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2021年7月

[No.1066-2]最後の雨

No.1066-2

「でも、こんなにしゃべったことなかったよね?」
「そう言われると・・・そうですね」

同じ部署でも、グループが違っていた。
だから、仕事上で繋がりは薄かった。

「それこそ“最後の最後に”って感じですね」
「ほんと、そうだよな」

これを“神様が与えてくれた”なんて1ミリも思っていない。
でも・・・。

「もう少しだけ、ここに居たら?ってことかもね」
「神様が気を遣ってくれたのかしら」

こんな会話が出来るところが彼女の魅力だ。
もちろん、お互い承知の上での会話だ。

「そうかもな」
「神様に感謝しなきゃ・・・ね!」

深い意味はないのは分かっている。
でも、どんな形であれ、別れはつらいものだ。

「・・・雨足が弱まってきたな」
「さすが、レーダーね」

晴れ間も見え始めてきた。

「どうする?」
「・・・そろそろ、行きますね!」

傘を広げ、一歩、足を踏み出す。

「じゃあ・・・お元気で!」
「はい!雨の日は私のことを思い出してくださいね」
S1066
(No.1066完)
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[No.1066-1]最後の雨

No.1066-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
これを“粋な演出”と言って良いのか分からない。
けど、出会いと別れとは不思議なものだ。

「しばらく止みそうにないな」
「そうですね」

帰り間際に降り出した雨は激しさを増すばかりだった。
まさしく夏の夕立といった様相だ。

「ごめん!雨男なんだよ」
「それなら、私の方よ」

聞けば、彼女は雨女らしい。
雨男、雨女が揃った結果かもしれない、この雨は。

「完全に足止めをくらったな」
「これじゃ、傘があっても帰れないですね」

もちろん、無理をすれば帰れなくもない。
でも、この雨は“無理”をはるかに超えたレベルだ。

「だろうな、身の危険を感じるよ」
「確かに・・・」

とにかく、後、30分もすれば雨は止む。
そう雨雲レーダーが教えてくれていた。

「・・・いい思い出になった?」
「かもしれないですね」

彼女は今日、この職場を去る派遣さんだ。

「最後の最後でこうなるとは・・・」
「あなたのせい?」

二人で大笑いした後、しばらく雨音だけを聞いていた。

(No.1066-2へ続く)

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[No.1065-2]蘇るインスタン島

No.1065-2

太平洋に浮かぶ未開の島“インスタン島”・・・。
この島にはある伝説が残されていた。

伝説を確かめるべく訪れた探検家が行方不明になった。
彼を探しに送られた捜索隊も
「彼は生きている・・・でも絶対・・・ここに来てはいけない」
この無線を最後に消息不明になってしまう。
その後、何度も捜索隊を送るも誰一人戻ってこなかった。

それから十数年後・・・。
行方不明になった父を探しに、自らも探検家となった息子
がその島に上陸した瞬間にある重大な事実に気付いた。
「この島は生きている・・・」

島で何が起こっているのか、父は今でも生きているのか、
そしてある伝説とは・・・。

「・・・どう?」
「う~ん」

イマイチ反応が良くない。
色々と、気になる要素を散りばめたのに。

「子供にしては難しすぎるし・・・」

大人にしてはある意味、幼稚すぎると言う。

「なんでよ?」
「狙い過ぎよ!映画の見過ぎじゃない?」

確かにどこかで聞いたフレ-ズばかりだ

「・・・邪念が入っちゃうのよね」

やはり、子供の発想にはかなわない。

「ちなみに、その伝説ってなに?」
「島に邪念が渦巻く・・・ん?」

そんなつもりはなかったんだけど。
S1065
(No.1065完)
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[No.1065-1]蘇るインスタン島

No.1065-1  [No.535-1]インスタン島

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
あれから約7年が経過している。
随分と待たせてしまった。

