!なるほどね~」

会話が続くから逆にたちが悪い。
もう、この話は終わりにしたい。

「それで、でいなら走のことなんだけど」
「まだ、続けるの・・・」

エスカレーターに乗るといつもこうだ。
茶番の幕が上がる。

(No.1075-2へ続く)

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ホタル通信 No.478

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.505 私に行けと・・・
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

なんなのこの話!と小説の出来が悪ければ悪いほど実話に近く、読者を突き放してしまうのは当ブログの特徴です。

さて、解説を加えるとこうです。
評判のポップコーンのお店を求めてアチコチ動き回っていた。ある時、古川橋の大型スーパーに行くとの情報を得たが、古川橋はかつて、私と彼が住んでいた街であった。
古川橋の地名を聞き、ほとんど忘れかけていた彼と過ごした日々を思い出す・・・単なる偶然の産物だけど、そこに何か運命のようなものを感じずにはいられない・・・と言った話です。

100%実話ではないのは、まず作者は私であって私じゃありません。ポップコーンにまつわる流れは「作者=私」なのですが、私は彼とそこに住んでいたわけではなく、彼と住んでいたのは別人です。
つまり、ふたりの「私」の話をくっつけたような感じになっています。私ではない方の「私」のくだりは、想像で書いているため、実話度を80%にしています。
なんだか、分かったような分からないような説明でしたが、もう少し読者の皆さんを混乱させるのであれば、作者と私ではない方の「私」の話であると言えます。

ホタル通信を書くにあたって読み直してみると、今となっては懐かしさだけが心に残っているだけです。
T478
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[No.1074-2]早く言ってよ!

No.1074-2

「じゃあ・・・特徴を言ってみてよ」
「うん!」

それは赤い花だ。

「けんかを売ってるわけじゃないよね?」
「も、もちろん・・・」

花びらはとてもきゃしゃな感じがある。
ひげのようなものも見える。

「わざと難しくしてない?」
「ううん!全然!」

例えは下手だが、見たままを言っているつもりだ。
花びらの周りにひげのような触手のような・・・。

「う~ん・・・」
「そんなに花は詳しくないからね」

友人が考え込んでいる。
確かに、そんな感じの花は世の中に沢山ありそうだ。

「なんか・・こう・・・引っ掛かるものはあるけど」

さすが、博学の友人だ。
つたない説明でも、答えに寄せてきてくれる。

「う~ん・・・ここまで出掛かってるんだけど!」
「頑張って!」

いつの間にか、応援する側になっていた。
元はといえば、私から持ちかけた話なのに。

「頭の中に映像は浮かんでるんだけどな」
「その花って、触るとかぶれるみたいだよ」

友人の目がみるみる、つり上がっていくのが分かる。

「それを早く言いなさいよぉ!」
S1074
(No.1074完)
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[No.1074-1]早く言ってよ!

No.1074-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「わぁー久しぶりに見た!」

それはニュース番組の一場面に居た。

「居たって・・・人なの?」
「ごめん、ごめん、人じゃなくて」

知り合いがニュースの一場面に出たわけではない。
居たのは、ある植物だった。

「紛らわしいぃ!」
「ほんと、紛らわしいぃ!」

繰り返されてしまった。
よほど、気分を害してしまったらしい。

「だから、ごめん!ごめんってばぁ~」

甘い声で謝ってみた。

「あのね!・・・全くもぉ・・・」

どうやら早々に許してもらえそうだ。

「じゃあ、それは花なの?」
「よくぞ聞いてくれました!」

最近、その花を見掛けなくなった。
自分が気にしていないだけかもしれないが・・・。

「えっ~と・・・ね、アレ?」
「どうしたの?」

その花の名前が思い出せない。
いや、そもそも名前を知らない可能性がある。

「えー!?知らないの?」
「そ、そうみたい・・・」

だけど、ある事実だけは強烈に覚えている。

(No.1074-2へ続く)

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[No.1073-2]ヘリコプター

No.1073-2

「ふ~ん」

反応が薄いのが気になる。

「とにかく、いいだろ?」
「見上げるのはタダなんだから!」

いちいち突っ込まれることでもない。
見たいから見る・・・ただそれだけのことだ。

「分かったわよ」
「そうむきにならないでよ」

そのきっかけを作ったのは彼女なのに。

「むきになっ・・・ん?」

また、別のヘリが近付いているようだ。
音が聞こえてきた。

「なんかあるのかな?」

そっと、空を見上げてみる。
確かにヘリが近付いて来るのが見える。

「あー、また見てる!」
「いや・・・だから!」

いちいち突っ込みを入れられたらたまらない。

「別にいいだろ?」
「冗談よ、冗談!」

たかがヘリコプターでここまで言われるとは・・・。

「まぁ、男子はそうなのかもね」
「ほら、あの子も」

近くにいた数名の男子だけが空を見上げていた。
S1073
(No.1073完)
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[No.1073-1]ヘリコプター

