[No.1056-1]足元の缶
No.1056-1
登場人物男性=牽引役
女性=相手
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「・・・なに見てるの?」
「ん?いや・・・ほらアレ・・・」
近くに居るので、はっきりと大きな声では言い難い。
電車の中とは言え、耳に入ってしまうだろう。
「アレってなによ?」
「足元・・・」
足元にコーヒーの缶を“置いた”のを見た。
「・・・そういうことね」
「どうすると思う?」
今の段階ではまだ未遂の状態だ。
そのまま置いて下車すれば“捨てた”となる。
「そんなこと考えてたの!?」
「車内に捨てたらダメだろ?」
別に正義感ぶっているわけじゃない。
純粋にそんな行為が嫌いなだけだ。
「そりゃね・・・でも、置いてるだけかもしれないし」
確かに今の段階ではそうだ。
缶を置いて、忙しそうにスマホをいじっている。
「座席の上に置くわけにもいかないでしょ?」
「だったら、カバンに・・・」
と言い掛けて気付いた。
「・・・まぁ、カバンには入れられないな」
ペットボトルならまだしも、缶は無理だ。
だから、床に置くのが今の段階ではベターだ。
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