「えっ!?できたの?」
「ちがうちがう!構想というかあらすじと言うか・・・」

小学生の時、授業で書いた小説。
それを再現することになった。

「な~んだ、7年も待たせておいて」
「仕方ないでしょ!?」

曲がりなりにも腕は上がった。
でも、発想力は逆に下がったように思える。

「当時は怖いものなし!だったのに」
「今は構成とか伏線とか・・・」

見栄えばかりが気になり、考えがまとまらない。
それでもようやく重い腰を上げることができた。

「それで、どんな感じに?」
「あれから、もう一度、思い出したりしてさ」

同級生にも聞いてみた。
一度は話題になった小説だ・・・多少期待もあった。

「・・・覚えてなかった?」
「察しがいいね・・・」

内容どころか、そんな授業があったことすら覚えていない。
まぁ、当然と言えば当然のことだろう。

「仕方ないよ」

とにかく、当時のテイストであらすじを考えてみた。

「じゃあ、聞かせて」
「わかった」

(No.1065-2へ続く)

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ホタル通信 No.473

ホタル通信 No.473

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.586 巨人と私
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

小説に出てくるふたつの巨大なマンションは実在しています。そりゃもう、巨大で・・・。

そのマンションは高さもさることながら、奥行きと言えばいいのでしょうか・・・厚みがあります。立方体を積み重ねたような外観で、例えるならサイコロを4つほど積み重ねて、それを超巨大化させたような感じです。
別にそのマンションに恨みがあるわけでもなく、嫌な思い出があるわけでもありませんが、その存在感に圧倒されている様を描いたものです。

なぜ、圧倒されていたのか、小説ではうやむやになっていますが、これも事実で何か明確な不安を抱えていたわけでもなく、ただ、ぼんやりとそう感じていた・・・というのがその答えと言えます。
「そんなことがありますよね?」と同意を求めるつもりはないものの、心のどこかでは言い知れぬ不安を誰かに知って欲しいと思う気持ちが小説になったような気もしています。

表面的には重々しい話ではありませんが、それでもコミカルなラストにしたかったため、友人がそのマンションに引っ越すようなオチにしてみました。
T473
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[No.1064-2]羽ばたけ大空へ

No.1064-2

いつもなら息も絶え絶えのセミと出会う。
その弱々しさと言ったら・・・。

「昨日、会社に行ったら入り口のところに居たの」

自転車用の入り口にそいつが居た。
轢いてくれんと言わんばかりに、道のど真ん中に。

「まさか・・・」
「いやいや!それなら嬉しそうなわけないじゃん!」

ゆっくり走っていたこともあり、避けることができた。

「それでそのまま通り過ぎて・・・」
「自転車をいつもの場所にとめたの」

そしてそのまま職場に向かおうとした・・・でも・・・。

「なるほどね・・・戻ったんだ?」
「うん、あのままじゃ・・・ね」

自転車の餌食になるのは時間の問題だろう。

「大急ぎで入り口に向かったの」
「そしたら、やっぱりまだ居たのよね」

用心深い彼らにはあり得ない光景だと言える。
だからこそ・・・心配になったのだけど。

「で、つかもうとしたら・・・」

予想に反して、大空高く飛んで行ってしまった。

「・・・だからそれが嬉しくて」

それが最後の力だったのかもしれないけど。
S1064
(No.1064完)
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[No.1064-1]羽ばたけ大空へ

No.1064-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
今年は意外なところでそいつと出会った。
危うく、そいつを轢いてしまうところだった。

「・・・どうしたの?」
「何だか嬉しそうじゃん!」

いつもなら物悲しくなるのに今日は違う。

「今年は早々に・・・」
「もしかして・・・アレ?」

毎年恒例の出来事だ。
いい加減、友人も覚えてしまったようだ。

「そう、アレ!」

毎年、夏にある出会いがある。
出会いというほど大袈裟なものではないが。

「まだ夏が始まったばかりよね?」

それはセミとの出会いだ。
それも、消えゆく命の出会いでもあった。

「そうね、でも先週から鳴き始めたから・・・」

セミの一生は短い。
いや・・・正確には地上に出てきてからが短い。

「そっか、そいつらなら・・・」
「だろうね」

ただ、今年はあることが違った。

「あること?」
「そう言えば・・・嬉しそうだったもんね」

(No.1064-2へ続く)