No.1073-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「・・・」
「えっ!?なに」

彼女がジッと僕を見つめている。

「なに?空を見上げちゃって」
「そりゃ、ヘリ・・・」

言い掛けて気付いた。
そんなに立派な理由ではないことに。

「ヘリコプターだよ」
「今、バリバリ音がしてるだろ?」

理由は分からない。
でも、ヘリの飛ぶ音を聞くと見上げずにはいられない。

「そんなの知ってるわよ」
「珍しくもないよね?」

そう言われると返す言葉がない。
ただ、そんなに日常的でもない。

「そうだけど、毎日は飛んでないだろ?」
「まぁ、それはそうよね」

クセというものとは違う。
習性というか習慣というか・・・。

「逆に聞くけど気にならないの?」
「私?全然!」

ここは女子と男子の違いだろう。
性別で判断するのは良くないが。

「まぁ、やっぱり男子は見ちゃうよな」

早い話、飛行機や車と同じだ。
ちょっとした憧れの的なんだと思う。 

(No.1073-2へ続く)

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ホタル通信 No.477

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

特別編

このタイミングで何が特別かと申しますと・・・しばらくお休みをいただいた、現在も対応中の環境変更についてお話します。

読者よりも自分の閲覧環境を重視したIE設定にしていました。
具体的には文字を標準より小さくし、文字を綺麗に揃えるために改行を多用していました。これにより、自分のパソコンでは見栄えよく見えていました。
ですが、こうすると皆さんの画面上では不自然な位置に改行が入るため、レイアウトが崩れることも多く、それは自覚していましたが、前述した通り、自分優先にしていました。

・・・とは言うものの、昔よりは閲覧していただく機会が増えたこともあり、このままではマズイ!と思い「修正しよう」と考えていた矢先に、今度はココログのシステムが変わり、安易に修正ができなくなりました。
システムの問題かどうかはわかりませんが、なぜか、昔に作ったブログを開くと、文章の間隔が広がっており、一度、開いてしまうとそれを修正しないと、間隔が広がった状態で記事に反映されてしまうことが分かりました。
そのため、膨大な記事を前に、修正に前向きになることができませんでした。

ところが、IEのサポート終了が告知され、また、IEでの閲覧も色々と問題が出始めたため、この機会に色々と修正しようと考えたわけです。
11/12現在、改行の影響で一番レイアウトに問題があったホタル通信は後、数日あれば修正が終わります。修正にあわせてカテゴリも集約化しています。これが終了次第ブログパーツ、「はじめに」などの見直しに入ります。
最後に小説部分のカテゴリ修正に入りますが、前述した通り、カテゴリを変更する際に文章を開いてしまうことで、文字間隔の修正が必要になるため、気長に向き合っていくことにします。

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[No.1072-2]普通の定義

No.1072-2

だいたい地に落ちているセミは死んでいる。
あるいは息も絶え絶えになっている。

「だよね」
「虫の中でも警戒心は強いはず」

友人もセミについてそれなりに詳しくなっている。
まぁ、私の影響が大きいと思うが。

「ピクリとも動かないし」
「間違いなく死んでいると思ってた」

蟻も数匹、群がり始めていた。
夏の終わりによく見るあの光景が始まろうとしていた。

「自然の摂理とは言え・・・」
「そうだね」

とは言え、これもある意味、一期一会だ。
このまま見過ごすのも心苦しかった。

「・・・あなたらしいね」
「せめて、目のつかない所に・・・」

無残な姿をさらす必要はない、そう思った。

「で、目のつかない所に・・・」
「えっ!?それで気付いたの・・生きているって!?」

もちろん、そうだ。
私の手の中で、力強くもがいていた。

「普通・・・そうでしょ?」

普通という言葉の定義が変わった瞬間だった。
S1072
(No.1072完)
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[No.1072-1]普通の定義

No.1072-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
(死んでる?)

