[No.1066-1]最後の雨
No.1066-1
登場人物
男性=牽引役 女性=相手
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これを“粋な演出”と言って良いのか分からない。
けど、出会いと別れとは不思議なものだ。
「しばらく止みそうにないな」
「そうですね」
帰り間際に降り出した雨は激しさを増すばかりだった。
まさしく夏の夕立といった様相だ。
「ごめん!雨男なんだよ」
「それなら、私の方よ」
聞けば、彼女は雨女らしい。
雨男、雨女が揃った結果かもしれない、この雨は。
「完全に足止めをくらったな」
「これじゃ、傘があっても帰れないですね」
もちろん、無理をすれば帰れなくもない。
でも、この雨は“無理”をはるかに超えたレベルだ。
「だろうな、身の危険を感じるよ」
「確かに・・・」
とにかく、後、30分もすれば雨は止む。
そう雨雲レーダーが教えてくれていた。
「・・・いい思い出になった?」
「かもしれないですね」
彼女は今日、この職場を去る派遣さんだ。
「最後の最後でこうなるとは・・・」
「あなたのせい?」
二人で大笑いした後、しばらく雨音だけを聞いていた。
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