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[No.1063-2]縄跳びの達人

No.1063-2

「すごいね!」
「まぁ、昔のことだけどね」

そして、ここからが上級者と言える領域に入る。
難易度も格段に上がる。

「なんだか、ワクワクしてきたよ」
「でしょ!」

上級者は次に後ろ跳びに入る。
つまり、縄を逆回転させ、X二重などを跳んだりする。

「出来るの?」
「うん、格段に難しくなるけどね」

縄のコントロール、ジャンプのタイミングなどなど・・・。

「だろうね、何となくイメージできる」
「ただ、これでもゴールじゃないの」

そう・・・私たちが目指していたゴールはそれじゃない。

「まさか・・・オリンピック!?」

何とも壮大なジョークを放り込んできた。
でも、悪くない・・・。

「じゃなくて、三重跳びだよ」
「えっ!?三重・・・」

今までの跳び方は、言わば技術が試される跳び方だ。
でも、三重跳びは基本に磨きを掛ける必要がある。

「一回のジャンプ中に三回、縄を通過させる・・・」
「これがシンプルに難しくて」

出来たとしても、せいぜい数回レベルだった。

「それでも、跳べたんだ!?」
「まぁ、なんとかね」

その内、ブームは去り、三重跳びは未完のまま幕を閉じた。
S1063
(No.1063完)
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[No.1063-1]縄跳びの達人

No.1063-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
そのブームは小学4年生の頃に突然やってきた。

「・・・縄跳び?」
「そう!出来る?」

たまたま見たテレビで縄跳びの製造過程が紹介された。
それを見て急に想い出がこみ上げてきた。

「あなたは出来るの?」
「今は・・・どうだろうね」

休み時間にもなると、皆が一斉に教室を飛び出す。
思い思いの場所で、縄跳びの練習が始まった。

「当時はね・・・」

最初の難関は二重跳びだ。
ジャンプと縄の回転のバランスが重要だ。

「へぇ~すごいじゃん!」
「こんなの、まだ序の口よ!」

次は技術を要するアレが待ち構えている。
私もしばらくはそれに苦しめられた。

「アレ?」
「そう!アレよ」

それは腕をクロスさせたまま跳ぶ“エックス二重”だ。
クロスするゆえ、“X”なのだ。

「まだまだ、あるわよ!」
「うそ!?」

次は腕をクロスさせたり、元に戻したりを繰り返す跳び方。
それは“あや二重”と呼ばれていた。

「なんで?」
「なんか、あやとりしてるみたいだから・・・じゃない?」

名前の由来は定かではないが・・・。

(No.1063-2へ続く)

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ホタル通信 No.472

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.596 人間のくず
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

彼が浮気をした話は事実なんですが、もし、小説上の私が作者ではなかったら話はどうなるでしょうか?

冒頭、読者の皆さんを混乱させるような書き方をしていますが、もし、小説上の彼が“作者”だったとすれば作者は自分のことを書いていることになります。
あえて“彼”目線で書かせてもらうと最初から友人を狙っていたわけではなく、私を通じて友人と知りあって、いつしかそんな関係になっていました。ですから、浮気については結果論と言えます。

さて、目線を“私”に戻せば、そんな過去を重々しくもありながらもコミカルに仕上げてみました。タイトルでもある“人間のクズ”の発言は実はありませんでした。
この話は浮気話がきっかけで作ろうと思ったのではなく、ラストの「経理上の資産」がきっかけなんですよ。当時、簿記の資格取得に頑張っていた時期で、その時に勉強していた知識と浮気話がなぜだか、結びついてしまって・・・それでこの話が誕生しました。
T472
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[No.1062-2]私も!