ふと足元を見ると一匹のセミがひっくり返っていた。
1ミリたりとも動いていない。

「またセミの話?」
「どんだけ好きなのよ、セミが!?」

まずは誤解を解く必要がありそうだ。
別にセミが“好きではない”と・・・。

「好きなんじゃなくて気になるだけ」
「それを人は“好き”っていうんじゃないの?」

まぁ・・・それも一理ある。
けど、それほど特別な感情は抱いていない。

「で、セミがどうしたって?」
「なんだ、やっぱり聞きたいんじゃない!」

友人が睨んでくる。
もちろん、顔は笑っているが。

「朝、駐輪場に・・・」

一匹のセミがひっくり返っていた。
動く気配がなく、死んでいるように見えた。

「・・・という流れなら・・・」
「そう!死んでなかったの」

(No.1072-2へ続く)

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[No.1071-2]大きな板チョコ

No.1071-2

「それなら何なんだろうね?」
「それが今でも、なぞのまま・・・」

誕生日でもなければクリスマスでもない。
全く普通の日の出来事だった。

「子供としては大喜びだったと思う、多分」
「多分?」

記憶の中には喜んでいる私の姿はない。
チョコの記憶はあるのに他の記憶はほとんどない。

「食べたと思うんだけどな・・・」
「まさか、他の人へのプレゼント?」

自宅をワンクッションにしただけ。
その可能性も否定はできない。

「まぁ・・・なくもない・・・ね」

他人へのプレゼントを私の・・・と記憶違いをしている。
もしこれが事実なら、ちょっと切ない話に変わる。

「なんなら本人に聞いてみたら?」
「いやいや、聞けないから困ってるの!」

別にけんかしているわけではないが、何だか聞きにくい。

「そんなものなの?」
「そんなものなの!」

特に今は・・・悪い意味ではなく、ピリピリしている。

「けど、そんなに気になるなら聞いておかないと」
「私みたいに後悔するわよ?」

確かに友人の言う通りかもしれない。
まだ、父が元気なうちに。
S1071
(No.1071完)
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[No.1071-1]大きな板チョコ

No.1071-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
はっきりとは覚えていない。
でも、記憶にはしっかりと刻まれている。

「なんか・・・変な表現ね」
「あはは!確かに」

記憶にあるのかないのか、いったいどっちなんだと。
でも、本当にそうな感じだ。

「世の中には存在しているようね」
「そうね、私も一応調べてみた」

小学生の頃の話だ。
父親がチョコレートを買ってきたことがあった。

「実際は買ったのか、もらったのかは不明だけど」

ただ、そのチョコレートが普通ではなかった。

「だよね、普通にお店に置いてなさそうだし」

それは普通の板チョコの4倍くらいの大きさだった。

「ちょっと、大袈裟かもしれないけど」
「感覚的にはそんな感じ」

今で言えば“パーティグッズ”のようにも思える。
つまり、ジョークの要素が強い。

「それも、1枚だけじゃなくて・・・」

5、6枚はあったと思う。

「お父さんは普段からそんな人?」
「ううん、全然!」

絵に描いた昭和のお父さん像そのままの人だ。
表現はよくないが・・・。

(No.1071-2へ続く)

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ホタル通信 No.476

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.442 満天の空に
実話度:☆☆☆☆☆(00%)
語り手:男性

もちろん、きっかけとなるエピソードはあるのですが、基本的にこのような会話が交わされたことはありません。

関西弁を使う“いつもの人”を相手として想定し、彼女とならこのような展開になるだろうな?と想像を膨らませて書いています。
実際、彼女の影響で星のことはもちろんですが、宇宙そのものに興味を持ち、関連する知識が増えたのは事実です。過去にも書いたかもしれませんが、もはや人知が入り込める余地は微塵もなく、圧倒という言葉さえ、生ぬるいのが宇宙という存在です。その宇宙の下にいる、ちっぽけな二人を対照的に描いた小説です。

星や宇宙を共有の話題として・・・と言うより、前述したように「なんて僕たちはちっぽけな存在なんだろう。だからそれに比べたら悩みごとなんてたいしたことがない」と言いたかったかもしれません。
今は思えば悩みごとに大きいも小さいもありませんが、私なりの励ましだったと言うのが、小説の主旨でした。

今でも宇宙のことは大好きです。ロマンを感じているというより、科学的な見地の方が大きいですが、それでも偉大な存在であるのは変わりません。
T476
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[No.1070-2]今日も頼むよ!

No.1070-2

「で、話はそれでおしまい?」
「あっ・・・はい、それだけです」

そこから繋がる話は何もない。

「無いの?」
「以前、別の何かにぶつかったことがあるとか・・・」

本当にない。
いや・・・その前にどうしてそれが必要なのだろうか?

