[No.1066-2]最後の雨
No.1066-2
「でも、こんなにしゃべったことなかったよね?」
「そう言われると・・・そうですね」
同じ部署でも、グループが違っていた。
だから、仕事上で繋がりは薄かった。
「それこそ“最後の最後に”って感じですね」
「ほんと、そうだよな」
これを“神様が与えてくれた”なんて1ミリも思っていない。
でも・・・。
「もう少しだけ、ここに居たら?ってことかもね」
「神様が気を遣ってくれたのかしら」
こんな会話が出来るところが彼女の魅力だ。
もちろん、お互い承知の上での会話だ。
「そうかもな」
「神様に感謝しなきゃ・・・ね!」
深い意味はないのは分かっている。
でも、どんな形であれ、別れはつらいものだ。
「・・・雨足が弱まってきたな」
「さすが、レーダーね」
晴れ間も見え始めてきた。
「どうする?」
「・・・そろそろ、行きますね!」
傘を広げ、一歩、足を踏み出す。
「じゃあ・・・お元気で!」
「はい!雨の日は私のことを思い出してくださいね」
(No.1066完)
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