No.1062-2

「雨男が雨に濡れるなんて・・・プッ!」
「そう笑うなよ」

でも何とも情けない話だ。

「かわいそうだから、入れてあげる」
「・・・まぁ、頼むわ」

悪いことにく、雨足が強くなってきたからだ。
夏の天気は変わりやすく、それに激しい。

「あー、こりゃ完全に夕立だね!」
「俺とは関係ないんじゃないのか?」

夏の夕立は珍しくも無い。
ましてや梅雨時だ・・・天候は不安定極まりない。

「さぁ~それはどうでしょうか?」
「是が非でも俺のせいにしたいようだな」

ただ、皆に多大な迷惑を掛けている気がする。
今も目の前を傘をささずに走り去る人が何人も居る。

「あ~ぁ、あんなに濡れちゃって!」
「こっちを見るなよ!?」

そう思いながらも、やはり心苦しさは残る。

「これからは少し遅く帰るようにしようかな・・・」
「じゃぁ、私も!」
S1062
(No.1062完)
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[No.1062-1]私も!

No.1062-1

登場人物
男性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
夏の天気は変わりやすい。
でも、ここまで偶然が続くとさすがに嫌気がさす。

「あら?降ってきたわね」
「何だよ!?」

彼女がこちらをチラリと見る。
傘を用意しろと言う合図ではないことは分かっている。

「これで5日連続ね」
「わざわざ数えなくていいの!」

自称“雨音”が、今や自他共に認める“雨男”になった。

「でも、大丈夫!」
「・・・だろうね」

彼女がかばんから傘を取り出す。

「あなたと帰るときは必需品ね」
「何だよ、普段から持ち歩いているくせに」

とにかく、昨日も今日も、その前も雨が降ってきた。
外に出た途端に・・・。

「それにしても見事よね」
「ここまでの雨男、初めてだよ」

褒められているのか、けなされているのか・・・。
ただ、当の本人は傘を持っていない。

(No.1062-2へ続く)

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[No.1061-2]昨日の敵は・・・

No.1061-2

「まるでなつく気配がないのよね」

猫の扱いに慣れているつもりだ。
野良とだって結構、仲良くもなれる。

「よほど何かされたのかしら?」

その可能性は否定できない。
前脚が若干、不自由な感じがする。

「顔を見るたび、睨まれてるし・・・」

でも、そんな時、あることがおきた。

「えっ・・なに?」
「その猫が見慣れない猫とケンカしてたんだよね」

普段は“いかつい”その猫が、相手に圧されているようだった。
そもそも、からだが万全じゃない。

「で、どうなっちゃったの?」
「やっぱり、負けた?」

そんな時、あることを思い付いた。

「・・・それって」
「そう!援軍よ!」

お互い知らない顔じゃない。
ここはひとつ、その猫の肩を持つことにした。

「そしたらさぁ!」

実家の猫を思い出させる張り切りようだった。

「私の登場に相手の猫もビビッたようだったし!」

それからと言うもの、何だか距離が縮まった気がする。
S1061
(No.1061完)
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[No.1061-1]昨日の敵は・・・

No.1061-1

登場人物
女性=牽引役  女性=相手
-----------------------------
猫好きなら知っている“あるある”だろう。
実家の猫もそうだった。

「うちの猫もそうだったよ」
「笑えるよね」

うちの猫は外でよくケンカをしていた。
特に珍しいことではない。

「ほんと!私が顔を出したら急に・・・」
「強がっちゃうもんね!」

やはり飼い猫だ。
元野良とは言え、現役の野良には勝てないだろう。

「私の顔を見た途端、張り切っちゃってさ」
「そうそう!それが可愛いところでもあるんだけど」

今まで以上に声を荒げ、相手を威嚇する。
私の方をチラチラ見ながら。

「いいとこ見せようとしてるのかな?」
「かもしれないね」

こちらが優勢にはなるが、それは私の影響だ。
相手の猫は、私にビビッている。

「それで、最近も同じようなことがあって」
「えっ!?猫、飼ってないよね?」

飼ってはいない。
実家の猫も随分前に死んでいる。

「野良よ、野良!」
「・・・野良?」

家の近くに野良猫が数匹棲みついている。
ただ、その内の一匹がやたら警戒心が強い。

(No.1061-2へ続く)

