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[No.1064-2]羽ばたけ大空へ

No.1064-2

いつもなら息も絶え絶えのセミと出会う。
その弱々しさと言ったら・・・。

「昨日、会社に行ったら入り口のところに居たの」

自転車用の入り口にそいつが居た。
轢いてくれんと言わんばかりに、道のど真ん中に。

「まさか・・・」
「いやいや!それなら嬉しそうなわけないじゃん!」

ゆっくり走っていたこともあり、避けることができた。

「それでそのまま通り過ぎて・・・」
「自転車をいつもの場所にとめたの」

そしてそのまま職場に向かおうとした・・・でも・・・。

「なるほどね・・・戻ったんだ?」
「うん、あのままじゃ・・・ね」

自転車の餌食になるのは時間の問題だろう。

「大急ぎで入り口に向かったの」
「そしたら、やっぱりまだ居たのよね」

用心深い彼らにはあり得ない光景だと言える。
だからこそ・・・心配になったのだけど。

「で、つかもうとしたら・・・」

予想に反して、大空高く飛んで行ってしまった。

「・・・だからそれが嬉しくて」

それが最後の力だったのかもしれないけど。
S1064
(No.1064完)
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