[No.1056-2]足元の缶
No.1056-2
「歳は・・・二十歳前後って感じね」
「だろうな」
若干、ギャル風の雰囲気が漂う。
服装もかなりラフな感じだ。
「で、繰り返しになるけど、どうすると思う?」
「そうね・・・多分、置いていかないわよ」
中身はもうないはずだ。
缶を置く前に、中身を確認する仕草があったからだ。
「へぇ~よく観察してるね」
「嫌味かよ!」
だから、車内に捨てていくことは可能だ。
すでにゴミになっているからだ。
「どうして“置いていかない”と思うんだよ?」
「別に・・・そんな気がするだけ」
僕はそうは思わない。
スマホに夢中で足元の缶を気にする様子がまるでない。
「あの子が言わば“ギャル”だから?」
「ち、ちがうよ!」
でも、正直に言えばそうかもしれない。
見た目で判断した。
「あのね・・・そんなことだと思ったよ」
「絶対、置いて行くよ!」
その時だった・・・停車と同時に缶を拾い上げ、下車を始めた。
「ほら!見なさい!」
「人は見た目じゃないの!特に若い人は!」
(No.1056完)
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