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ホタル通信 No.471

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.535 インスタン島
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

文才があるかどうかは別にしても記念すべき処女作がこの「インスタン島」でした。

小説では全く覚えていないことになっていますが、実はごく一部なら覚えています。
隊長の名前は「やかんひでき」でした。やかん・・・そう、あのやかんです。インスタン・・・と言うだけあって何ともイージーなネーミングです。小学生が考えることですから、こんな程度でしょう。ひできは当時、仲が良かった友人の名前です。
そう考えると、もうひとり仲が良い友達が居たので、その友人も隊員として登場しているはずなんですが、これは今でも思い出せません。

前身として、国語の時間に「詩」を作った時も、何となく創作が好きなんだと感じたことを覚えています。それから、小説で才能を開花させ(笑)、今こうしているのかもしれません。
どちらかと言えば、今でも「空想」の話が好きなんですが、なぜだか、間逆の実話ベースの小説を書いています。そこになにかの巡り会わせを感じずにはいられません。

ホタル通信を書きながら思ったのですが、当時の内容と全く同じように再現できませんが、「インスタン島」を作ってみようかと考えています。No.535の続編と言うか、後日談的に。
T471
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[No.1060-2]必殺技

No.1060-2

「これってゲームなのか?」
「そうよ!超絶アナログだけどね」

ノートの上下に双方、軍艦を書く・・・何隻書くかはルール次第だ。
言わばノートの真ん中は主戦場だ。

「それで?」
「ここに主砲があるでしょ?」

軍艦を書いたら次に主砲を書く。
これも何個書くかはルール次第だ。

「分かったぞ!鉛筆の線は発射された玉なんだな?」
「その通り!」

鉛筆の先を主砲の先にあてる。
そして、鉛筆を人差し指一本で立てる。

「なるほどな・・・それで主砲、発射!ということか?」
「そうだよ、見てて!」

立てた鉛筆を勢い良く、相手の軍艦めがけて滑らせる。
そうすると、主砲から玉ならぬ、“線”が発射される。

「でも、一度では相手に届かないから」

発射した線の終わりから同じように続けて行く。

「なるほど!」
「狙いは艦体ではなく、主砲ね!」

主砲が全て破壊されると、撃沈となる。

「なんだよ、このチープな感じ・・・」
「でも、ワクワクしてくるでしょ?」

これが意外に面白い。

「見てて私の必殺技・・・そりゃぁ!」
S1060
(No.1060完)
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[No.1060-1]必殺技

No.1060-1

登場人物
女性=牽引役  男性=相手
-----------------------------
「これ何だと思う?」
「・・・何だよ、それ」

押入れから子供の頃のガラクタがいくつか出てきた。
多分、小学生の時の物だろう。

「単なる落書きか?」
「まぁ、遠くはないけど・・・違うよ」

それは、ちぎったノートに鉛筆で書かれている。
一発で当てられる人はそういないだろう。

「直線がいっぱい書かれてるし・・・」
「ん?これは船か?」

ようやくいいところに気付き始めた。

「そう!船だよ」
「でも、船は船でも・・・」

普通の船じゃない。

「普通じゃない?」
「豪華客船か?」

ヒントはその直線にある。
その直線がどこから描かれているのかが重要だ。

「・・・もしかして、軍艦か?」
「あたり~!」

ノートの上と下に書かれているのは軍艦だ。
下手ではあるが。

「これは・・・砲台?」
「そうだけど、主砲と言って欲しいわね!」

彼がポカンと口を開けている。
無理も無い・・・よほど女子とはかけ離れた話だからだ。

(No.1060-2へ続く)

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