「それって必要ですか?」
「そりゃそうよ!」

それも営業テクニックのひとつだと言う。

「何でもいいから話題は多いほうがいいのよ」
「赤とんぼなんて、今の時期タイムリーな話題じゃん!」

ここにきて何だか褒められているようだった。
確かに旬な話題かもしれない。

「ですね!なんだか自信がわいてきました」
「ちょっと大袈裟に言うのもアリね」

赤とんぼがぶつかりアザが出来た、それくらいでもいいらしい。

「本当ですか?」
「本当よ、もちろん、嘘っぽく言うのよ」

そのユーモラスが会話を和ませると言う。
赤とんぼから思わぬ収穫を得た。

「色々とアドバイスありがとうございます」
「まぁ、これからも頑張って!」

「さて・・・と、今日も居るかな?」

僕の心配をよそに、赤とんぼが縦横無尽に宙を舞っている。
昨日よりも数が多いような気がする。

「今日も頼むよ!」
S1070
(No.1070完)
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[No.1070-1]今日も頼むよ!

No.1070-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「痛っ!」

さっきから、赤とんぼがやたらとぶつかってくる。

「どうしたの?頭をおさえちゃって」
「あのですねぇ・・・」

今朝の出来事を話した。
赤とんぼの集団に襲われたことを。

「はぁ!?それってネタ?」
「ち、違いますよ!」

多少、話を“盛って”なくもないが紛れも無い事実だ。
相当数の集団が僕をめがけて飛んで来た。

「いやいや・・・“僕を”じゃなくて」
「あなたが、そこに突っ込んで行ったんでしょ?」

なるほど・・・確かにそういう見方もある。
いや、そっちが正解だ。

「そ、そうですね」
「あなた自転車通勤でしょ?」

そこまで考えての答えだった。
さすが、先輩。

「でも、当たったのは事実なんですよ!」
「赤とんぼは・・・いい迷惑だったろうね」

完全に僕が悪者になっている。

「結構、痛かったんですから!」
「赤とんぼ、大丈夫だったかしら・・・」

僕の被害は眼中にないらしい。

「ですから、結構・・・」
「いち早く、秋を感じられてよかったじゃない?」

まぁ、それはそうだが・・・。

(No.1070-2へ続く)

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[No.1069-2]風のせい

No.1069-2

「今日も、俳優の訃報があったね」
「うん、私もさっき知った」

それなりに昔に出演していたテレビも知っている。
気付けば私もそんな歳だった。

「この頃、知っている人の訃報が増えたよね?」
「そりゃそうよ」

私たちもそれなりに長く生きている。
これからもっと増えていくだろう。

「あの頃はこうだったとか、こんなテレビに出てたとか」
「親と同じこと、言うんだろうな」

親の影響ではなく、自然とそうなってしまう。

「それだけ歳をとったということよ」
「まだまだ若いわよ!」

とは言え・・・歳は目前だ。

「でも、今日はありがとうね」
「付き合ってくれて」

母の墓参りに友人も付き合ってくれた。

「ううん・・・逆にありがとう」
「随分、よくしてもらったのに御礼も言えてなかったから」

母もきっと喜んでいることだろう。

「もっと、いっぱい話したかったな」
「何なら、今ここで話してみたら?」

間髪いれずに、友人が提案してくれた。

「そうだね・・・あのね・・・」

供えたひまわりがこちらを向いたのは風のせいなんだろうか。
S1069
(No.1069完)
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[No.1069-1]風のせい

No.1069-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
「ねぇ、こんな経験ない?」
「どんな?」

とある俳優の訃報をニュースで知った。
今年に入ってもう何人目だろうか・・・。

「昔から居る俳優が亡くなったら、親が・・・」

早い話、解説をしてくれる。
こんな人だったとか、こんなテレビに出ていたとか。

「それ、あるあるかも!」
「確かにそうかもしれないね」

別に知りたくもないが、話す親は嬉しそうだった。
もちろん、亡くなったことに対してではない。

「親ってさぁ、昔話が好きだよね」
「ほんと、そうだよね」

生まれてもいない時代の話をされても仕方がない。
ましてや、その俳優の若いときの話をされても・・・。

「けど、嫌いじゃなかった」
「・・・私も同じ」

ある意味、その俳優に敬意を表していると思う。
昔話をすると言うことは。

「親なりの偲び方なんだろうね」
「そうかもしれない」

それがいつしか俳優の話から自分の話に変わる。

「そうそう!」
「別に聞きたくもないのにさぁ」

ただ、何故なんだろう・・・。
そう思っていても、つい、聞き入ってしまうのは。

(No.1069-2へ続く)

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